2023-01-11

明治維新の影の功労者はサツマイモ!?
飢饉を救い、今では大注目のトレンド野菜へ

目次

17世紀に中国から伝来したサツマイモ。餓死者1万人以上を出した享保の大飢饉の発生後、徳川吉宗は飢餓対策からサツマイモの栽培を推奨したことで、その後の天明の大飢饉、天保の大飢饉の難を逃れたといわれています。また、幕末の薩長土肥はサツマイモが常食の藩だったことが明治維新推進の原動力にもなったとか。そして現在は品種改良されたサツマイモが登場し、焼き芋専門店が続々とオープンするなど、空前の焼き芋ブームが到来しており、改めてサツマイモのおいしさが再認識されています。歴史を影から支え、今もなお注目を集めるサツマイモの魅力に迫ります。

 

徳川吉宗が注目し、明治維新実現に一翼を担った「サツマイモ」

 

今では日本人にとって馴染み深い野菜であるサツマイモ。その歴史は古く、17世紀に明(中国)から琉球王国にもたらされたのを機に、やがて薩摩を経て九州地方へと伝わり、18世紀になると急速に全国に栽培が広がったといわれています。実はサツマイモの普及拡大は、歴史と大きく結びついています。

 

18世紀にサツマイモの普及が進んだ背景には、徳川幕府8代将軍・徳川吉宗の働きがありました。吉宗がサツマイモに注目するきっかけとなったのが、1732年(享保17年)に発生した「享保の大飢饉」。この年、西日本を中心に冷夏や干ばつなど悪天候により、米の生育不良が発生。加えて、米の害虫が大発生したことから農村地域は甚大な被害を受け、死者約1万2000人、飢餓人口200万人以上にも及ぶ大飢饉が起こりました。

 

しかし、サツマイモの栽培を広めていた瀬戸内海地域の大三島や薩摩藩内などではほとんど餓死者が出なかったことから、徳川吉宗は痩せた土地でも容易く栽培できるサツマイモを救荒作物として着目。かねてよりサツマイモの研究をしていた蘭学者・青木昆陽を登用し、関東地方でサツマイモ普及活動に乗り出し、栽培が定着したことから、後の天明の大飢饉、天保の大飢饉の難を回避することができたといわれています。

 

また、明治維新を実現させたのは、サツマイモのおかげという話も。なぜなら、明治維新を推進した薩摩藩、長州藩、土佐藩、肥前藩の4藩は早くからサツマイモの産地化が進められ、他の藩が飢饉の影響で人口が低迷した時もサツマイモを常食とすることから飢饉の被害も免れることができ、逆に人口が増えていたとか。実際に薩摩藩は江戸時代前期の人口が約30万人に対し、幕末には約62万人にまで増加したといわれています。

 

人口が増えれば国力を蓄えやすく、自ずと兵力の動員数も増やせたとも考えられ、薩長土肥が明治維新の立役者となった背景には、サツマイモの存在も大きかったともいわれています。

 

栄養価が高い?栽培方法が簡単?サツマイモの魅力とは

 

数々の食糧難の危機を救ってきたサツマイモの特徴は、なんといっても栄養価の高さ。三大栄養素の一つである糖質が豊富で、ビタミンCや食物繊維も含んだ栄養たっぷりなスーパーフードです。栽培に関しても高温や乾燥に強く、粗放栽培が可能なうえ、干ばつ・台風など自然災害にも強いなど、栽培が容易な点が特徴です。近年は窒素肥料の要求量が少なく、農薬投入量も多くないなど、環境への負荷が少ないことから、サスティナブルフードとしても注目度が高まっています。

 

全国の生産量は第2次世界大戦後の大増産期に作付けが急増したことで昭和30年に700万トンを記録するも、以降は激減傾向に。令和3年度農林水産省「作物統計」によると、収穫量は約67.2万トン程度と、ピーク時の10分の1になっています。また、県別で収穫量を比較すると、1位が鹿児島県で約19万トン。続いて2位が茨城県で約18.9万5000トン、3位は千葉県約8.7万トン、4位は徳島県約2.7万トン、5位は熊本県約1.8万トンとなります。

 

焼き芋ブームが到来。魅力ある品種が続々と登場

 

生産量も年々減少し、さらに一時期は炭水化物を多く含むことから「食べると太る」というイメージがつき、人気も下降傾向をたどっていたサツマイモ。しかし、近年はその汚名を返上し、人気が急浮上中です。その理由は、空前の焼き芋ブームが到来したことから。冬の風物詩でもあった焼き芋が、今ではスーパーやコンビニで一年中販売され、スイーツ感覚で楽しむ焼き芋専門店も全国に続々とオープン。2000年代に入り、サツマイモの消費量が右肩上がりになっており、事実、2020年9月〜2021年2月末までの期間、ローソンストア100で販売された焼き芋は、全店累計で210万本を超え、1日平均1万本以上というニュースもあります。

 

しかし、なぜ今の時代に焼き芋ブームが到来したのか。その背景には、機械の進化とサツマイモの品種改良が関係しているといわれています。以前までは石焼きが中心でしたが、遠赤外線を利用した「焼き芋オーブン」が開発されたことをきっかけに、どこでも気軽に焼くことが可能になり、スーパーやコンビニに波及。これが焼き芋の消費拡大につながりました。

 

 

そして、サツマイモも品種改良を重ねることで、種類が多様になったことも大きな要因。以前は関東では「紅あずま」、関西では「なると金時」といったホクホク食感のサツマイモが主流でしたが、2000年代になるとトレンドが大きく変化。鹿児島県種子島の「安納芋」を皮切りに、甘味が強く、ねっとりとした食感のものが支持されるようになりました。その後、2010年に「紅はるか」、2012年に「シルクスイート」という品種が登場。これらの焼き芋はその食感のよさからスイーツ感覚で売り出す店も増え、焼き芋を食してこなかった若い人にもヒットし、世代を超えて広がっていきました。

 

健康志向の高まりから、サツマイモが再評価

 

そして、人気の追い風になったもう一つの理由は、健康志向の高まりです。焼き芋は添加物のない安全で自然な健康食品。カロリーは白ごはんとさほど変わらないものの、腹持ちがよいことからダイエット食にも向いており、それが幅広い世代の嗜好にマッチしました。

 

さらに、サツマイモだけに含まれる整腸作用を高めてくれる成分「ヤラピン」や、抗酸化作用や糖の吸収遅延・脂肪の蓄積を抑える効果で知られる「クロロゲン酸」など、近年注目を集めている成分も豊富で、そのヘルシーさが改めて見直されています。

 

おいしくて安く、そして健康食品でもある焼き芋は、今後も長期間にわたってブームが続くといわれており、ますますサツマイモの需要拡大が見込まれます。この時流に乗り、サツマイモ栽培の新規参入や収量増大を目指すには今がチャンスだといえるでしょう。

トプコンは、作業のムリ・ムダ・ムラをなくして農作業の効率や品質アップを図るDXソリューションを提供しています。トラクターなどの操作に不慣れな人でも熟練者と同じ精度で作業が可能になり、パソコンで作業履歴も管理できるなど、スマート農業を簡単に実現でき、サツマイモの栽培にも活かすことができます。

 

栽培も手軽で、収益性も高いサツマイモ。ぜひ、新しい品種の栽培なども考慮して取り組んでみるのもおすすめです。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。

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