2022-12-14

労働者への報酬はビール!? ピラミッド建設の真実に迫る

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「働いたあとのビールは旨い!」。お酒が好きな人なら感じたことがあるはずです。それは古代エジプト時代でも同じこと。2021年2月、世界最古とみられる今から5000年以上前のビール醸造所がエジプトで見つかりました。当時、ナイル川の周りにはおよそ100万人の人々が暮らし、小麦からビールを造り、税として王に納めていたといいます。ビールは給料の代わりにも使われました。

 

第4王朝クフ王が建てたとされる世界遺産、ギザの大ピラミッドは、完成までに約20年間を要し、延べ1万人近い労働者が駆り出されました。彼らには労働の報酬に、毎日4〜5リットルのビールが支給されたといいます。仕事終わりに飲むおいしいビール目当てに、ピラミッド建設に携わった労働者たちがどれほど偉大な事業に取り組んだのか? 大ピラミッド建設の真実に迫ります。

 

大ピラミッドが東京都心に建ったとしたら?

 

ギザの大ピラミッドの完成時(紀元前2420年)の高さは約146メートル(現在は頂上部が崩壊し約138メートル)。これはおよそ40階建てのビルに相当し、東京の品川駅前でひと際目立っている品川プリンスホテルのメインタワーの138メートルに匹敵する高さ。当時はもちろん世界一高い建造物で、1880年にドイツのケルン大聖堂が完成するまで、4000年以上抜かれることはありませんでした。底面は一辺約230メートルの正方形で、面積は約5万2,900平方メートル。普通のビルなら10棟前後が建ってしまう大きさです。

 

ピラミッドというと広大な砂漠にあるイメージがありますが、実際は町のすぐはずれに建っていて、訪れた観光客は「思っていたより小さい」と感想を抱くことが多いそうです。しかし、現代の東京都心に建てたとしても引けを取らない建造物が、約4000年以上前に建てられたのだとするとやはり驚異的。世界七不思議のひとつにも数えられている所以です。

 

ピラミッド建設最大の謎とは?

 

ギザの大ピラミッドで最も驚異的で謎に包まれているのが、その建て方です。大ピラミッドは、平均約2.5トン、最大で約60トンの石材が約230万個も積み上げられています。ある程度の高さまでなら大人数で力を合わせて、石を並べることは可能ですが、クレーンも滑車もない時代に、146メートルの高さまで、しかもだんだん狭くなる場所に、どうやって重い石材を運んだのでしょうか? 

 

運び込む高さまで傾斜路をつくって引っ張り上げたとする説が有力ですが、頂上まで運ぶには、かなり急な斜面になってしまい引っ張り上げるのは不可能。緩やかな傾斜にすれば1.6キロメートルという距離が必要で、これも現実的ではありません。そのためピラミッドの建設法には多くの議論が飛び交い、「宇宙人の手を借りた」「ピラミッド建設には実際は100年かかった」などの説も出ました。

しかし近年、これらの議論に終止符が打たれるかもしれない傾斜路の遺構が発見されたのです。その傾斜路の注目すべき点は、傾きが急であること、そして両端に大きな穴があいていることです。その穴に柱を建ててロープをかけ、石材を引き上げれば、急な斜面でも人力で高い場所まで石材を運ぶことが可能であったことを示しています。いずれの方法であれ、正確な測量に基づく精巧な設計と頑丈な造りは、建設に従事した労働者たちの偉業であることに間違いはありません。そのおかげで、ギザの大ピラミッドは、今も当時のままの姿を伝えています。

 

ピラミッドを現代に建設すると?

 

ちなみに、現代にピラミッドを建設してみるとどのような工事になるのでしょうか? 大手ゼネコンである大林組が発表した、具体的な工程と費用の試算結果があります。高さ60メートルまでは運搬トレーラーで直接乗り入れ、60メートルより高度の場所にはクレーンやエレベーターを使い、最頂部はヘリコプターを導入して、工期は5年、総工費は1,250億円になるそうです。一方、当時の工法のままで現代の建設費に試算すると約4兆円にも及び、ここまで大規模な建造物は世界には未だ存在していないといいます。

 

ピラミッドの建設は、奴隷に造らせたという説が語られていた時代もありましたが、今ではそれは否定されています。ピラミッド建設現場の近くには、推定6,000人の建設業界エリートたちが快適に暮らしていたと思われる街が見つかっています。石切場には、労働者たちが毎日ビールを与えられて喜んでいたことを記した落書きも残されています。ピラミッドは、仕事終わりに飲むおいしいビールを楽しみにして働いた労働者たちの技術の賜物なのです。

ピラミッドの記録を残すトプコンの技術

 

現在エジプトには、ギザの大ピラミッド以外にも130基以上のピラミッドが見つかっています。そのうち、最古といわれるのが第3王朝時代のジョセル王によって建設されたピラミッド。斜面が階段状になっていることから階段ピラミッドと呼ばれています。このピラミッドは1992年10月に発生したマグニチュード5.5の地震により、崩壊が進む恐れがあり、修復作業が必要になりました。しかし、修復に入れば、本来の姿が失われる危険性があります。

 

そこで、白羽の矢が立ったのがトプコンの3Dレーザースキャナーでした。トプコンは3DレーザースキャナーGLS-1000で階段ピラミッドを5ミリ単位でスキャンし、写真や図面とは比べものにならない膨大な情報量をもった3次元データを取得しました。たとえ修復によってオリジナルの情報が失われても、3次元データが残っていれば、後世の研究者が、現場にいるのと変わらぬ精度と臨場感で、それを分析・研究することが可能になります。

 

今後の考古学調査においても、3D スキャナーを活用することで、発掘によって現状を破壊せずに調査を進めることが期待できます。トプコンの技術は都市や地形の計測のみならず、世界的文化財の研究、保護にも活躍の場を広げています。

トプコンの3Dスキャナー関連製品

GLS-1000とジョセル王の階段ピラミッド