TOPCON

DXグランプリ2023

トプコン 江藤隆志社長CEOに聞く

デジタル時代を先導する企業
「DXグランプリ2023」に輝く

トプコン 江藤隆志社長CEO

トプコンは、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」で、「DXグランプリ2023」に選ばれた。「デジタル時代を先導する企業」と認められた同社の取り組み、企業経営の中でDXを実践し、成功に導く戦略とは――。江藤隆志トプコン社長CEOに聞いた。

早くからデジタル化・自動化を推進
DXは事業そのものであり企業文化

――応募448社の中から、日本郵船とともに「DXグランプリ2023」に選ばれました。率直なお気持ちを聞かせてください。

先進的な取り組みを進める、きら星のような企業が多数ある中、トプコンをグランプリに選出いただき大変光栄です。審査コメントで「トプコンは経営理念に『医・食・住に関する社会的課題を解決し、豊かな社会づくりに貢献します』を掲げており、これをDXソリューションで解決することを志向している」と評価いただきました。

コメントいただいた通り、私たちは世界の人々が豊かな生活を営む上で欠かせない「医・食・住」の社会的課題を、DX活用による独自のソリューションで解決していくことをパーパスと位置付けています。潜在的な顧客ニーズを捉えた「尖ったハードウエア」を軸に、海外M&A(合併・買収)などを通じて獲得したソフトウエア技術の活用や、デジタル化・自動化を推進してきました。また、あらゆるものがネットにつながる「IoT」ネットワーク技術との融合により、お客さまである建設業や農業、眼科医療の分野で、お客さまの仕事のやり方そのものを変革する新たなDXソリューションを創出してまいりました。いわば、トプコンの事業展開そのものがDXであり、企業文化でもあるのです。今回のグランプリは世の中でDXの必要性が叫ばれる以前からの取り組みが認められたと、非常にうれしく思っています。

尖ったDXソリューションで
「医・食・住」の課題を解決する

――具体的には、どのようなソリューションを提供しているのでしょう。

トプコンの強みは、モノである尖ったハードウエアとコトであるソリューションビジネスの両輪で事業を成長させていることです。創業以来培ってきた光学、センシングのコア技術に加え、画像処理、機械学習、自動化、遠隔監視などの応用技術を融合させ、「医・食・住」の領域で多様なDXソリューションを提供しています。

「医(ヘルスケア)」の分野では、高齢化に伴う眼疾患の増加に対し、眼科医の不足や医療費の高騰が問題になっています。そこで、眼鏡店やドラッグストア、かかりつけ医などで、眼の健康診断が行える眼健診(スクリーニング)の仕組みを創出しました。当社のフルオート3次元眼底像撮影装置などの機器と、米国のソフトウエア子会社で開発したシステムを活用したもので、AI(人工知能)自動診断を手がける外部ベンチャーなどとも連携しています。眼疾患の早期発見と医療効率の向上に貢献しています。

眼健診(スクリーニング)の仕組みづくり

「食(農業)」分野の課題は、気候変動に伴う農作物の被害や、人口増加による将来的な食糧不足です。当社は、営農サイクル(計画・種まき・育成・収穫)のクラウドデータ管理と精密GNSS(全球測位衛星システム)を活用し、「農業の工場化」を進めています。工場化を支えるのが、ハンドル操作を不要とした農機の自動操舵システム、作物の生育状態を計測するレーザー式生育センサーといった独自技術です。

農業の工業化

「住(建設)」分野では、高まるインフラ需要に対応する技能者不足や、自然災害の頻発化・被害の甚大化が社会的課題になっています。当社は1990年代後半に、測量と油圧制御技術の融合によりICT(情報通信技術)施工による建機の3次元自動化システムを完成させました。さらに、3次元計測技術やネットワーク技術と組み合わせ、建設現場のあらゆる情報をネットワークでつなぎリアルタイムで現場管理を行う「建設工事の工場化」を実現したのです。

建築工事の工業化

開発力、生産力、人の力がDX支える
M&Aで素早く必要な技術獲得

――DXを実現する組織や仕組み、戦略などを教えてください。

DX推進には、それを下支えする開発力、生産力、またスタッフの力が重要です。当社の連結売上の約8割は海外です。世界各地に製造・販売・技術拠点のネットワークを持ち、社員の約7割を海外スタッフが占めています。DXソリューションを開発し世界で事業展開するには、これらの拠点を効率的かつ効果的に活用するための、デジタルとIT(情報技術)を駆使した仕組みづくりが必要です。そのため、自社内のDX化にも積極的に取り組んでいます。

中期経営計画ではDXソリューションの大きな成長を計画しており、投資を予算化して実行し、必要なリソースを確保してきました。具体的には、世界30カ所にR&D(研究開発)拠点を設置し、各地で高度テクノロジー人材の確保に努めるほか、必要な技術を素早く獲得するためのM&Aや業務提携も続けています。

江藤隆志社長CEO 江藤隆志社長CEO
1990年トプコン入社。2015年取締役執行役員。22年副社長執行役員、23年4月から現職。福岡県出身

「尖ったDXで、世界を丸く。」
顧客に必要とされる会社めざす

――従業員の意識改革では、どのような取り組みを行っていますか。

昨年度、DXへの取り組みを分かりやすく表現したキャッチコピー「尖ったDXで、世界を丸く。」を作成しました。「独自のDXソリューションで社会的課題を解決し、世界を豊かにする」というコピーに託した思いとともに、社内外に広く発信しています。

トプコンがめざすのは、「顧客(ステークホルダー)に必要とされる会社」になることです。現場を知り、顧客が潜在的に欲するものを顧客が予期せぬ形でいち早く供給する――。こうした考えを大切にし、世界各地のR&D拠点のエンジニアが新たな製品やソリューションを発表する社内イベントなどを毎年開催しています。さらに全世界の社員を「トプコニアン」と定義し、国境を越えた協業・連携を深める企業文化面の取り組みも進めているところです。

尖ったDXで、世界を丸く。

大いにある新市場を生み出す余地
今後もDXに挑戦し続ける

――DX推進に課題を抱える企業にエールをお願いします。

業務プロセスだけでなく、社会全体のDXに自社がどう貢献していけるかという視点で考えてみると、DXの可能性がより大きく広がっていくと思います。加えて、お客さまに寄り添い、潜在ニーズを引き出すことを意識すれば、独自のDXの着想を得やすくなるでしょう。とりあえず業務の一部をデジタル化してみる。すると、何と組み合わせて何に使うかというひらめきが生まれてくるはずです。そうした気づきが、やがて大きなDXにつながっていくのではないでしょうか。「DXなんてまだ無理だ」と考えず、ぜひ初めの一歩を踏み出してみてください。

――トプコンは今後、どのような戦略でDXを推進していきますか。

当社の転機は、1994年、建機の自動制御技術を手がける米国の技術ベンチャー企業を買収したことでした。当時誰も考えつかなかった「建設工事の工場化」という新たなコンセプトを生み出し、建設土木分野へ本格的に進出しました。以降、海外技術ベンチャー企業のM&Aや協業を行い、「医・食・住」の領域で独創的なDXソリューションで事業領域を広げています。

当社がグローバルに事業を展開するヘルスケア、農業、建設の市場では、デジタル化や自動化の重要性がますます高まってきています。ここに当社の強みであるDXソリューションを導入すれば、より一層お客さまのワークフローに大きな変革が起こせるのではないかと考えています。そういった取り組みを通じて、さらにこれまで蓄積してきたデータを活用したプラットフォームビジネスの創出など、新たな市場を創出する余地も大いにあります。DXによるトプコンの挑戦に今後ともご期待ください。