2022-11-01

「米」の字には米づくりの苦労が表されていた!

目次

私たちが、米を「ごはん」にするとき、「計る」「研ぐ」「水に浸す」「炊く」という手順で大半の人が進めていくのではないでしょうか。米の購入も含めたとして、手間の数は5つほどです。では、私たちが米を手にするまでの過程を想像してみてください。農家は、どれほどの手間をかけて作っているでしょうか。田植えと稲刈りは、誰もが知っている作業ですが、ふたつの作業だけでは米が出来上がりません。

答えは、八十八です。農家は、八十八もの手間をかけて米を作っているといわれています。八十八は、数字そのまま八十八の工程があることを意味するのではなく、日本人ならではの捉え方が関係しており、米づくりの苦労を言い表しているものです。

日本人が「八十八」に込めた願いとは

 

「米」の字は、横向きにした稲穂の先を表す象形文字に由来するといわれています。茎を横線にして、上下それぞれに稲の実3粒ずつ、合計6粒が付いている形です。そこから変化し、真ん中の一粒ずつがつながって縦線となり、「十」という字に。残り4粒の稲の実は米粒となり、「米」という漢字が成立したとされています。

 

また、いつのころからか、「米」の字には米づくりの苦労が表されていると語られるようになりました。「米」の字を分解すると、「八」「十」「八」。「八十八」の数字になります。この数が、米づくりの手間を表しているとのことです。厳密に言うと、八十八もの手間(=苦労)があるのではありません。日本では、「八」は漠然と数が大きいことを表す語として使われているので、「八十八」とは、「八」が重なって「たくさん」という意味になります。

 

「八」は末広がりの姿から縁起の良い数字とされ、「八」が重なっている場合は、よりいっそう縁起が良いと考えられてきました。そのため、「米」の字に「八十八」を見いだし、苦労が多いとしても、「八十八」もの手間をかけることで、豊作になると考えられてきたようです。

 

また、日本の農作業や暮らしに合わせた日本独自の暦「雑節」では、2月4日頃の立春から数えて八十八日目にあたる5月2日頃を「農の吉日」と定めています。5月初旬は昔の稲の種まきの頃にあたるため、八十八夜に種まきをすると、豊作になるといわれています。

童歌で伝承される八十八の手間

 

八十八の手間については、福島県の童歌でも知ることができます。お手玉の歌として伝承されているのです。

 

”米という字を ほどいてみたれば/八十八と 読めまする 読めまする/米を作るにゃ 春夏秋冬/八十八の 手間かかる 手間かかる/米をほろけば(=こぼせば) 神や仏の/八十八の 罰あたる 罰あたる”

福島県に限らず、日本の米農家は春夏秋冬、一年をかけて米を作っています。昔も今も変わりない米づくりの流れを季節ごとに示すと、春は、「田起こし」「畦塗り」「種まき」「苗作り」。夏は、「代掻き」「田植え」「追肥」「防除」。秋は、「稲刈り」「脱穀」「乾燥」「もみすり」。冬は、「土づくり」。これに、さらなる細かな作業が加わることは言うまでもありません。

機械化により労働時間は7分の1に

 

米づくりの流れは変わらないものの、機械化が進んだ現代では、作業効率が格段に上がり、労働時間は大幅に減りました。1950年代まで、大半の農家は人力と牛馬を使って作業していました。また、子どもも労働力だったことから、学校には「田植え休み」「稲刈り休み」が設けられた程です。1960年代に入ってようやく、耕うん機の普及が始まりました。次いで稲刈りのためのコンバイン、さらには田植え機と続き、70年代には機械化が急速に進展。化学農薬の開発といった他の農業技術も合わせて進歩し、農作業の省力化が進んできたのです。

 

その結果、稲作における「田んぼ一枚」とされる100アール(100m×100m)当たりの労働時間は、1949 年には216 時間も要していましたが、1970年には117.6時間、2010 年には25時間まで減りました。つまり、約 1/7 以下(11.6%)まで短縮されたのです。労働時間そのものが短縮されたとはいえ、現代でも、毎日、田んぼに目を向ける必要があります。苗の生育状態の確認や水の管理といった「愛情」とも呼べる作業も昔と変わらず「八十八の手間」に含まれ、米農家にとっては「毎日が米づくり」といえるのです。

 

現代の苦労は現代の知恵が解決

 

米づくりには、「気を揉む」という苦労もあります。現代では、高温、雨不足、日照不足、水災害を引き起こす気候変動への対応もそのひとつです。さらには、鹿による田植え直後の苗の引き抜き、鹿や猪による稲刈り前の食害といった被害も後を絶ちません。異常気象も鳥獣被害も減収につながり、精神的負担も非常に大きく、不安で眠りが浅い農家もいるほどなのです。

 

また、2050年までに化学農薬の使用量50%減を目指す、政府が策定した「みどりの食料システム戦略」の目標を達成するためには、効率化のために使われていた除草剤を減らす必要があります。昔は米作りの所要時間の半分近くが草取りでした。昔と全く同じとはならないものの、これからは草取りに多くの手間を要することになるかもしれません。

 

米づくりは、いつになっても苦労が絶えないといえます。しかしながら、時代ごとに人間の知恵による救世主的存在は現れるものです。今、注目されているのは、スマート農業です。トプコンも技術面での負担を軽減する製品「GNSSガイダンスシステム」「自動操舵システム」を開発し、スマート農業の実現に貢献しています。米づくりの「八十八」の苦労がゼロに近づくように、トプコンは技術によるサポートを続けていきます。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。
https://www.topconpositioning.asia/jp/ja/products/products/agriculture/

<製品紹介>

 

「自動操舵システム」は、どなたが作業してもハンドル操作不要で、整地、畝たて、播種、田植えといった多岐にわたる作業が高精度で行えます。お持ちのトラクターに装着するだけでラクラク自動化を実現します。

「GNSSガイダンスシステム」は、お持ちの機械に装着可能。モニターで走行ラインがわかり、走行ラインからのズレ量もcm単位で表示されるので、誰でも簡単にラインに合わせて作業することができます。オペレーター経験が浅い方や今まで不安があって運転作業できなかった人でも、熟練者と同じ精度での作業が可能です。