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令和4年の緑茶の輸出額は過去最高額の219億円を記録するなど、この10年間で緑茶の輸出量は大幅に増加し、輸出先の国や地域も拡大しています。その背景にあるのが、世界的な日本食ブームやヘルシー志向。また、お菓子や飲み物のフレーバーとして抹茶の認知が拡大されていることなどがあります。主産地の鹿児島県では海外での需要増加を見据え、輸出向け栽培への転換を進めるなど、新たな販路開拓も進んでいます。そこで、今後海外で求められる緑茶の傾向や販路拡大に向けた取り組みなどをご紹介します。
輸出額は過去最高額の219億円!海外で緑茶が大ブーム
品質の高い日本産の農産物が世界から注目を集める中、近年輸出が好調なのが「緑茶」。この10年間で輸出量は大幅に増大し、輸出先の国や地域も拡大しています。農水省によると、緑茶の輸出額は2019年(令和元年)に146億円と一度落ち込んだものの、新型コロナウイルス感染症からの経済活動の回復・在庫の確保などを受け、2020年(令和2年)は162億円、2021年(令和3年)は204億円と順調に推移し、2022年(令和4年)は219億円と過去最高額を記録しました。
緑茶の輸出入の推移を辿れば、2004年(平成16年)は輸出量872トンに対し、中国などからの輸入量が1万6,995トンと輸入量が大きく上回っていました。それに比べて18年後の令和4年は、輸出量が6,266トンと拡大したことに対し、輸入量は3,088トンと大きく逆転。現在の緑茶の主な輸出先国を挙げれば、1位が米国、2位が台湾、3位がEU・英国となっています。
以前は輸出先ごとに残留農薬基準などが違うことから非関税障壁が課題でしたが、有機栽培の産地拡大や農水省の働きかけにより、輸出向け栽培で使える農薬の種類が増えたことで海外需要への対応が可能になったことが輸出額増大へとつながったようです。
海外で緑茶がウケるその理由とは?
最大の輸出先である米国には、2022年(令和4年)の全輸出量の約5割を占める2,123トンを輸出していますが、注目したいのが輸出する緑茶の形状です。米国に次ぐ輸出先であるEU・英国、台湾はリーフ茶が多いことに対し、米国は抹茶を含む粉末状が全体の約7割を占めています。
なぜ緑茶のメイン輸出先である米国は粉末状が好まれているのか?といえば、日本食ブームを背景にした抹茶の人気が根強いことから。アメリカでは「MATCHA(抹茶)」はもはやスタンダードで、「MATCHA(抹茶)」という単語がそのまま使用されるほどです。スイーツのフレーバーをはじめ、コーヒーショップでも必ず見かけるほど市民権を得ており、ビジネスマンはコーヒー代わりに抹茶を選び、女性は美容と健康のために抹茶を飲んでいるという話もあるほどです。
アメリカの人たちが抹茶を支持する理由は? といえば、抹茶を含む緑茶は豊富な健康成分を含むスーパーフードであることから。緑茶には抗酸化作用がある「カテキン」やリラックス効果のある「テアニン」、美肌づくりに欠かせない様々な「ビタミン類」、整腸作用に役立つ「食物繊維」など、多くの健康成分を含むことで知られています。それに加えて、抹茶はエナジードリンクの原材料としても注目されています。抹茶はカフェインを多く含むことから覚醒作用があるものの、テアニンを含むため、同じようにカフェインを含むコーヒーや他のエナジードリンクと比べると急激な覚醒作用がなく、いわゆる「カフェイン切れ(頭がぼーっとしたり、頭が痛くなる状態)」がないことから、情報に敏感な人たちはコーヒーよりも抹茶へと移行しているとか。
緑茶の中でも特に注目されるのが、有機栽培茶
海外で緑茶を嗜好する層は食の安全・安心に対する意識が高く、緑茶=スーパーフードという位置付けもあり、ニーズが高いのが有機栽培茶です。有機栽培の緑茶は残留農薬基準をクリアする可能性も高いことから国内においても輸出に適していると評価され、有機JAS格付け実績は年々増加傾向を辿っています。
抹茶の原料となる「てん茶」の生産が全国1位を誇る鹿児島県は、海外での需要増加を見据えて輸出向け栽培への転換を進めており、2022年(令和4年)度の有機JAS認証取得の栽培面積は691ヘクタールと、5年前に比べて4割増に。有機栽培茶を含めた緑茶の輸出額も5年前と比べて約5倍の13億3,600万円に上っています。その他、静岡県、宮崎県なども有機茶などの輸出向け栽培への転換を重要視して、有機茶栽培面積を拡大するなど対応に取り組んでいます。
海外進出に期待大!今後の緑茶の動きは?
輸出が好調な緑茶ですが、国内での緑茶の消費量といえば、平成16年は11万6,823トンをピークに減少傾向で推移し、令和4年は7万4,025トンと、ピーク時より約3割近く落ち込んでいる状態です。海外のようにコロナ禍を機に緑茶の需要が高まったという動きもなく、人口減少や若い世代のリーフ茶離れなど、茶葉を取り巻く環境は厳しさを増しています。
国内での厳しい状況に反し、農林水産省では、日本の農産物輸出額を2025年に2兆円、2030年には5兆円を突破するため、2020年に「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」をまとめました。その中で輸出拡大に余地がある重点品目として29品目を選定。緑茶はその1つに選ばれており、2025年の輸出額目標として312億円を掲げるなど、海外の緑茶需要への期待感はますます高まるばかりです。
そして、緑茶の生産にもスマート農業が大きく貢献しています。主産地である鹿児島県や静岡県ではloT技術・ロボット化技術といったスマート技術の導入により、作業時間の削減や省力化を実現することで、将来の規模拡大や品質向上に役立てています。
トプコンはいち早くスマート農業に取り組んできました。長年培ってきた光学技術、GNSS技術、また、各種センサーやネットワーク技術を駆使し、農機の自動運転システムやレーザー式生育センサーによる作物の生育状況の見える化による農業の自動化/IT化を実現。これまで勘と経験に依存していた営農サイクルをデジタルデータで一元管理することで、作業の自動化・効率化を図り、生産性や品質向上に貢献しています。
海外市場への進出・拡大は緑茶だけではありません。「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」の重点品目には、いちご、かんしょ、米などが選ばれるなど、その他の農作物も市場拡大のチャンスを秘めています。来たる将来に向けてスマート農業を取り入れることで農業の効率化・省力化を実現できるよう、トプコンは日本の生産者を今後もサポートしていきます。
トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。
トプコンのスマート農業
〈参考資料〉