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規格外野菜=廃棄するもの、はもう古い!?
今の時代に合った不揃いの野菜の活用法とは?

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従来、大きさや形、色など市場で決められた規格に沿わない野菜は「規格外野菜」として市場に出回ることなく、ほとんどが廃棄されていました。しかし、近年は農家自身が値段をつけて販売できる産直所や道の駅、ECサイトなどネットを活用した直接販売、または6次産業化を取り入れた加工品など、規格外野菜の販路や使用用途が広がっています。フードロス問題やSDGsが声高に叫ばれるなかで、規格外野菜を取り巻く状況と農家が今後目指すべき取り組みについてご紹介します。

そもそも規格外野菜とは?

「規格外野菜」とは、中身の品質は規格品と同じでも、市場流通の規格(サイズ・重量・色・形状など)に適合しないことで市場に出回らない野菜のこと。農林水産省によると、2024年の野菜の収穫量1206万8000トンに対し、出荷量は1055万トン。収穫量と出荷量の差は約151万8,000トンであり、収穫量全体の約13%に相当します。その差分には、形がいびつだったり、色が薄かったりといった理由で規格外品となった野菜が一部含まれていると考えられます。しかし、この数字はあくまで収穫量として計上されたもののうち、出荷できなかった野菜の量を意味しています。つまり、始めから収穫量にもカウントされていない野菜を含めると、生産された野菜の約30%が毎年廃棄されているとも言われています。

 

野菜の規格統一は、1970(昭和45)年に農林水産省が「野菜の全国標準規格」を制定し、産地の指導を行ってきました。しかし、国が規格を定めることで流通の合理化が進まないのではないかという観点から、2002(平成14)年に廃止されることに。それ以降は出荷団体などが自主的な取り組みとして規格を設けてきました。

 

規格外野菜は、異常気象や干ばつといった過酷な気候条件により、生育に影響が出た結果として生まれることがあります。高温や低温、日照不足などの影響により、色味が悪い、サイズが極端に大きい(または小さい)、形がいびつ、傷がつくといった状態になることがあります。こうした不均一な野菜は、消費者が「きれいな見た目」と感じる基準を満たしていないため、その規格基準をクリアできず規格外野菜となってしまうのです。農産物には、品質の安定や流通の効率化を図る目的で細かな規格が設けられています。規格を設けることにより、品質が一定に保たれ、市場での取引がスムーズになります。また、サイズが揃っていれば梱包作業の効率が向上するといった利点もあります。

規格外野菜に関心を持つ消費者が増えている

中身の品質に問題がないにも関わらず、規格外野菜がこれまで市場流通として出回らなかった理由とは何なのか? それを探ってみると、スーパーや青果店は「見た目が悪いものは売れ残るため採算が合わない。また、一定の規格がないと定価販売できない」、中間流通業者は「小売業からのニーズはA品が中心。低規格品はさばけない」、加工業者・外食産業は「機械調理が多く、不揃いなものは使いにくい。製品の見栄えも重要」、生産農家は「ニーズはA品が中心。C・D品は価格が安く、季節によっては赤字になることも」など、扱う立場ごとにそれぞれ理由があるようです。

 

消費者の購買動向に目を向けると、色や形が整った美しい野菜のほうが、いびつで傷があるものよりおいしそうに感じられるため、購入時に前者を選ぶ人も多いでしょう。また、レストランなどの飲食店では、顧客満足度を重視し、外観の美しい野菜をあらかじめ指定して仕入れるケースも多く見受けられます。日本では見た目の美しさを重視する消費者が多いため、それが規格外野菜を生む一因となっています。

 

しかし、近年は規格外野菜の廃棄はフードロスにつながると問題視され、また、SDGsの観点からも廃棄量を減らす取り組みが注目されています。実際に農林水産省が都内及び千葉県内のスーパーで行ったアンケート調査によると、「規格外野菜を買ったことがあるか」の問いに、「ある」と回答した人が79%、「買ったことはないが今後買ってみたい」と回答した人を含めると93%も占めるなど、多くの消費者は規格外野菜を購入することに抵抗がないことがわかっています。

 

また、「規格外野菜を規格品と比較し、どのくらいの価格なら購入するか」という問いには、「1〜2割安い」が34%、「3〜4割安い」が31%という結果も。つまり、規格外野菜を求める消費者のニーズは存外に高く、規格品との価格バランスをうまく保って販売すれば、新たな流通の掘り起こしも可能だと考えられます。

規格外野菜の新たな活路と使用用途とは?

実際に規格外野菜を取り巻く現状は変わりつつあります。近年はその形の悪さや不揃いさを逆手に取り、ユニークなネーミングで販売する生産者も増えるなど、「規格外野菜=野菜の個性」として新たな価値観を生み出す取り組みもみられます。(→令和の野菜づくりは企画力で勝負 インパクト大なネーミングでヒット野菜をつくる)以前と比べて生産者も農産物直売所や道の駅、ECサイトなどで直販できる場が増え、規格外品であっても生産者の値付けで販売するチャンスも広がってきました。6次産業化を取り入れ、規格外野菜を加工して販売する生産者も増加中です。

 

さらに、全国に店舗を展開する生鮮コンビニの会社では、野菜の一部は契約農家から畑ごと収穫したすべてを買い取り、形状や大きさによって生鮮向けと加工向けに使い分けるといった仕入方法に切り替えているところも。そうすることで、コンビニ側は仕入れ価格の安定を図ることができ、その一方で生産者にとっても収穫した野菜を無駄にすることなく出荷でき、収入が安定するなど、両者にとってもメリットのある取引が成立しています。

 

そして、食材宅配サービス「らでぃっしゅぼーや」は、2021年から規格外野菜をフードロス食材として活用して新しい価値を提供する「ふぞろいRadish」の販売をスタート。「見た目より中身がごちそう」と銘打ち、ふぞろいになる理由を説明することで消費者に手に取ってもらえるチャンスを増やしています。

生産者が目指したい今後の野菜づくり

国連環境計画(UNEP)が2024年に公表した報告書によると、2022年の食品廃棄量は10.5億トン。日本においても、約464万トン(2022年度推計)の食品が廃棄されているそうです。その一方で、世界には十分な食べ物を得られず、飢餓に苦しんでいる人々が数多く存在しています。こうした食糧問題や、廃棄時に発生する温室効果ガスによる環境負荷の観点から、世界各地でフードロス・食品ロスの問題が深刻視されています。日本国内の食品ロス量は経済損失に換算すると約4兆円に相当します。こうした背景を受けて、政府は2019年に「食品ロス削減推進法基本方針」を策定し、その中で規格外野菜の活用を積極的に促す方針を示しました。

 

また、IT技術の発展により、農作業の効率性は大幅に高まっている一方で、生産者の収益については長年課題とされてきました。従来は廃棄されてきた規格外野菜が販売可能にすることは、新たな収入源の創出となり、農家の収益改善につながる可能性があります。さらに、農作物を廃棄する際には処分費用が発生し、これは農業経営におけるコストの一部となっています。こうした規格外野菜を販売することで、廃棄コストを削減できるメリットもあるのです。加えて、規格外野菜は一般の流通を通さず、農家がオンラインショップや専用のアプリを活用して直接消費者に販売するケースも多いため、農家のブランド力向上や認知度の拡大、そしてリピーターの獲得にもつながります。

 

こうした取り組みの広がりとともに、フードロス問題、SDGSへの認識が広まるにつれ、消費者において規格外野菜の認識が変化し、「規格外野菜を食べることがエコにつながる」といった理由が購入動機にもつながり、見栄え重視の固定観念は以前よりも薄れてきたようには感じられます。

 

しかし、改めて生産者が意識すべきことは、規格外であっても規格品であっても同じ原価がかかっているということ。いくら規格外野菜の活路が増えてきたといっても、安価な販売が続けば、いずれは自らの首を絞めることになりかねません。規格外野菜の利用用途が広まっていることは喜ばしいことですが、それはある意味、保険として捉え、やはり目指すべきは、高品質で価格競争力のある野菜づくりなのではないでしょうか。

 

その上で高品質の野菜を栽培するには、ITをはじめとするスマート農業化を推し進めていくことは先決です。トプコンでは農作業の技術面での負担を軽減する「自動操舵システム」をはじめ、種まきから収穫までデータを一元管理するシステムなど、世界中の農業をスマート化によってサポートするDXソリューションを開発。農作業における省力・軽労化や、農業経験が浅い人であっても作業の質の向上を可能にしています。農業を取り巻く現状が日々変化する中、スマート農業技術を活用しながら、収益を上げる未来が待ち望まれています。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。

トプコンのスマート農業

 

<参考資料>

食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針(消費者庁)

食品ロス削減の現状(農林水産省)

令和5年産野菜生産出荷統計(農林水産省)

消費者の規格外野菜への意識、 多様なニーズへの対応方向(農林水産省)

【国際】UNEP、食品廃棄物報告書2024年発行。先進国より新興国で家庭食品廃棄物多い(Sustainable Japan)