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映画館で観た映画を家庭のテレビで観たときに、映像に違和感を覚えたことはありませんか? その違和感は、テレビに備わっている色味や動きを補正する高機能が原因かもしれません。テレビはますます高画質化、スマート化が進んでおり、明るさや色味、コントラストなどを自動で調整する映像(画質)調整機能が搭載されています。そのおかげで、家庭で観る映像は鮮明で高画質に見えることが多いですが、一方で、オリジナルの映像とは異なる見え方をすることもあります。今回は、この映像調整機能について詳しく見ていきましょう。
テレビの映像(画質)調整機能とは?
現在、一般に販売されているテレビには、明るさや色温度などを細かく設定できる映像(画質)調整機能が備わっています。一般社団法人 日本人間工学会「薄型テレビの人間工学設計ガイドライン」によると、日本では他国と比べて視聴環境が明るく、バラエティ番組が多いとされています。そのため、購入時のデフォルト設定では、比較的明るい画面に設定されているか、部屋の明るさに合わせて画面の明るさを自動で調整するオート機能がオンになっていることが多いようです。
しかし、映像が明るすぎる場合、まぶしくて目が疲れるだけでなく、電力消費にもつながります。一般社団法人 日本オーディオ協会「ホームシアター映像調整・環境ガイドライン(基礎編:Ver.1.0)」によると、適正な画面輝度は、部屋の明るさや視聴距離(視野を覆う範囲)、年齢に依存し、また個人差も大きく影響するため、視聴者が快適な明るさに設定するのが理想的であるとしています。具体的には、外光がある場合には、自動調光機能をオンにした状態で、目視で眩しくない程度に暗く、かつ、白がグレーに見えない程度に明るく設定します。一方、外光がなく、室内の照度が安定した環境で画質を重視する場合には、自動調光機能をオフに設定し、目視で眩しくない程度に暗く、かつ、白がグレーに見えない程度に明るく設定することが推奨されています。
家で映画を観るのに最適な設定は?
それでは、映画を家で観るときには、どのような設定にすればオリジナル映像に近い状態で鑑賞できるのでしょうか。映画の映像をできるだけ忠実に再現するために、多くのテレビには「シアター」や「映画」といったプリセットメニューが備わっています。これらのプリセットを選ぶことで、色合いや輝度が自動的に調整され、映画鑑賞に適した画質が得られます。実際にテレビの映像を観ているときに、プリセットを映画モードに切り替えると、最初は黄色みがかって見えたり、薄く見えたりするかもしれません。しかし、映画を観ている時は、自然な色合いで、立体感も増しているように感じます。まぶしさも軽減されることが多いため、長時間の視聴もより楽に感じるかもしれません。
また、映画フィルムは一般的に24フレーム毎秒(fps)で撮影されますが、日本のテレビでは60Hz(毎秒60回画面を更新する)で再生されます。そのため、テレビで映画を視聴すると、元々の映像になかったフレームが追加される「フレーム補完機能」が働くことがあります。映像の動きに違和感が生じることがあるので、トム・クルーズが「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」の配信時に、フレーム補完機能をOFFにして視聴してほしいとSNSで勧めていて話題になりました。フレーム補完機能も、プリセットを「映画」に設定することで、解除される設定になっているテレビが多いようです。
色温度も調整すればより自然な映像に
さらに、部屋の照明の色温度に合わせてテレビの色温度も設定すると、映像がより自然に見えるようになります。例えば、一般社団法人 日本オーディオ協会の「ホームシアター映像調整・環境ガイドライン」では、以下のような設定が適しているとしています。
電球色(約3000K): テレビの色温度を5000Kから7000Kに設定
昼白色(約5000K): テレビの色温度を8000Kから10000Kに設定
昼光色(約7000K): テレビの色温度を10000Kから13000Kに設定
また、暗室での視聴環境では、色温度を6500Kに設定することが推奨されています。ただし、視野に占める割合が小さくなるほど、あるいは映像が明るくなるほど、高い色温度が好まれる傾向があります。そのため、設置環境やユーザーの個人差を考慮し、無理のない設定を行うことが大切です。
最近は、動画をスマートフォンやタブレットなどで視聴する機会も増えています。これらのデバイスにも、明るさや色温度を変えられる設定が備わっているものが多く、調整を行うことで、より快適な視聴体験を得ることができます。最近はスマート化が進み、自動で適したモードに設定してくれるものも多いですが、家で映画をより本格的に楽しむためには、自分にとって最も快適な環境を作ることが重要です。適切な設定で、映画館に近いクオリティの映像を楽しんでみてください。
(参考文献)