2024-01-24

イタめしブーム、エスニック料理ブームが後押し
劇的に拡大するハーブ市場

目次

美しい彩りと爽やかな風味で料理のアクセントになるハーブ。一昔前までは料理にハーブを使用する人は限られていましたが、1990年代のイタ飯ブーム、2000年代のエスニックブームなどが影響し、一般家庭にも定着し、年々需要が拡大しています。エスビー食品は1987年と早くからハーブ事業に取り組み、今では企業全体の売上額の約1割を占め、愛知県豊川市が日本有数のハーブの産地として頭角を現すなど、国内のハーブ市場は今後ますます広がるものと予想されます。かつては輸入に頼っていたものの、より新鮮なものを消費者が求めることから国内市場の伸長が見込まれるハーブ市場をご紹介します。

家庭の食卓に根付いたハーブ。コロナ禍で利用が急増

今ではすっかり日本の食卓に定着したハーブ。トマト味のパスタやピザなどに添えられるバジル、エスニック料理には欠かせないパクチー、肉料理の臭みをとり、香り付けになるローズマリーなど、どのハーブも個性ある豊かな風味が料理のアクセントになるだけでなく、鮮やかな色あいが料理に彩りを添えてくれます。

 

スーパーや食品専門店に行けば、青果コーナーではフレッシュハーブ、調味料コーナーには乾燥タイプのハーブと、様々なタイプが販売されています。また最近は、ハーブにスパイスや調味料をブレンドした“シーズニング”も人気に。ハーブとスパイスの味が決め手となり、短時間でも凝った料理ができると評判です。

ハーブの認知はイタめしブーム、エスニックブームが後押しに

ハーブはラテン語で「草」や「野草」を意味します。料理の臭み消しや香りづけに使えるような独特の香りを持つものが多く、なかには保存効果や防虫効果を持つものも。欧米では古くからハーブを料理に使っていましたが、国内でハーブが広く認知されるきっかけとなったのは、様々なファッションフードの影響からだといわれています。1990年代は「イタめし」がブームに。 “バジルを乗せたマルゲリータピッツァ”や“ローズマリーで香り付された肉料理”など、この時に初めてハーブを体験した人も多かったといいます。そして、2000年代にエスニックブームが到来し、パクチーが普及。その後は空前のパクチーブームへと発展し、エスニック料理だけでなく、料理の垣根を超えて広まっていったことは記憶に新しいでしょう。

 

様々なファッションフードのブームをきっかけに、海外旅行気分で本場の味を知ることができた消費者たちがハーブへの関心を高めたことがきっかけで、ハーブ需要は増加の一途をたどりました。特にコロナ禍は、家庭で調理する機会が増えたことからハーブやスパイスを使った料理に挑戦する人が増加し、その市場は堅調に推移しています。

 

実際にハーブ需要の高まりをスーパーやコンビニなどの一般小売に対するPOSデータ調べでみると、2009 年の千人あたりの販売個数は2.0個、販売金額は198.47円だったのに対し、2018年の販売個数は4.36個、販売金額は474.33円まで増加。約10年間で販売個数は約2倍、販売金額も約2倍以上に増えています。さらにコロナ禍では、これ以上にハーブの使用量が増えているという報告があることからも、2019年以降の一般小売の販売額はこれを上回るものと予想されます。
〈資料:株式会社KSP-SP「全国POSデータ」を基に、独立行政法人農畜産業振興機構が作成〉

国内に増えつつあるハーブ栽培地とハーブ農家。その理由とは?

かつて国内で流通するハーブといえば、海外からの輸入品や瓶詰めのドライハーブが中心でしたが、近年は生鮮品でもあるフレッシュハーブが注目されています。香りが重要なこともあり、国内生産のニーズが求められています。その中でも1987年からフレッシュハーブ事業に乗り出し、頭角を表しているのがエスビー食品。現在は全国約40カ所で契約栽培を行っており、取扱量は国内最大規模である30品目を超えるフレッシュハーブを出荷。国内最大の出荷団体として市場を牽引しています。

 

もちろん、国内各地にもハーブの栽培地や生産農家が広がっています。例えば、愛知県豊川市にある東三温室園芸農協組合では1997年から取り組んだハーブ栽培が成功し、現在は約6億5000万円の販売高を誇るなど全国有数のハーブ産地として成長。また、豆苗などスプラウト野菜で有名な村上農園(広島県)は、日本ではまだ珍しいマイクロハーブ(発芽2〜3週間の小さなハーブ類)の生産を2018年からスタート。約4年の短期間で6.5倍の売り上げを伸ばしています。

 

各地に産地が増えている理由を探れば、食の多様化を背景に需要が安定しているため、販路が確保しやすく、適正価格での販売が可能なこと。そして、国内産はまだまだ競合が少ないため、高付加価値作物であることが挙げられます。特に小規模農家であれば、他の野菜に比べて比較的力仕事がいらないため、女性や高齢者であっても扱いやすく、比較的高い単価で販売できる点も魅力になっているようです。

国内市場の伸長が見込まれるフレッシュハーブ市場の今後

国内におけるハーブの需要は好調に推移しているとはいえ、欧米と比較すると人口あたりの売り上げ規模はまだ少なく、昨今の追い風を考えれば、市場は今後も拡大することが期待できそうです。農業経営を考える上では、ハーブなどの新しい作物の導入も一案として取り入れたいところです。そして、ハーブ栽培はまだ発展途中の農作物でもあることから様々な試みが行われており、スマート農業を実践する生産者も多く、最新のIoT技術を活かした取り組みが実施されています。

 

トプコンではいち早くスマート農業に取り組んできました。長年培ってきた光学技術、GNSS技術、また、各種センサーやネットワーク技術を駆使し、農機の自動運転システムやレーザー式生育センサーによる作物の生育状況の見える化による農業の自動化/IT化を実現。これまで経験と勘に依存することも多かった「計画―播種―育成―収穫」の営農サイクルをデジタルデータで一元管理することで、作業の自動化・効率化を図り、生産性や品質向上に貢献しています。

農作業の高精度化を図ることで、新しい農作物を導入した際もスムーズに生産体制を確立できるようアシストするなど、トプコンはスマート農業という形で日本の生産者と持続可能な農業を今後もサポートしていきます。

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。

トプコンのスマート農業

〈参考資料〉
エスビー食品レポート「統合報告書2023」
中日新聞「愛知県豊川市のハーブ 20年で全国有数の産地に<食卓ものがたり>
村上農園プレスリリース「4年で売上6.5倍に成長!「マイクロハーブ」シリーズ新商品、セロリ&パセリのテイストを持つ『セロパセ』」
農林水産省「aff」2021年8月号
独立行政法人農畜産業振興機構「野菜統計要覧 2019」