2022-11-01

田んぼの水が漏れずに溜まっているのはなぜ?

目次

日本の水田稲作が始まったのは、今から約3000年前の縄文時代後・晩期の可能性が高いと、現在では考えられています。少なくとも約2400年前の弥生時代には、九州地方で本格的に稲作が行われはじめ、その後400年かけて東北地方へも広がり、北海道を除く日本の大多数の地域へ水田稲作が浸透していったとされています

 

水田とは、水を溜めて稲を栽培する田んぼのことですが、なぜ田んぼの水が漏れずに溜っているのか、と考えたことはあるでしょうか?実は見えるところや見えないところに水が溜まる仕組みが作り上げられているためです。現在の水田稲作を支える構造に至るまでには、稲作が伝来したときから昭和時代にかけて先人の知恵と多大な工夫が注ぎ込まれてきました。

 

水田の魅力は永久的栽培

 

稲作は日本のみならずアジアを中心に、アメリカ、ブラジル等の多くの国々で行われています。河川等から水を引いて稲を育てる日本のような「水田」は、世界における稲作全体の約57%とされ、このような水田を厳密には「灌漑(かんがい)水田」と呼びます。河川や地下水、湖等から引いた水を利用するからです。他には、雨水や雪解け水等の「天水(てんすい)」に頼って栽培する「天水田(てんすいでん)」、畑で栽培する「陸田(りくでん)」等、多種多様な田んぼが世界には存在します。

 

日本では、稲作の伝来当初、畑や湿地で稲が作られていましたが、水田を取り入れたことで稲作発展への礎となりました。そこで判明したのが、陸田にはない水田の魅力です。同じ土壌で同じ科の作物を作り続けると生育不良が起きる連作障害を、多量の水が解消してくれること、同じ田んぼで永久的に栽培できることです。

 

狩猟よりも稲作の将来性の高さを実感した日本人は、米の収量を上げるために農地を増やしたい、農地のそばに水がなければ、引いて来てでも欲しいという要求が時代とともに高まり、灌漑技術が発展していったと考えられます。

 

灌漑は約3000年かけて完成!?

 

灌漑は、北九州にある日本最古といわれる縄文時代の水田遺構(佐賀県の菜畑遺跡)で発見されています。水位を調整する技術が活かされていたとのことで、大陸から稲作が伝来したと同時に、水田技術も伝わり灌漑が始まったのです。その後、弥生時代中期には、水を引く用水路や水を排出する排水路を備えた田んぼが出現していきました。

 

ただし、当時の人たちが最も恐れていた洪水は防げませんでした。そこで、古墳時代(3世紀半ば~7世紀半ば)には、灌漑用のため池が掘られ、川から離れた平野や盆地でも田んぼが作れるように水路の整備が広範囲に用意されていきます。

 

その後は、灌漑技術が時代を追うごとに進歩していき、安定的に水を供給できるようになっていきました。明治・大正時代には欧米の技術を取り入れ、飛躍的に発展し、昭和に入ってようやく日本の灌漑が完成したといわれています。

ちなみに、現在における日本中の農業水路を一本につなげると、長さは40万km地球を10する距離に相当します。農業用のダム、水を引くための堰等、水を確保するための施設は約6700力所、ため池は約21万力所もあります。すべて人間が作り上げました。

水はどうして溜まっている?

 

灌漑水田の歴史は、並々ならぬ先人の努力の歴史ともいえますが、田んぼへ水を供給する技術と同じぐらい注目したいのが、水が漏れずに溜まる対策です。ポイントとなるのは、粘土質の土を使っていることです。

 

田んぼの土は、二層から出来ています。上部の10~15cmは「作土層(さくどそう)」、次の数cmは「鋤床層(すきどこそう)」といいます。「作土層」は稲を育てるために耕された養分や有機物に富んだ土の層ですが、「鋤床層」は土を突き固めて水を通しにくくした粘土層です。 

 

「代掻き(しろかき)」という、田に水を入れた状態で土の塊を細かく砕いて丁寧にかき混ぜ、土を柔らかくして、表面を平らにする作業によって、二つの層は作られます。毎年、土に手を加えるのは作土層のみ。鋤床層には手を加えません。そのため、何度も稲作を続けると、粘土層である鋤床層が強固になり水を溜める機能が高まります。

 

田んぼを囲む小さな土手とも壁ともいえる「畦(あぜ)」にも粘土質の土が塗られています。畦から取って粘土状にした土を塗り固めていく「畦塗り」という作業は、水漏れを防ぐためには必須です。

 

つまり、田んぼの水が漏れずに溜っているのはなぜか?という問いに対する答えは、鋤床層と畦の土が、水を簡単に通さない粘土質であることです。

水田は私たちの生活もサポート

 

田んぼに水を溜めることには、多くのメリットがあります。なかでも前述の連作障害の心配が要らないことは大きなメリットです。水によって土の中が酸欠状態となり、特定の病害虫や雑菌が繁殖するのを抑えられます。雑草にとっても水があることで酸欠のような状態となり、生育が難しくなります。

 

肥料や薬物等に関しても水とともに流れ落ち、土の中に残留しないため連作障害を防げるのです。また、河川からの水に養分が含まれているため、多くの肥料を与える必要がありません。

 

さらに水は一度取り入れた熱をなかなか発散しないため、稲を寒さから守ってくれるというメリットもあります。

 

その他、水田には地下水の量を一定に保って地盤沈下を防ぐ、洪水や土砂崩れを防ぐ、水蒸気を発散させ気温の上昇を抑えるといった効果があり、私たちの生活そのものをサポートしてくれています。

 

淡水魚や水生昆虫、ホタルやトンボ、カエル、水田雑草といった生物多様性の存在にも多大な貢献をしています。水田を維持することは、日本そのものを維持することといっても過言ではないはずです。

 

水田を維持するための一助になるといえば、トプコンの製品「GNSSガイダンスシステム」「自動操舵システム」、そして「ホイールアングルセンサー」です。「代掻き」「畦塗り」といった水田に欠かせない作業を徹底的にサポートします。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。
https://www.topconpositioning.asia/jp/ja/products/products/agriculture/

<製品紹介>

経路誘導ナビシステム「GNSSガイダンスシステム」は、田植機に装着した場合、作業幅に応じて次の作業位置合わせを自動でするのでマーカーが不要。圃場の水を落とす必要がありません。モニターでの作業跡確認や、自動位置合わせにより、作業跡がわかりづらい代掻き作業では、重複作業を防止。畦塗の場合は一度つくった走行ラインの選択のみで、次年度以降も同じラインで作業可能です。

「自動操舵システム」は、ハンドル操作が不要。畦塗り、代掻き作業において、不慣れなオペレーターでも高精度な作業が行えるため、疲労の軽減につながります。

オプションの「ホイールアングルセンサー」を本機の前輪に搭載することにより、自動操舵の安定性がさらに向上します。畦塗り作業で使用可能です。