2023-12-06

サツマイモの産地が北上中。
温暖化で農業の産地はどう変わる?

目次

寒さに弱いため、東北・北海道など寒冷地での栽培は不向きとされていたサツマイモ。それが近年、生産地が九州・関東から東北・北海道へと北上し、栽培地を拡大させています。産地が変化している背景にあるのが、地球温暖化。サツマイモだけでなく、九州で盛んな亜熱帯果樹の導入を関東エリアでも検討されるなど、地球温暖化の影響から様々な野菜や果樹などの産地が広がっています。環境の変化に伴う新品種の登場や栽培適地の変化など、今後の農業へと取り組み方や新たなビジネスチャンスの動向をご紹介します。

 

北海道・東北で拡大するサツマイモ栽培

 

北海道を代表する魚といえば、秋に水揚げされるサンマ。それが近年は不漁続きであるのに対し、イワシやブリの漁獲量が格段に増えているというニュースが世間を賑わせています。その背景にあるのが、地球温暖化による海水温度の上昇。野菜に関しても、その影響は大きくなっています。

 

その中でも顕著なのが、サツマイモ。従来サツマイモは寒さに弱い作物のため、福島県あたりが栽培の北限とされてきました。しかし、近年は温暖化にともなう夏季気温の上昇から、これまで栽培には不向きとされていた東北や北海道といった寒冷地でも栽培を行う動きが出ています。

 

地球温暖化の影響から農業の適地が変わりつつある

 

温暖化の影響から栽培の適地が変わりつつあるのはサツマイモだけではありません。ここ近年、柿や温州みかんといった果樹の栽培適地も徐々に北上しているといわれています。温州みかんは平均気温15〜18度の温暖な気候の沿岸部で作られていますが、今の産地が1度でも上がれば適温から外れ、内陸部や少し標高の高い地域が適地になるという話も。そんな果樹に代わり、温暖化した際の代替作物として注目を浴びているのが、アボカドです。

 

今では食卓に欠かせない食材となったアボカドですが、横浜税関が発表した輸入動向によると、アボカドの輸入数量は1988年に3370トンだったのに対し、2020年は約24倍の約8万トンを記録するなど、その消費量は爆発的に伸びています。一方、国内での生産は和歌山県や愛媛県、鹿児島県といった温暖地で栽培されているものの、その収穫量は2018年産で和歌山県で7.3トン、愛媛県で2.4トンと、微々たるもの。

 

そこで、これまでは産地ではなかった岐阜県では、柿に代わる樹種を選定する中でアボカドに白羽の矢を立て、生産のための技術開発に乗り出しています。アボカドの需要増をはじめ、海外産はやや未熟な状態で輸入されることに対して、国内で完熟させた果実は食味で優位に立てるといったメリットもあり、そこに着目したものだと思われます。

そのほかにも、パッションフルーツやマンゴーなどの亜熱帯性果樹の生産はこれまで九州が中心でしたが、徳島や三重、千葉県なども栽培研究中もしくは将来栽培が可能な作物として栽培をスタートさせている地域も増えています。かつては九州などの特産品だった南国フルーツも温暖化とともに産地が北上し、将来的には本州が南国フルーツ生産のメッカになる日も遠くないかもしれません。

 

気候変動をビジネスチャンスに!

 

これまでは温暖化により農産物への悪影響が指摘されることが多かった中、この気候変動を逆手にとれば、大きなビジネスチャンスにつながる可能性があります。前述のサツマイモをみれば、令和5年度のサツマイモ生産量の都道府県別シェア(農林水産省『作物統計』)をみると、鹿児島30%、茨城28%、千葉13%、宮崎10%と、この4県だけで8割を独占。九州・関東といった従来の特産地はまだまだ維持されていますが、新しい産地として注目される北海道は道外産の端境期に収穫できることもあり、コメに代わる高収益作物としての期待感から生産農家が急増中という報告もあります。さらに、ここ数年で従来の品種に比べて多収で冷涼地でも栽培できる新品種「ゆきこまち」も開発されるなど、新しいさつまいもの特産地となるための追い風も吹いています。

また、サツマイモの海外輸出に着目すると、海外では近年、日本のさつまいものねっとりとした食感がヒットし、空前の焼き芋ブームが到来。財務省「貿易統計」によると、主な輸出先は香港やタイ、マレーシア、シンガポールなど東南アジアを中心に、輸出量も2013年が1029トンに対し、2019年は4347トンと約4倍増。コロナ禍で多少横ばいにはなったものの、2022年は5849トンを記録するなど、そういった背景からも新しい産地の躍進が期待されます。

 

スマート農業機器を導入し、新たな作物にも挑戦

 

「機を見るに敏」という言葉があるように、こうした大きな気候変動を前に農業を続けていくためには、温暖化による被害を回避・軽減するためにも、従来の作物や農業のやり方に固執することなく、高温条件に適した新しい品種や技術の開発を積極的に取り入れていくことが望ましいといえるでしょう。コメに至っても、昨今は北海道の産地が頭角を現し、高温耐性のある品種が高く評価されるなど、特産地や人気品種なども大きく変わり始めようとしています。ぜひ、温暖化を新しい作物に挑戦する機会ととらえ、農業の可能性を追求していくことが今後の持続する農業のあり方になるかもしれません。

 

新しい作物を取り入れる上で、ぜひ活用したいのがスマート農業です。トプコンでは「GNSSガイダンスシステム(経路誘導ナビシステム)」や「自動操舵システム」など技術面での負担を軽減する製品を開発し、いち早くスマート農業に取り組んできました。例えば、お持ちのトラクタに「GNSSガイダンスシステム」と「自動操舵システム」を取り付ければ、ロータリ作業の際、設定したロータリのかぶせ幅に合わせて自動誘導できたり、あぜ塗りや代掻きといった作業も不慣れなオペレーターでも熟練者のような高精度の作業が可能になったりと、作業の効率化が図れます。もちろん畝立てや播種にも力を発揮。生産者が新しい作物に挑戦する思いと労力を、トプコンはスマート農業という形で今後もサポートしていきます。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。

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