2023-03-01

道路渋滞による経済損失は12兆円!?

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ゴールデンウィーク(GW)やお盆、年末になると流れる帰省ラッシュのニュース。高速道路では30kmを超える渋滞が報告されることもしばしばあります。2022年のGWは、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた行動制限がなかったことから、高速道路の交通量は昨年に比べて136%増加。30km以上の渋滞にいたっては4.5倍に増えたそうです。

 

「人出が戻った!」と言われましたが、それでもコロナ禍前よりは減少しています。2015年に国土交通省道路局が発表した資料によると、ひとりあたりの移動乗車時間100時間に対し、渋滞によって失われた時間(渋滞損失時間)はなんと4割にあたる40時間。これは約280万人分の労働力に匹敵し、約12兆円の損失にあたるという試算もあります。また、無駄な燃料消失や排気ガスによる大気汚染、騒音問題、交通事故の原因になるなど、渋滞による弊害は多大。そのため、日本では渋滞解消に向けた取り組みが行われています。

 

止まらなくても渋滞! 渋滞の定義とは?

 

「渋滞」という言葉の意味は、物事が滞ってはかどらないこと。交通渋滞だけを指す用語ではありません。しかし、車が普及し始めるまでは渋滞という言葉は存在せず、1961(昭和36)年に警視庁がラジオで交通情報を流したのが最初だといわれています。つまり、渋滞という言葉自体が交通渋滞から生まれたのです。

 

では、「交通渋滞」とはどのような状態のことを指すのでしょうか。実は、渋滞には統一した定義はなく、日本道路交通情報センターでは、一般道路で時速10km以下、都市部の高速道路で時速20km以下、郊外部の高速道路で時速40km以下の状態を渋滞と表現する際の基準としています。一方、NEXCO東日本では、時速40km以下での低速走行や、停止や発進を繰り返す車列が1km以上かつ15分以上継続した状態を指します。

 

 

時速40kmは、一般道なら制限速度であることも多いので、もし高速道路で長い渋滞が発生していても、下道よりは速く進む可能性があります。渋滞情報を知って、すぐに高速道路を下りるのは早合点ということもありうるのです。

 

渋滞が発生するメカニズムは?

 

渋滞が起こる原因はさまざまです。事故や工事を真っ先に思いつく人が多いかもしれませんが、実は一般道路であれば信号、高速道路であればサグ部や上り坂が渋滞発生要因の第1位。「サグ部」とは下り坂から上り坂に切り替わるV字部分のこと。下り坂を走る際に車は加速するので、一定数のドライバーがスピードを緩めます。そのスピードのまま、やがて車はサグ部に差し掛かり、上り坂へ切り替わるのですが、高速道路の傾斜は緩やかなのですぐには気づきません。

 

緩めたスピードのまま上り坂を走ってしまうため、車はさらに減速します。減速した車に後続車が追いついてしまうとブレーキが踏まれるでしょう。すると、次々にブレーキを踏む後続車が増えます。これが渋滞の原因です。トンネルの入り口でも、圧迫感や視界の悪さからスピードを緩めるドライバーが多く、サグ部と同様に渋滞発生の要因になっています。事故でも工事でもなく、接続道路もないのに渋滞し、急に車が進み出したというケースは、たいていサグ部やトンネルが原因です。

渋滞解消に向けての取り組み

 

サグ部での渋滞解消について、渋滞学を研究する東京大学先端科学技術研究センターのチームが「渋滞吸収理論」を提唱しています。前方に渋滞情報を察知した時点で、車間距離を十分に取って走行する「渋滞吸収走行」を行うと、前方の車がブレーキを踏んでも、自身はブレーキを踏まずに済むので、後続車の渋滞を吸収できる(後継者が渋滞に巻き込まれなくなる)という理論です。2009年に、JAF、警察庁とともにこの理論の検証実験を行ったところ、実際に渋滞解消効果が得られました。

 

渋滞吸収走行を実践する際に役立つのが、ドライバーに渋滞情報を知らせる道路交通情報です。どこでどれくらい渋滞が起こっているかという情報は、昔はヘリコプターやパトロールカーが収集していました。現在は、超音波や紫外線などで察知する車両感知器を道路の一定間隔に設置し、光ファイバーなどの通信網を使って収集。ドライバーは、電光掲示板やメディアで情報を得ることができます。

 

渋滞緩和に期待されているITS

 

そして現在、道路交通問題解決の切り札として期待されているのがITS(Intelligent Transport Systems)です。高度道路交通システムのことで、最新エレクトロニクス技術を用いて、人と道路と車を結び、安全で快適な車社会を目指しています。自動で料金が支払えるETCや、道路に設置された電子ビーコンからカーナビを通じて交通情報を知らせるVICS(道路交通情報システム)もそのうちのひとつ。デリバリーやタクシーの送迎をアプリで頼んだときに、車の位置情報が見られるのもITSの技術です。

ITSは今後もどんどん進み、2030年には車が完全に自動で走行できるといわれています。人と街をつなぐ道路とモビリティのシステムが整うことで、暮らしやすい街にまた一歩、近づいていくはずです。

 

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