2023-07-21

特A評価の米は、本当においしい?「食味の評価」とは

目次

米のおいしさの判断基準となる「米の食味ランキング」。最高評価の特Aの獲得を巡り、毎年多くの産地が一喜一憂し、消費者もその評価で米を選ぶ傾向が顕著になっています。そこで、今年度に特Aを獲得した注目の品種や評価の傾向、そして消費者による米選びの現状などを解説。米の食味への疑問を解消し、おいしい米を食べる・栽培するためのヒントをお伝えします。

 

2023年3月発表「令和4年(2022年)産米の食味ランキング」の結果

2023(令和5)年3月に日本穀物検定協会から発表された「令和4年(2022年)産米の食味ランキング(https://www.kokken.or.jp/ranking_area.html)」。全国で生産された米の味や香り、粘りなどの評価結果をランキングするこの取り組みに、今年度は各都道府県から選出された152産地品種が評価の対象となり、このうち「特A」と評価されたものは40産地品種になりました。

◆令和4年(2022年)産米 特Aランク(一部抜粋)
●北海道「ななつぼし」「ゆめぴりか」
●青森県(津軽)「青天の霹靂」
●山形県(村山・置賜)「つや姫」
●茨城県(県央・県南)「コシヒカリ」
●新潟県(上越・魚沼)「コシヒカリ」
●福井県「いちほまれ」
●静岡県(西部)「にこまる」
●愛知県(三河中山間)「ミネアサヒ」
●鳥取県「きぬむすめ」「星空舞」
●岡山県(県南)「にこまる」
●広島県(南部)「恋の予感」
●香川県「おいでまい」
●高知県(県北・県西)「にこまる」
●福岡県「元気つくし」
●大分県(西部)「ひとめぼれ」

 

その中で、特Aと評価された米を品種別にラインナップ。
◆令和3年産と比べて減少傾向
「コシヒカリ」が8産地品種(前年13)
「きぬむすめ」が3産地品種(前年5)
「ヒノヒカリ」が2産地品種(前年4)
◆令和3年産と比べて維持、もしくは増加傾向
「つや姫」が4産地品種(前年4)
「にこまる」が6産地品種(前年3)

 

「特A」だった産地品種は40と、低迷した前年からさらに2も減りました。ピークは平成30年産の55です。減少した背景には、全国的な猛暑に加え、台風や線状降水帯の発生による日照不足が影響したことからと考えられます。なかでも令和3年度産で13産地品種を獲得した「コシヒカリ」は今回8産地品種に減少。その理由は、8〜9月にかけての台風などの影響で稲が倒れてしまったことが要因だといわれています。

 

その一方で躍進したのが「にこまる」。今回は静岡県西部・岡山県県南・愛媛県・高知県県北・高知県県西・長崎県の6産地品種が出品され、すべて特Aを獲得するという快挙を成し遂げました。

「にこまる」は農研機構九州沖縄農業研究センターが温暖化に適応した品種として開発したことから、猛暑に強い特性があります。稲は種子(米)が実り育っていく登熟期に高温が続くと、種子が白く濁った「白未熟粒」が発生しやすくなり、食味低下に繋がります。温暖化が続く中、「にこまる」のような高温耐性品種を導入する産地が増えており、これからの食味の良い米(良食味米)を作るための鍵だといわれています。

「米の食味ランキング」で選ばれた米は本当においしい?

「米の食味ランキング」とは、一般財団法人日本穀物検定協会が良質米づくりの推進と米の消費拡大に役立てることを目的に、全国の産地から集まった多くの米(品種)を食味試験し、その評価結果を毎年ランキングとしてとりまとめ公表されるものです。食味ランキングは1971(昭和46)年産米から毎年発表されており、「特A」ランクは平成元年から設定されました。

 

この試験では、白飯の「外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価」の6項目について、複数産地のコシヒカリのブレンド米を基準米として、専門の食味評価員が比較評価。基準米よりも特に良好なものを「特A」、良好なものを「A」、基準米とおおむね同等のものを「A’」、やや劣るものを「B」、劣るものを「B’」として5段階評価が行われ、ランキングとして発表します。

 

米の品質基準として、米の食味ランキング以外に米の割れ・欠け・粒の大きさがそろっているかなどを評価する「等級評価」もあります。米の見た目を重視する客観的評価が等級評価であるならば、白米を実際に食べ、おいしさを審査する主観的評価が米の食味ランキング。そういう意味で米の食味ランキングは、各地で誕生し栽培されているおいしい米の最新情報を知れる機会でもあります。

 

日本一の米も盤石ではない!?魚沼産コシヒカリの返り咲きを振り返る

天候不順が多い現在、名高いブランド米であっても特Aを保持することは容易ではありません。おいしい米の代名詞ともいわれた新潟県魚沼産コシヒカリは、特Aが創設された1989(平成元)年産から28年連続で特Aを記録するなど、唯一その座を守り続けていましたが、2017(平成29)年産米が初めてAにランクダウン。このニュースは米業界全体に衝撃を与えました。

 

魚沼市は直ちに「魚沼食味対策検討会議」を発足させ、原因を究明。食味に関する土づくりに投資を惜しまず、品質を保てる期間での刈り取りを徹底するなど、様々な対策を打った結果、翌年は見事特Aに返り咲きました。以降は今回の2022(令和4)年産まで特A評価を獲得し続け、最多獲得33回を誇ります。これは、地域が一丸となった努力の賜物でしょう。

それに対し、北海道産「ななつぼし」「ゆめぴりか」「ふっくりんこ」や青森県産「青天の霹靂」、岩手県産「銀河のしずく」、山形県産「つや姫」が特Aの連続記録を伸ばすなど、新興勢力が常連となり、まさにブランド米戦国時代といった展開に。今後はさらに特A獲得競争が激化することになりそうです。

 

消費者による米選びの現状と今後の米づくりの取り組み

米の食味ランキングで特Aを獲得することは生産者にとっても励みになるだけでなく、世間から注目を集めることで幅広い需要を獲得し、売り上げやイメージアップの面でも大きな効果があります。その一方で多様化する消費者ニーズや消費者のライフスタイルの変化もあり、環境に配慮して生産された米やこだわりの栽培方法の米などへの支持も高まっています。その点から考えると、今後は「食味の良さを追求した品種や高温耐性品種の栽培」や「食味+αの魅力を備えた米づくり」に着眼点を置くことが重要だともいえます。

 

また、先述の魚沼産コシヒカリの例を踏まえると、土壌改善・積極的な土づくりを行うことが米の品質向上と食味向上に大きく起因しているといえるでしょう。そんな米づくりの現場において、注目したいのがスマート農業。トプコンは農家の技術面での負担を軽減する「GNSSガイダンスシステム」「自動操舵システム」によって、農作業を省力化。加えてデータの一元管理によって、農業におけるワークフローそのものを変革するDXソリューションを提供しています。これからの米づくりを取り巻く問題を解決するために、トプコンのDXソリューションがスマート農業を実現します。

 

トプコンの「食」のDXソリューション