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生産者のアイデアとこだわりを活かした
付加価値米で高収益を実現

目次

稲作で収益を上げるためには、規模拡大や生産コストの削減に加え、米そのものの付加価値を高めることが重要です。近年は、食味の追求だけでなく、安心安全を考慮した独自の生育環境や生産工程を確立することで、高収益を生む付加価値米が各地で誕生しています。そこで、さまざまなアイデアとこだわりを活かした付加価値米と、その効果について考察しました。

注目の「付加価値米」とは

近年、一部では「令和の米騒動」の影響もあり、米の需要が高まり、価格は高水準で推移しました。しかし、この状況がいつまで続くかは不透明です。主食用米の需要が減少することは長年にわたり指摘されており、実際に全国的な消費量は一貫して減少傾向にあります。近年では人口減少などを背景に、年約10万トン規模での減少が続いているとされています。

 

このような状況下で注目したいのが、「付加価値米」への取り組みです。米に対するニーズが急速に多様化しているなか、いかに他の米と差別化し、高い付加価値を見出すかが重要な鍵となっています。その代表例が「ブランド米」です。ブランド米とは、明確な法的定義はないものの、一般的には農林水産省によって指定された産地品種銘柄(いわゆる銘柄米)など、市場において「ブランド」として認識されている米のことを指します。注目すべきブランド米を知るには、日本穀物検定協会が毎年発表している「米の食味ランキング」が有用な指数なります。

 

令和7年産米の相対取引価格(令和8年1月)を見ると、全国平均(玄米60kgあたり)35,465円に対し、静岡県コシヒカリ40,642円と非常に高値で取引されており、続いて山形県産つや姫は40,554円、新潟県(魚沼)コシヒカリは40,117円、富山県コシヒカリ39,737円、宮城県つや姫39,512円、ササニシキ38,477円など特定の地域や品種に高い価格がついています。

独自の工夫で高い付加価値を生み出す

では、なぜ米に付加価値をつけることが重要なのでしょうか。それは、収益性を大きく高められる可能性があるためです。特に、規模が小さく、大量生産による価格競争に不利な小規模農家や、有名ブランド銘柄を持たない産地にとっては、他にはない価値をつけることで、価格競争に巻き込まれずに安定した経営が可能となります。今後、米の消費縮小が予想される中、生き残るためには、「付加価値の創出」が欠かせません。

 

この“付加価値”は前述のブランド米に代表される「食味のよさ」や「特別な品種」といった要素だけにとどまりません。環境負荷の少ない栽培方法や消費者が共感を感じるストーリー、さらには流通やパッケージングの工夫など、銘柄名に依存しない多様なアプローチによって高い付加価値を生み出す取り組みも各地で広がっています。

 

その代表的な例として挙げられるのが、自然由来の肥料を活用する栽培方法です。たとえば「ぼかし肥料」は、米ぬかや油かす、鶏ふんなどの有機物を微生物によって分解・発酵させて作られるもので、これを導入している農家が全国に多く存在しています。土壌や環境への負荷を抑えつつ、安全・安心を訴求できる付加価値米として注目されています。

 

また、栽培方法そのものに特徴をもたせる事例もあります。北海道では、合鴨農法を取り入れた「イエスクリーン米」が環境に配慮した付加価値米の一例として知られています。秋田県では、合鴨農法と紙マルチ農法を組み合わせ、有機栽培の実践に力を入れていたり、福岡県では、田植え前にレンゲ草を育てて土にすき込み、肥料として活用する「レンゲ栽培」に取り組み、安全性と土壌改良を両立させています。そして、島根県の取り組みでは、海藻を煮詰めてつくったミネラル豊富な水溶液を田んぼに散布して育てる「藻塩米」があり、ミネラル分由来の食味のよさが高く評価されています。これらは一般的な米よりも数割高く販売され、収益性の向上につながっています。

一方で、あえて従来の“もっちり”とした日本の米の食感にこだわらず、パラパラとした食感が特徴の長粒米の栽培に挑戦する農家もあります。佐賀県では長粒米「ホシユタカ」を2014年から本格的に生産。コロナ禍で一時的に需要は落ち込んだものの、じわじわとニーズが高まっているとの報告もあります。長粒米はカレーやチャーハンに適しており、飲食店を中心に需要が高く、通常米の2倍以上の価格で取引される例もあります。このように、各地で地域特性や環境、アイデアを活かした栽培方法を取り入れることで、独自の付加価値を追求する取り組みが進んでいます。

健康志向にも対応しうる、今後の付加価値米に期待

今後は、世界的に高まる健康志向への対応も重要な方向性の一つです。特別栽培米や有機JAS認証、さらにはASIAGAP(Asia Good Agricultural Practices)・JGAP(Japan Good Agricultural Practices)などの第三者認証を取得することで、健康や環境への配慮を客観的に示すことができ、消費者からの信頼を獲得するとともに、付加価値を高めるひとつの手段になります。また、機能性表示食品として特定の栄養素や健康効果を訴求できる米の開発・栽培も、今後の差別化に向けた有効な取り組みになると期待されています。

 

そのような中、近年注目を集めているのがスマート農業を取り入れた米づくりです。AIやドローンなどの先進技術を駆使することで、農薬の使用量を最小限に抑えながら米を育てる取り組みが各地で進んでおり、なかには玄米の状態で第三者機関の検査を受け、残留農薬不検出と認定されている米もあります。

 

スマート農業導入の価値は、生産者にとって作業の効率化や省力化につながるだけではありません。安心・安全な栽培や環境への配慮という観点からも、消費者に高く評価される要素があり、こうした取り組みが購入の決め手となる大きな魅力になっています。

スマート農業導入で付加価値米を産出

食味や産地、品種、販売方法といった切り口による米の付加価値の提案は、すでに飽和状態にあるともいえます。そうした中でスマート農業による米づくりは新たな価値提案の一つとして大きな可能性を秘めています。

 

トプコンはいち早くスマート農業に取り組んできました。技術面での負担を軽減する「レーザー式生育センサー」や「自動操舵システム」を開発し、農作業における省力・軽労化を実現。農業経験が浅い人でも、熟練者と同じ精度で作業できる環境を整えています。

 

これからの時代、生産者は従来の栽培や販売方法をあらためて見直し、消費者がどのような付加価値を求めているかを見極める姿勢が求められます。その一つの手段として、スマート農業技術を活用することは、次世代の米づくりへの第一歩となるはずです。

トプコンのスマート農業

〈参考資料〉
令和6年産米の相対取引価格・数量

農林水産省 高付加価値型農業の実践を目標としている事例

農林水産省 米をめぐる状況について(令和6年3月)

JAしまね 海をまとった、島の香り 隠岐の島町・藻塩米

MBS “儲からない”農家の救世主に?注目集まる「付加価値米」とは…パラパラ&もっちり「プリンセスサリー」は2倍の価格!隠岐島の「藻塩米」はどうやってつくる?

日本農業新聞 国産長粒米に脚光

こめむすび 佐賀県オリジナル長粒米「ホシユタカ」の購入方法や特徴を開設!