提供:トプコン

TOPCON

トプコン社外取締役 山崎直子さんに聞く

技術とDXで
新たな道をつくる会社

トプコンの光学ユニットを搭載した衛星「いぶき2号」の画像を背景に

トプコンの光学ユニットを搭載した衛星「いぶき2号」の画像を背景に

トプコンは、「医(ヘルスケア)・食(農業)・住(建設)に関する社会的課題を解決し、豊かな社会づくりに貢献します」を経営理念に掲げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現により社会課題の解決を目指している。昨年には、経済産業省と東京証券取引所が選定する「DXグランプリ2023」に選ばれた。同社の社外取締役を5年にわたって務める宇宙飛行士の山崎直子さんに、トプコンの魅力や強み、期待することなどを聞いた。

就任後にトプコンの認識新たに
技術だけでないプラットフォーマー

――社外取締役の就任前と後で、トプコンのイメージは変わりましたか。

尖ったDXで、世界を丸く

大きく変わりました。就任前は、健康診断や眼科でトプコンの眼底カメラなどの眼科医療機器にお世話になっていたので、確固たる光学技術を持ち、絶え間なく開発を進める専門メーカーであると認識していました。しかし就任後は、社会課題の解決に向け新たな基盤づくりをDXで推進するプラットフォーマーであると、認識を新たにしたのです。2022年には「尖ったDXで、世界を丸く。」というキャッチコピーを制定しましたが、まさにトプコンらしいと感じました。

尖ったDXで、世界を丸く

宇宙開発には1980年代から貢献
「SLIM」にも光学ユニット搭載

――宇宙飛行士として関心の高いトプコンの技術は何でしょう?

トプコンは「医・食・住」の分野を事業領域としていますが、実は1980年代から宇宙開発にも貢献しています。この点もとてもうれしいですね。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の温暖化ガス観測の専門衛星「いぶき2号(GOSAT-2)」、2010年に世界で初めて小惑星からサンプルを持ち帰った「はやぶさ」などに、トプコンの光学ユニットが使われています。1月20日、日本初の月面着陸に成功した無人探査機「SLIM(スリム)」にもトプコンの光学ユニットが搭載。着陸時に、月面との正確な距離を測る光波センサーの重要構成品である機器で、目標地点からの誤差が100m以内の「ピンポイント着陸」をアシストしました。

小型月着陸実証機SLIM(写真:©JAXA)
小型月着陸実証機SLIM(写真:©JAXA)

「SLIM」に搭載された光波センサー。黒い部分がトプコンの光学ユニット(写真:©JAXA)
「SLIM」に搭載された光波センサー。黒い部分がトプコンの光学ユニット(写真:©JAXA)

写真左)小型月着陸実証機SLIM(写真:©JAXA)
写真右)「SLIM」に搭載された光波センサー。黒い部分がトプコンの光学ユニット(写真:©JAXA)

米FDAが認証、AI診断システム
眼底画像から糖尿病網膜症を検出

――「医・食・住」の課題を解決するトプコンのソリューションのうち、「医」のアイケア関連製品について、どのように捉えていますか。

BtoB向けの技術が多いトプコンの中で、医療関連の技術は生活者一人ひとりが身近に感じる領域です。中でも眼の健康診断(スクリーニング)の仕組みは、2018年に米国のAI(人工知能)ベンダー「IDx社」と戦略的連携を締結したことが、当時大きな話題になりました。同社の、眼底画像から糖尿病網膜症を検出するシステムは、米食品医薬品局(FDA)が世界で初めて認証した自律型AI診断システムです。

このシステムにトプコン製フルオート眼底カメラが採用されていることは、トプコンの技術と実績が認められたということ。糖尿病網膜症だけでなく、眼の状態から分かる疾患はほかにもあり、今後裾野はさらに広がりそうです。眼のスクリーニングを通じて体のさまざまな健康状態が分かるようになれば、「医」の領域での貢献がますます広がるでしょう。

山崎直子 
山崎直子 
1970年千葉県松戸市生まれ。2001年JAXA宇宙飛行士に認定され、2010年スペースシャトル「ディスカバリー号」のミッションに参加し宇宙に滞在。2018年トプコンの社外取締役に就任/無散瞳眼底カメラ NW500と

宇宙に行くと、骨が弱くなったり、筋肉が衰えたりさまざまな変化が起こりますが、地上に戻ってリハビリをすれば、だいたい治ります。しかし10年くらい前から、宇宙空間での滞在を経験するとピントが合わせづらくなるといった眼への影響が現れ、元に戻らないこともあると分かってきました。15日くらいの短期滞在で4分の1、数カ月の長期滞在だと40%くらいの宇宙飛行士に影響が出ています。宇宙空間とどう関係があるかなど、今まさに研究機関などでメカニズムが研究されています。

最初から世界市場を見据えた戦略
互いを尊重し、強い信頼関係を築く

――トプコンが、真のグローバル企業に成長できた要因はどこにあると考えますか。

常に先を見て、最初から世界市場を見据えていることが大きいと感じています。1994年に、建機の自動制御技術を手がける米国の技術ベンチャー企業を買収したわけですが、その頃からトプコンは、誰も考えていなかった「建設工事の工場化」というビジョンを持っていた。実現に向け、30年前から先手、先手を打ってきたのです。そして、その後の「農業の工場化」というコンセプトを掲げた農業分野への進出につながっています。

コミュニケーションを大切にしていることも、グローバル企業としての成長につながっていると思います。トプコンは、世界約30の国と地域で生産・開発・販売拠点を展開しています。日本人以外の社員が72%を占めており、バックグラウンドはさまざま。透明性の高いコミュニケーションにより意思決定のプロセスも透明化され、引き継ぎや技術の伝承にもプラスになり、社内風土を強くすることにつながるからです。

売上高の82%が日本以外 社員の72%がノンジャパニーズ

米国のグループ会社Topcon Positioning Systems社(TPS)に視察に行ったとき実感したのですが、本社とグループ会社のリーダーが非常に強い信頼関係で結ばれているんです。TPSだけでなく、M&A(合併・買収)や提携などで仲間になった30社ほどの会社に対して、それぞれの地域特性や文化に合ったリーダーシップを尊重している。そうした関係性でともに歩んできたからこそ、海外売上高比率82%という真のグローバル企業に成長できたのだと思います。

空気の層はリンゴの皮ほど薄い
地球と経済価値の両方を大切に

――宇宙飛行士から見た、地球環境保全の大切さを教えてください。

国際宇宙ステーションにて ©NASA
国際宇宙ステーションにて ©NASA

国際宇宙ステーションは高度400㎞のところにあり、地球は比較的大きく見えます。びっくりしたのは、空気の層の薄さです。地球がリンゴだとすると、空気の層は皮の厚さくらいでしかありません。地球って、はかないんだなと実感しました。私たちのすみかである地球を大切にしないと社会も経済も成り立ちません。その地球に今までのしわ寄せが来ていると同時に、人工衛星など地球の現状が分かる目を私たちは手に入れています。これからは「母なる地球」に甘えるのではなく、我々が地球を守る立場にならないといけません。

国際宇宙ステーションにて ©NASA
国際宇宙ステーションにて ©NASA

トプコンは、地球を大切にしながら経済価値も大切にする。その両方を目指している会社であり、私もその考え方に共感しています。私は昨年、社内サステナビリティ委員会に参画しました。トプコンは経営理念が社会貢献と直結しており、それに基づく事業自体が、そのままSDGs(持続可能な開発目標)に貢献しています。今後も世界中の人々の豊かな暮らしに貢献し続けていきたいですね。

100周年に向け企業価値より高める
「尖った」技術を究め新市場を切り開く

――今後、トプコンの社外取締役として取り組みたいことを聞かせてください。

皆さんと一緒に、企業価値を高めていくよう取り組んでいきます。2023年度から新たな中期経営計画2025が始まりました。中計を実現していくことで社会に貢献することが大きな目標。さらにその先にある創業100年の2032年に向けて、その道筋をつくっていくことが、社外取締役としての役割だと考えています。

中計では2025年に売上高2500億円、100周年の2032年には4000億円という目標を掲げています。達成に向け重要なことは、新たなプラットフォーマーとしてトプコンのDXソリューションを浸透させることです。まだまだ潜在的な需要や市場はあります。「医・食・住」の分野で世界中の困りごとを解決するには、「尖った」技術を究めて新たな市場を切り開く挑戦を絶えず続けていくことが大事。そのためには、一段上のフェーズに合った体制づくりも必要でしょう。

山崎直子

ベンチャー精神と伝統のバランス絶妙
ワクワクを楽しみながら挑戦し続ける

――トプコンらしさを含め、日経電子版読者にメッセージをお願いします。

常にチャレンジ、チャレンジ。90年を超えた伝統ある風土を大切にしつつ、常にベンチャー精神を忘れない。トプコンは、このバランスが絶妙な会社だと実感しています。私は社外取締役就任時に、社員の皆さんに「変えることにはリスクはあるが、変えないことにはもっと大きなリスクがある」という先輩宇宙飛行士、ジョン・ヤングの言葉を紹介しました。でも、そんな心配は無用でした。今は、社員の皆さんが「リスクテイカー」で、常に挑戦していることを痛感しています。

トプコンは、道なき道を歩み、技術とDXで新たな道をつくる会社です。展開している事業は世界でも最先端で、世の中の課題解決にじかにつながっています。こうした実感を大切に、ワクワクを楽しみながら挑戦し続けるトプコン。私も皆さんと一緒に、ワクワクを楽しみながら頑張っていきます。トプコンがつくる新しいプラットフォームに、どうぞご期待ください。