2024-01-16

今、アスパラガス農家が熱い? 高収益化はスマート農業が鍵

目次

小さな耕作地でも栽培ができ、しかも高収益なアスパラガス。一度定植すれば10年以上は出荷できることから近年は栽培農家が増加中です。また、スマート農業を活用する事例も多く、省力化・効率化を推進した今の時代の農業を実現している作物としても注目されています。そこで、アスパラガス栽培が人気の理由や栽培を始めるメリットやデメリット、そしてスマート農業の活用事例などを交えながら、注目の野菜栽培についてご紹介します。

アスパラガス農家が増えている理由とは?

 サラダや炒め物、揚げ物など、さまざまな料理で楽しめるアスパラガス。シャキシャキとした食感とクセのない風味から人気のアスパラガスですが、生鮮に至っては国内全体の出荷量が2万3200トンであるのに対し輸入量は約1万トン(農畜産業振興機構「アスパラガスの需給動向」)と、海外産の割合が高い野菜です。しかし、鮮度がよく、安全安心な国内産を求める消費者の声が年々高まることから、アスパラガスの栽培に乗り出す農家も増えてきました。

 

アスパラガスを栽培する最大の魅力は、なんといっても高収益が見込めること。アスパラガスの市場価格は1kg平均が1,000円程度(2023年度東京都中央卸売市場における卸値)と、キュウリやタマネギが1kg平均300円台であるのと比べると、かなりの高単価が見込める作物。小売価格も安定していることから、急激な供給過多が起こらなければ、価格低下の心配もありません。

 

また、10アール(31m*31m)ほどの小さな耕作地でも栽培ができ、軽量野菜のため女性や高齢者でも作りやすいというハードルの低さも新規生産者を増やす理由になっています。

アスパラガスは育てやすい? 栽培のメリットは?

 かつては缶詰加工用に軟白栽培するホワイトアスパラガスが主流でしたが、現在は地上に伸びた緑の若芽を収穫するグリーンアスパラガスが主体で、流通量の9割以上を占めます。野菜の中では珍しい“多年草”になり、他の野菜と比べても生命力が強いことから、1度成長すれば、10年ほどは同じ場所で収穫をし続けることが可能です。

 

また、野菜は毎作定植する品目がほとんどですが、アスパラガスは同じ株を長く使い続けることができ、しかも、4月〜10月頃まで長期間出荷ができるため、安定した収入が得られることも大きなメリット。各種農業団体では新規就農者にアスパラガス栽培を推奨するなど水田転作の作物としても推進されているのも、こういった理由から経営の見通しがつきやすいからだと思われます。

現在、国内ではアスパラガスの出荷量の1位は北海道。続いて佐賀県、熊本県になり、北海道は首位を守っているものの、年々2位と僅差になっています(農畜産業振興機構「アスパラガスの需給動向」)。その理由は、北海道は主に露地栽培で育てており、その年の気候変動で生産量が増減してしまうため。一方、佐賀や熊本はハウス栽培が多く、収穫期間が長いことに加えて、1株から春と夏の2回収することで生産量を増やしています。ハウス栽培は初期投資がかかりますが、小さな耕地で多くの収穫が期待できるのであれば、検討すべきところだといえるでしょう。

収益化は定植から2年以上も!防除も肝心

アスパラガスは新規導入作物としては魅力的ですが、当然ながらデメリットもあり、一番の難関は収益化するまで時間がかかることが挙げられます。ほとんどの野菜が定植したその時に収穫できますが、アスパラガスの場合は苗を植えてから丸2年間は根株の生育を待たなければならず、本格的に出荷ができるのが3年目以降から。そのため、リスク回避からアスパラガスだけでなく、他の作物も含めて複数品目を育てる農家が多いのです。

 

栽培の注意点としては乾燥に弱いため、こまめな水やりが必須です。しかしその一方で、湿気が多いと「灰色かび病」や「斑点病」などの病気になりやすい点も注意を払いたいところ。成長しすぎると、葉が密集して風通しが悪くなることで病気が広がりやすくなるため、剪定をそのつどきちんと行い、風通しにも気を付けるなど、丁寧な管理が求められます。もちろん、何年も同じ場所で同じ株を育てるために、十分な土づくりを行うことが重要になってきます。

 

しかしながら、病害・病虫対策や土づくりはどんな作物にもつきもの。その点、一度成長すれば、その後は維持に費用と手間などがそれほどかからず、安定して長期間収穫し続けられるアスパラガスはかなり優秀な作物ともいえます。

スマート農業と相性がいいアスパラガス栽培

 アスパラガスは比較的新しい野菜でもあることから、各地でスマート農業技術の活用が進んでいます。乾燥を嫌う作物のため、適切な灌水管理は必要不可欠。そこで、AIを活用して気温などのデータを収集し、水やりなどを自動化するシステムを取り入れたり、定点カメラにより収穫時期を判断したりと、今の時代に合った最新技術による農業が取り組まれています。

 

もちろん、前述の通り、アスパラガス栽培は根を養成する肥えた土を作るための圃場づくりが重要です。しかし、担い手の高齢化や労力不足もあり、それを回避するためにスマート農業の技術力がいかんなく発揮されています。

 

トプコンではスマート農業にいち早く取り組み、技術面での負担を軽減する製品「GNSSガイダンスシステム」や「自動操舵システム」などを開発。例えば、お持ちのトラクターに取り付けるだけで自動操舵が可能になり、農業未経験者など農作業が不慣れなオペレーターや、今まで不安があって運転ができなかった人でも、熟練者と同じ高精度の作業が可能になり、作業の効率化・省力化が図れます。

 

アスパラガスをはじめ、時流を見ながら新しい作物の栽培に挑戦することは農業経営を考える上では必須です。トプコンは新しい農業にチャレンジする生産者を、さまざまな技術でサポートしていきます。

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。

トプコンのスマート農業

 

〈参考文献〉

https://www.alic.go.jp/content/001164261.pdf

https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/jisedai_senryaku-49.pdf

https://www.naro.go.jp/smart-nogyo/r2/files/r2_shisetsu-H04.pdf

https://www.pref.nagano.lg.jp/enchiku/sangyo/nogyo/engei-suisan/yasai/documents/aspragusmanual.pdf

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/851924/