2023-09-28

米消費低迷の中でも売れるブランド米
時代のニーズとマッチするブランド米の現状

目次

消費者の米離れが話題になる一方で、近年はブランド米が人気を集めています。さらに日本各地では毎年、新たなブランド米が続々と開発され、それに伴い販売競争も激化するなど、米市場は群雄割拠ともいえる状況にもなっています。ブランド米が続々と誕生している背景とは? 消費者をはじめ生産者にも選ばれている理由とは? 今後も市場拡大が期待されるブランド米を取り巻く現状をご紹介します。

米の消費が落ち込む中、注目を集める「ブランド米」

おいしい米のランキングとして定着し、恒例になった日本穀物検定協会が発表する「米の食味ランキング」。令和4年度産の最高位の特Aには、定番ブランドとなった「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」などと並び、北海道産の「ゆめぴりか」や山形県産「つや姫」「雪若丸」、香川県産「おいでまい」など、注目のブランド米が続々とランクインしています。

 

農林水産省によると、令和4年度の米の相対取引価格は、全銘柄平均価格が1万3,877円(玄米60kg)。それに対し、前述の北海道産「ゆめぴりか」は1万5,310円、山形県産「つや姫」は1万8,389円、「雪若丸」は1万4,097円、香川県産「おいでまい」は1万4,213円と、ニューフェイスのブランド米の取引価格は平均よりも高値で取引されるなど、ブランド米人気は年々加速しています。

 

その一方で、日本人の食生活の変化から米の需要は年間10万トンずつ減少しているとも。コロナ禍による外食・中食用の需要低迷の影響もまだ尾を引いていることから、生産者にとってはまだまだ厳しい状況が続きそうです。

時代の変化と共に開発が進んだブランド米

国内での作付面積のトップ品種といえば、ご存知の通り「コシヒカリ」。福井県で1956年に誕生して以降、その食味の良さから瞬く間に全国各地で栽培されるようになり、人気品種としての地位を不動のものにしてきました。その後誕生した「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」「あきたこまち」などの人気品種もコシヒカリから派生したものです。以降、各産地では地域に根ざした特長を前面に打ち出し、米のブランド化に注力するようになり、政府も1969年に農産物検査法に基づく米の銘柄登録制度を創設しました。

 

かつては米不足の際は価格の安定化を図るため、すべての米の価格や流通を政府が管理していましたが、1995年に食糧法の施行で販売が自由化、さらに2004年に価格も自由化されることに。味や食感など付加価値の高い米であれば高い価格で取引できるようになったことから、各産地でブランド米により一層力を入れるようになった経緯があります。

 

さらに、政府が農家に対し、1970年から休耕田や転作田(米づくりを休んでいる田)に出していた補助金が廃止になったことから、収益が高くプレミアム感のある高価格帯のブランド米の開発競争が大きく促進されました。

温暖化もブランド米隆盛の後押しに

新しい品種に脚光が当たっている背景には、昨今の気候変動、特に温暖化が大きく影響しています。かつてはブランド米といえば一人勝ちだった「コシヒカリ」は暑さに弱いことから、猛暑が続く昨今は食味が劣化する傾向に。また、背が高く倒れやすいこともあり、「米の食味ランキング」でも、令和3年度産は13産地のコシヒカリが特Aを獲得したものの、翌年は8産地に減少しています。

 

そこで誕生したのが、高温耐性のある品種。前述の「つや姫」は高温に強く、コシヒカリより倒れにくく、収量が多い品種として山形県農業総合研究センターが開発しました。また、令和4年度産の「米の食味ランキング」で静岡県や岡山県など6産地が出品し、すべて特Aを獲得した「にこまる」も、猛暑に強く、食味や収量でも優れた品種として今後の伸びしろが期待されています。

 

さらに以前はコシヒカリ系のやわらかく粘りの強い品種が好まれる傾向でしたが、昨今は硬めでも大粒で粒感があるものへと嗜好がシフトしているともいわれ、新品種は比較的粒感のあるニーズに応えて開発されたことも人気につながっていると思われます。

生産者に求められる、これからの米づくり

農林水産省によると、主食などに使ううるち米の令和5年の産地品種銘柄数は、928銘柄。前年と比べて7銘柄も増えるなど、15年連続の増加傾向になっています。全国的に食味の良い品種が続々と誕生し、ブランド米市場はまさに百花繚乱の様相を呈しています。

 

消費者にもブランド米は着々と浸透しています。景気低迷・コロナ禍で自炊が増えたことや、高性能炊飯器の普及から米の“おいしさ”にこだわり、さまざまな産地や銘柄を試したいと思う消費者は増えているといわれています。

生産者がこのような状況の中で今後の米づくりを考えるには、従来の品種にこだわらず、新品種への取り組みも考慮していく必要があるのではないでしょうか。海外で日本産米の需要が増えてきたこともあり、価格競争ができる高い品質の米で差別化対策を図るべきだとも考えられます。

 

そのためには、作業の効率化や高精度化にも目を向けておきたいものです。スマート農業を導入することで、作業が効率化・簡略化できるだけでなく、二次的な効果として作業の担い手を育てることにもつながります。トプコンではスマート農業に取り組むことで、農作業における省力・軽労化を可能にし、農業経験が浅い人であっても熟練者並みの効率の良い作業を実現しています。

 

米の品種が時代とともに変化するとともに、これからの米づくりも変わっていくはず。そこに、スマート農業技術を活用することで、今後の米づくりを取り巻く問題を解決していきます。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。

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