2023-02-14

令和の野菜づくりは企画力で勝負
インパクト大なネーミングでヒット野菜をつくる

目次

多くの情報が溢れている現代は、よい生産物を作っても存在を知ってもらうことだけでも難しい時代です。味がよく、栽培方法にもこだわっているのに認知度が広まらない、売り上げにつながらないという悩みを抱えている生産者も多いはず。そうなる理由の一つが、市場には同じような競合品が溢れているから。それを打破する策として、今注目されているのが「商品のネーミング」です。近年は野菜に個性を与え、競合品と差別化したユニークな名前の商品が増加中。消費者の潜在ニーズを汲み取ったネーミング術を通して、これからの農業の情報発信や多様性を探ります。

 

ヒット野菜の鍵は、ネーミング力にあり!?

現在、日本で流通している野菜の種類は約30品目、約130種類といわれています。スーパーに行けば、今まで目にしなかった新種の野菜が陳列棚にずらりと並んでいます。ジャガイモを例にしても、ひと昔前まではメークインと男爵が一般的でしたが、今では「キタアカリ」「インカのめざめ」「レッドムーン」など多種多彩な品種が登場。インターネットやSNS、動画サイトでは毎日多くの商品レビューが配信されるなど、現代の消費者は多種多様な情報を駆使して商品を選んで購入する機会が増えてきました。そんな状況の中で選ばれる商品になるためには、商品のネーミングが極めて重要だといわれています。

名前のアイデアひとつで反響があった好例が、近年SNSで話題になった『闇落ちトマト』。トマトは甘さを出すために水やりを少なくすると、果実の一部が黒く変色するトマト特有の生理現象“尻腐れ”が必ず起こります。そのトマトは甘さが凝縮され、風味は格別。しかしながら、見た目の悪さから捨てられることが多かったこのトマトを、新潟市の曽我農園がその見た目を逆手に取って、この商品名を付けてTwitterで発信したところ、「どんな味か食べてみたい!」という声が相次ぎ、知名度が一気に上昇。24万件ものいいねを獲得し、売り上げにも結びつきました。

 

思わず買いたくなるユニークなネーミングの野菜が増加中

その他にも、新潟県でハーブや大葉を栽培する株式会社妙高ガーデンが販売する大葉は、往年の大ヒット曲「ラブ・イズ・オーヴァー」をもじった『らぶいず大葉』というネーミングがSNSを中心に話題になった一品。また、ホクレンが販売する『よくねたいも』は、特別な貯蔵庫で寝かせることで糖分を限界まで引き出したジャガイモ。「いもは、寝かすと甘くなる。」というキャッチコピーとともに売り出したところ大ヒット商品になるなど、消費者の関心を高めたネーミングがきっかけとなり、販売力アップにつながっています。

 

その中でも、特に『闇落ちトマト』の注目すべきポイントは、本来なら廃棄処分になる野菜が、ネーミングの妙で消費者の興味をそそり、逆に付加価値を高めることになったこと。規格外の野菜であっても視点を変えてPRすれば、十分売れる商品へと転化できることを実証しました。

 

野菜を見た目や産地で選ぶ時代は終わった?

もう一つの好例が、静岡県浜松生まれの『うなぎいも』です。平成22年頃から浜松の生産者が、耕作放棄地を利用してサツマイモの一品種“紅はるか”の栽培をスタート。しかし、浜松産のサツマイモは有名産地ではないことで売り上げに苦戦する中、差別化するため着目したのが当地の名産品ウナギだったといいます。本来は廃棄物となるウナギの頭や骨などの残渣(ざんさ)を堆肥化して栽培に利用し、それがわかりやすいよう『うなぎいも』とネーミング。すると、その特徴的な名前から「うなぎいもって何?」「どんな食べ物?」と、注目が集まり、今では浜松を代表するブランド野菜へと成長しています。

『うなぎいも』は、堆肥は工夫されているものの、紅はるかという一般的な品種であって、決して見た目が個性的なわけではありません。しかし、一度聞いたら忘れられないネーミングと野菜の背景にある物語を商品名にうまく活かしたことから、新たな特産品を誕生させることになりました。このことから、有名産地でなくても見た目が悪くても、その魅力をネーミングでPRし、情報を発信すれば、消費者が買う意味をそこに見出し、人気商品になるチャンスを掴める時代になってきているといえるのではないでしょうか。

 

商品にまつわる“物語”と“モノづくりの姿勢”が消費動機に

昨今、生産費や農業資材などのコストは上昇する一方で、野菜の販売価格はなかなか上がらないなど、八方塞がりの状況にあえぐ生産者は少なくありません。そのためにはネーミング術をはじめ、野菜が持つ価値を様々な切り口でアピールするなど、野菜の価値を見つめ直す必要性が求められています。

 

現代はまさにSDGsの時代です。工業製品のような精密な規格品野菜に慣れていた消費者さえも、形やサイズにこだわらず、安全性や地球環境に優しいことを重視する人が増えつつあります。そして、商品にまつわる“物語”が消費動機になる時代でもあります。消費者は以前にも増して買う理由を見定めるようになり、どういう姿勢でモノづくりに取り組んでいるのかを知りたがっています。そんな背景を考えれば、いかに売れる野菜、付加価値のある野菜を作れるかは、栽培技術はもちろんのこと、生産者のアイデア力・企画力が問われる時代に来ているのかもしれません。

そんな付加価値の高い野菜づくりに大いに役立つのが、農作業の効率化や品質向上に貢献するトプコンのスマート農業です。既存の農機を簡単に自動化できる上、熟練の農家でなくても効率よく作業が行えるので、これまで大半な時間を占めていた農作業を大幅に軽減でき、空いた時間を商品の付加価値を考えるための作業へと有効活用することが期待できます。これからの農業は作って売るだけの経営スタイルから、アイデアの時代へ。その時代にふさわしい働き方をトプコンの製品がサポートします。

トプコンが取り組むスマート農業