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安田尚壱
めめ眼科 院長
埼玉医科大学卒業後、埼玉医科大学総合医療センターで初期研修、順天堂大学医学部附属浦安病院眼科に入局。順天堂大学医学部附属浦安病院や国立国際医療研究センター国府台病院などで経験を積み、2024年5月、千葉県船橋市に「めめ眼科船橋」を開院、院長となる。
「大人になったら、もう近視は進まない」なんて思っていませんか? 実は最近、大人になってからも近視が進行したり新たに発症もすることがわかってきました。年齢とともに増える目の病気の代表である白内障も、早い人は40歳代から。さらに40歳以上の20人にひとりが日本の失明原因の1位である緑内障にかかっているという報告もあります。少しずつ進む目の老化は、自分ではなかなか気づかないからやっかいです。お腹周りやお肌の変化が気になり始めたら、目のエイジングについても考えてみませんか?
近視の常識が変わった!大人になっても進む「軸性近視」
目はカメラのような構造をしています。目に入った光は角膜(黒目)や、カメラのレンズのような働きをする水晶体で屈折し、網膜で焦点を結んで目の前の像を写し出します。この働きによって、私たちは色や形が「見える」のです。眼球は、いわばこの一連の作業が行われるカメラ本体。
そして近視は、この眼球の形が通常よりも前後方向に長くなり、目の中に入った光線のピントの位置が網膜より前にズレてしまった状態を指します。一般的な近視は、この角膜から網膜までの距離である「眼軸」が伸びた「軸性近視」です。子どもの近視が進みやすいのは、成長期で眼軸も伸びやすいから。それなら、成長がストップした大人は眼軸も伸びず、近視も進まないはずと、これまでは考えられていました。しかし最近の研究では、大人でも近視が進行したり、新たに近視になることがわかってきました。原因はいったい何なんでしょう?
目のリスクは、近くを見続ける生活で高まる
大人の近視の原因は、パソコンやスマホなどの画面を見つめる時間の増加です。目はピントを合わせるために水晶体のふくらみを調整します。しかし、30センチ以内のようなごく近い距離を見る時は、焦点が奥に行き過ぎ、レンズの調整では間に合わなくなります。この状態が長く続くと、目は形そのものを変えてまで焦点を合わせようとし、眼軸が伸びてしまうのです。
丸かったはずの眼球がラグビーボールのような形になってしまうこともあり、しかも一度長くなった眼軸が元に戻ることはありません。そうなると眼球の内側にある網膜は引き伸ばされて薄くなり、網膜が眼底から剥がれてくる「網膜剥離」など病気のリスクも高まります。
このように近視の目は、パソコンやスマホを凝視する時間が増えることによって、自分が思う以上に負担がかかっているのです。強くこすったり押したり、余計な負荷をかけないように心がけることも大切です。また、子どもの頃、親や先生からよく「遠くを見なさい」と何度も注意されたものですが、アメリカ眼科学会も意識して遠くを見るための「20-20-20」ルールを推奨しています。
これは、パソコンやスマホ、タブレット端末などの画面を「20分見たら、20秒間、20フィート(約6メートル)以上離れたものを眺める」ことで目を休ませるというもの。自分で簡単に目を守れる習慣として、子どもだけでなくあらゆる年齢の人に勧めています。オフィスワークや日常生活でもぜひこのルールを意識してみてください。

眼軸が伸びているかどうかは、視力検査だけではわかりません。「近頃なんとなく見えにくいな」と感じる方は、軸性近視が進んでいないかどうか、眼科で眼軸の長さを測ってもらうこともおすすめです。

自分では気づきにくい、加齢による目の病気
目の老化といえば、昔から知られるのが「老眼」や「白内障」です。昨今は加齢とともに増える目の病気として、「緑内障」や「加齢黄斑変性」などの認知度も高まってきました。以下が加齢による目の病気の主な特徴です。
老眼
細かい文字が読みにくい、メガネやコンタクトレンズで遠くが見える状態にすると手元が見えにくい、これらの症状が起こるのが老眼。加齢によって誰もが老眼になるといわれていますが、30代頃から徐々に現れ、40代後半にかけて進んでいくのが一般的です。
白内障
白内障とは、レンズの役割を持つ目の水晶体が白く濁り、ものが見えづらくなる病気です。水晶体は通常、透明な組織ですが白く濁ってしまうと、集めた光がうまく眼底に届かなくなることから、視界がかすんだり、視力の低下を引き起こします。50代頃から加齢と共に発症率が高まり、80代以上ではほぼ100%の人に何らかの症状が見られたという調査結果も。
緑内障
老化によって視神経が減少することにより、視野が徐々に欠けたり狭くなったりする目の病気が緑内障です。決して珍しい病気ではなく、日本緑内障学会の調査によると40代以上の5%、日本人の20人に1人が緑内障とも言われ、失明原因のワースト1位となっています。
加齢黄斑変性
人はものを見るときに、目の中に入ってきた光を網膜という組織が刺激として受け取ります。その網膜の中心部分が黄斑です。加齢に伴って、黄斑(おうはん)にダメージが生じることで視力が低下してしまうのが加齢黄斑変性。視野の真ん中がよく見えない、歪んで見える、といった症状が起こります。さらに症状が進行すると、視野の中心が黒く見えたり、色の識別ができなくなることも。
加齢による目の病気の治療法は?
現代では、白内障なら濁った水晶体を手術で人工レンズと交換することができますが、緑内障や加齢黄斑変性の場合、減少した視神経や網膜は取り替えがきかず、治療によって元の状態に回復させることはできません。しかもどちらも自覚症状がないまま進行することが多い病気です。
日本眼科医会の記者発表資料によると、日本での緑内障の有病率は非常に多く、しかも診断時に自覚症状がなかったという人が60%にのぼります。失明原因の1位ではありますが、適切な治療を早くスタートすればほとんどの人が視力と視野を保てるのも緑内障の特徴です。つまり、いかに早期の段階で発見し治療できるか、それがとても重要なカギなのです。
緑内障と加齢黄斑変性を発見するには「眼底検査」が必須です。どちらの病気も視力検査だけでは発見できません。職場で受けている定期健康診断や地域の特定健診には、残念ながら眼底検査の項目が含まれていないことが多いようです。普段受けている健康診断の項目に眼底検査がない場合、自覚症状がなくても40歳を過ぎたら一度は眼科で眼底検査をしてもらっておくことをおすすめします。
「見えにくさ」はうつや認知機能にも関連する!?
メガネが合わなくなったら目がとても疲れて…という話を聞いたことはありませんか? 視覚が衰えると生活に不便なだけでなく、肩こりや頭痛、時には気分の落ち込みなど、体や心にさまざまな影響を及ぼします。
また、「情報の約9割は目から入ってくる」といわれるように、視覚は五感の中でも非常に重要なポジションを担っています。視力が低下すると脳への刺激が減り、認知機能の低下をもたらしかねません。逆に、視力を保つことは認知機能によい影響を与えるということになります。
実際に、白内障の手術を受けることで認知症のリスクが低下したという研究報告もあります。若い頃から目をいたわり、「ものが見えづらくなったな」と感じたら、早めの検査で自分の視力に合ったメガネを選ぶなど、しっかりものが見える状態をキープすることが、心と体の健康にも一役買うことをお忘れなく。

今日からさっそく!40歳からの「アイフレイル」対策
テレビの健康情報番組などで最近よく目にする「フレイル」。フレイルとは「加齢によって身体のさまざまな機能が低下し、介護を必要とする健康障害に陥りやすくなった状態」のことです。目においても、加齢や外からのストレスによって目の機能が低下した状態や、低下のリスクが高い状態が「アイフレイル」です。目もいつまでも若いままではありません。目の有病率は50代から急上昇するので、40代が早期発見、老化による眼病予防のチャンス! 40歳からは1年に1度「アイフレイル」を意識した検査をしましょう。
また白内障、緑内障、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性、ドライアイなどの主な目の病気は、加齢だけでなく生活習慣とも関連が深いといわれています。喫煙や高血圧、高脂肪食、座りっぱなしの生活などが、他の病気と同じく目にとってもリスク因子となります。反対に運動による適正な体重コントロールや、果物、野菜、魚などをしっかりとる健康的な食生活への改善が眼病予防にもつながります。心と体に良い生活習慣は、目のアンチエイジングにとっても欠かせません。定期的な検査で早期発見を心がけ、リスク管理しながら健康的な「視生活」を今から始めましょう。
第19回 日本眼科記者懇談会【資料2】 より
https://www.gankaikai.or.jp/press/20210930_3.pdf




