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栽培から発酵など製造工程を国内で完結する「和紅茶」の生産が全国で広まっています。産地も2024年には1000カ所以上(地紅茶学会調べ)に拡大し、個人農家も数多く参入するなど、地域の新たな特産品としても脚光を浴びています。現在、国内で流通する紅茶のほとんどが輸入品であるため、国産品は付加価値も高く、新茶ではない二番茶でも高値で取引されることや栽培管理のしやすさが生産拡大の後押しになっているようです。国内の緑茶消費量が低迷するなか、紅茶の生産に活路を見出す産地も増えており、今後の伸びしろに期待が高まる和紅茶の現況や今後の課題などについてご紹介します。
人気が沸く和紅茶。その栽培・加工方法とは?
近年、カフェや紅茶専門店などでも目にする機会が増えた国産の紅茶。「和紅茶」や「地紅茶」といった呼び方で親しまれ、注目を集める存在となっています。
和紅茶とは、日本国内で栽培された茶葉を使い、国内で加工した紅茶のこと。紅茶に使用される茶葉は緑茶と同じもので、栽培方法も基本的には変わりませんが、大きく異なるのは、その加工方法です。和紅茶は刈り取った茶葉に含まれる水分を取り除き、香り成分を引き出す「萎凋(いちょう)」、茶葉を揉む「揉捻(じゅうねん)」といった工程を経て、発酵させて仕上げます。簡単に言えば、発酵させずに作るのが緑茶、完全に発酵させて仕上げるのが紅茶です。この発酵の有無が両者の味わいや香りを大きく分けるポイントになります。

和紅茶が近年脚光を浴びるようになった背景には、緑茶離れが進んでいることが挙げられます。食文化の欧米化やペットボトルの緑茶飲料の普及から、急須で淹れる茶葉の消費量は年々減少傾向にあります。農林水産省によると、2025年の清涼飲料などのうち緑茶飲料の1人当たりの年間消費量は2009年と比べて2割以上増加。
一方で、急須用のリーフ茶などの1世帯当たりの購入数量は、2009年と比較して約3割も減少しています。さらに、1世帯当たりの年間支出金額を見ても、ここ数年は11,000円程度と横ばいではあるものの、その内訳として緑茶(リーフ茶など)は2009年と比べ3割以上減少しているのに対し、茶飲料への支出は5割増加。こうしたデータからも、茶葉から淹れる緑茶離れが急速に進んでいることがわかります。

和紅茶栽培が注目される理由は?個人農家も多く参入
こうした時代の流れから、緑茶離れの起死回生の一手として注目されている和紅茶。その生産は全国に広がり、2008年には26都府県・95カ所だった産地が、2023年には初めて1000カ所を突破。さらに2024年には全47都道府県・1058カ所まで拡大しています。
和紅茶がここまで支持を集めている背景には、いくつかの明確な理由があります。そのひとつが、緑茶では価格が下がりがちな二番茶でも、和紅茶としては比較的高値で取り引きされる点です。一般的に緑茶の場合、一番茶(新茶)と比べて二番茶はおよそ半値程度でしか取り引きされませんが、和紅茶であれば二番茶でも十分な価格がつくため、収益の安定を図れるとして注目されています。また二番茶には紅茶特有の渋みやコクを生み出す「タンニン」が多く、紅茶づくりに適していることも相まって、従来は価値が下がっていた二番茶の有効活用にも繋がっています。
さらに、大規模生産の場合は紅茶用の設備が必要ですが、小規模生産であれば、緑茶に使う茶もみの機械をそのまま紅茶づくりに活用できる点も生産者にとって大きな魅力です。また、紅茶は熟成させるため緑茶と比べて在庫として取っておけるという利点もあります。加えて、一般的に茶葉のうまみを増すアミノ酸は、紅茶においては少ない方が美味しいとされています。そのため、アミノ酸を増やすために使う窒素肥料を減らすことができ、緑茶よりも土壌の管理がしやすいという面も。
こうした条件がそろったことで、茶農家の間では和紅茶への取り組みが一大ムーブメントに。特に、その土地ならではの風土や気候を生かすことで、作り手ごとに個性豊かな味わいや香りを生み出せる点も魅力となり、小規模農家の参入が目立つのも大きな特徴になっています。
意外に歴史が古い日本産の和紅茶
実は日本での紅茶生産の歴史は長く、明治初期の1870年代にまでさかのぼります。当時、茶葉は製糸と並ぶ日本の主要な輸出品であり、なかでも世界的に需要の高かった紅茶が注目され、一時期は海外への輸出も盛んに行われていました。しかし、1971年の紅茶輸入自由化を契機に、安価な外国産紅茶との競争が激化。次第に国内生産は縮小し、紅茶づくりは衰退の一途を辿ることとなります。そんな流れを変えたのが、1990年代以降の動きから。1995年に「べにふうき」という日本独自の紅茶用品種が誕生したのを機に、国産でも品質のよい紅茶が作れるという認識が広まり、国内の紅茶生産が徐々に再興していきました。
和紅茶の多くは緑茶向きの品種「やぶきた」種から作られていますが、紅茶向けに開発された品種として、「べにふうき」をはじめ、「べにひかり」「藤かおり」「さやまかおり」「べにほまれ」などの品種も登場しました。生産者たちの弛まぬ努力と創意工夫によって技術が磨かれたことにより、紅茶の生産技術が向上。また、代々続く茶農家の新世代が、「先代とは異なる強みを」と、台湾や中国へお茶の研修に赴くなど意欲的に学びを深めた結果、和紅茶の品質は近年、飛躍的に評価が高まっています。

今後のニーズがますます高まる和紅茶の可能性
そして、肝心の和紅茶の風味ですが、生産地や生産者によって味わいは大きく変わるものの、一般的に海外産の紅茶と比べてカテキン含有量が少なく、渋みが控えめでまろやかな甘みを感じられるのが特徴です。特に令和以降、その品質は飛躍的に向上し、世界からも注目を集めるようになりました。2022年には英国の茶認定機関「UKティー・アカデミー」が開催した国際品評会で、日本のある紅茶が緑茶や烏龍茶、白茶など約300銘柄の中から最高評価を獲得。和紅茶が国際的にも通用するクオリティを持つことを証明したことから、今後は海外市場でもその価値が広く認められていくと期待されています。
一方、国内においても地産地消やトレーサビリティへの関心が高まる中で、「誰がどこで、どのように作ったか」が明確な和紅茶は、安心して選べる飲み物として評価されています。日常的に口にするものだからこそ、安全性や産地に対する信頼感が重要視されており、そうしたニーズにも和紅茶はしっかりと応えています。
全国的に見れば、国産紅茶の生産量はまだまだ少ないものの、その需要は年々着実に伸びており、今後は安定した供給体制の整備が求められます。輸出が好調な緑茶と並び、和紅茶は日本の農業に新たな価値をもたらす存在として、未来を支える柱のひとつになり得るのではないでしょうか。
そして現在、茶の生産地の現場ではスマート農業が大きく貢献しています。主産地である鹿児島や静岡県ではIoT技術・ロボット化技術といったスマート技術の導入により、作業時間の削減や省力化を実現することで、将来の規模拡大や品質向上に役立てています。
トプコンはいち早くスマート農業に取り組んできました。長年培ってきた光学技術、GNSS技術、また、各種センサーやネットワーク技術を駆使し、農機の自動運転システムやレーザー式生育センサーでの作物の生育状況の見える化や農業の自動化/IT化を実現。これまで勘と経験に依存していた営農サイクルをデジタルデータで一元管理することで、作業の自動化・効率化を図り、生産性や品質向上に貢献しています。来たる将来に向けてスマート農業を取り入れることで農業の効率化・省力化を実現できるよう、トプコンは日本の生産者を今後もサポートしていきます。
トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。
◆令和6年の清涼飲料などのうち緑茶飲料の1人当たりの年間消費量など
農林水産省 茶業及びお茶の文化に係る現状と課題
◆和紅茶の歴史
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