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再生可能・CO₂吸収、そしてアートへ  進化するコンクリートの今

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建築やインフラに欠かせないコンクリート。セメントに砂と砂利などの骨材、水を適切な割合で混ぜることで、強度のある構造物を作ることができ、安価でもあることから、広く利用されています。これまでに使用されたコンクリートの総量は、東京ドーム8000個以上に相当するとも言われています。近年では、廃材を活用した再生可能なコンクリート や、CO₂を吸収するコンクリートなど、環境に配慮した技術が注目されています。また、無機質なイメージのあるコンクリートを、建築デザインやアート作品として活用する動きも広がっています。本記事では、こうした“進化を続けるコンクリート”の最新技術と、その性能を施工現場で発揮するためのトプコンの技術について紹介します。

火山灰を使ったローマのコンクリート

「コンクリート」という言葉は、ラテン語の concr rē tus(凝固した、固まった)に由来しています。その言語が示す通り、セメント、水、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)といった異なる素材が化学反応で結びつき、強靭な構造体を形成します。

建築材料として使われるようになった歴史は意外に古く、約2000年前の古代ローマにまで遡ります。当時、人々はナポリ近郊のヴェスビオス火山から降り積もる火山灰が水中で硬化し、強度を増すことを発見しました。この火山灰(ポッツォラーナ)を使った「ローマン・コンクリート」により、神殿や浴場、コロッセオといった数々の建造物が築かれました。

 

しかし、火山灰が特定の地域でしか採取できないことに加え、石積みや大理石を使った建築が美術的・宗教的に高く評価されるようになりました。そのため、加工しやすく装飾性の高い石材を用いる中世ゴシック建築が主流となり、ローマン・コンクリート技術は次第に忘れられていきました。

再生コンクリートと、再生するコンクリート

現代のコンクリートは、18世紀に発明されたポルトランドセメントの登場で飛躍的に普及し、構造物建築の主役となりました。ポルトランドセメントは、石灰石と粘土を高温で焼成・粉砕したもので、水と混ぜると短時間で硬化し、高い強度を発揮します。均質で大量生産が可能なうえ、品質が安定し施工が容易なことから近代建築に適していました。

 

しかし、コンクリートが普及する一方で、解体時に発生する大量の廃コンクリートが新たな課題として浮上しました。こうした問題に対応する技術のひとつが、1970年代から研究が始まったコンクリートのリサイクル技術です。解体コンクリート(コンクリートガラ)を砕いて粒度調整したものを「再生骨材」として再利用する取り組みが進んでいます。近年では、品質改善が進み、構造物全体に使用できるレベルにまで性能が向上しています。

 

さらに近年では、廃棄物削減という発想からコンクリートそもそもの耐用年数を延ばす技術も進化しています。微生物やカプセル化した化学物質を封入して、ひび割れを自動的に修復する「再生するコンクリート」です。

 

微生物を利用したタイプは、ひびが入ると水や空気が侵入し、それを感知した微生物が炭酸カルシウムを生成し、亀裂を埋めます。また、化学反応型では、未反応のセメント成分やカプセル内の樹脂が水分を受けて硬化し、内部から強度が回復する、という仕組みです。

脱炭素化に貢献するコンクリート

世界的な脱炭素化の潮流のなか、コンクリート産業も変革が求められています。

 

その一例が「低炭素型コンクリート」です。通常のコンクリートに使われる主成分であるポルトランドセメントは、石灰石や粘土などを高温で焼成して製造されます。その際、石灰石に含まれる炭酸カルシウムが分解してCO₂を放出するほか、高温を維持する燃料の燃焼でも大量のCO₂が発生します。結果として、セメント製造は世界のCO₂排出量の約7〜8%を占めるとされ、これを低減するための取り組みが加速しています。

 

低炭素型コンクリートは、セメントの一部を高炉スラグやフライアッシュといった産業副産物で置き換えることで、製造時CO₂排出量を大幅に削減します。高炉スラグは製鉄の副産物、フライアッシュは石炭火力発電で出る灰で、いずれも本来廃棄されるものです。これらを活用することでセメントの使用量の削減による CO₂ 排出抑制 に加え、産業副産物の有効利用にもつながります。

CO₂を吸収する、内部に閉じ込めるコンクリート

CO₂を「固定化する」という発想にも注目が集まっています。

 

CO₂吸収コンクリートは、硬化の過程で大気中や専用設備内の二酸化炭素を取り込み、内部に固定化する環境配慮型のコンクリートです。通常のコンクリートも長い年月をかけて「炭酸化」という現象でCO₂を吸収しますが、その反応は非常に緩慢で、構造物の耐久性低下の一因になることもありました。一方、CO₂吸収コンクリートは、硬化時にCO₂を注入することで、水酸化カルシウムと反応して炭酸カルシウムを生成し、内部に固定します。この過程で早期に強度が高まるため、施工の効率化もはかれます。

コンクリートはアートになる

コンクリートは本来、建築の構造材として発展してきましたが、20世紀以降、その無機質な質感や造形の自由度が評価され、アートの世界でも用いられるようになりました。

 

建築ではル・コルビュジエが打ち放しコンクリートを美学として取り入れ、この流れはブルータリズム建築や現代彫刻に広がります。コンクリートは打設時の高い可塑性により自由な造形を可能にし、硬化後は強度と耐候性を持つため、屋外彫刻に理想的な素材です。特に近年はドナルド・ジャッドの《Concrete Works》が、ランドアートの視点から再評価され、環境と調和しつつ時の経過を刻む屋外作品として注目を集めています。

施工現場を支えるトプコンの技術と進化する未来

こうして進化を遂げたコンクリートも、その性能を引き出すためには高い施工精度と品質管理が不可欠です。その要となる現場の検査・測量を支えるのがトプコンの技術です。

 

トプコンが提供する高精度3Dレーザースキャナーは、コンクリート床の平坦性や出来形、さらには部材設置精度の検査といった、建築のミリ単位の精度が求められる検査に最適な機器です。従来の水準器による部分的な測定と比べて、面的な計測が可能となるため、生産性と検査精度が大幅に向上します。

3Dレーザースキャナーは検査用途だけでなく、建築分野における土地形状の調査、ならびに改築・改装時の外装および内装の現況調査にも活用されています。高密度な3D点群データを取得できるため、現況把握から設計・施工へのフィードバックまで、幅広い工程で効果を発揮します。

3D Laser Scanner GLS-2200シリーズ

トプコンの建築検査ソリューション

 

<参考文献>

高村建材工業株式会社 コンクリートの歴史

国土交通省 早期に取り組むべき施策について

国際環境経済研究所 セメント産業におけるカーボンニュートラルへの取組みについて

清水建設  バイオ炭を用いた環境配慮型コンクリートを実工事に初適用

清水建設 コンクリート内部にCO2を固定してカーボンネガティブを実現する「バイオ炭コンクリート」