2023-01-06

小麦の高騰で俄然注目度アップの米粉
おいしく進化中の米粉の可能性とは!?

目次

緊迫した国際情勢などを背景に、原油価格の上昇や原材料高騰などを受け、食料品の値上げラッシュが加速中。その中でも特に値上がりが際立つのが小麦です。小麦はパンや麺類、菓子類など、多くの食品の原材料となる私たちの生活に密着した食品ながら、国内自給率はわずか15%。そのほとんどを輸入に頼る中、2022年9月には国が輸入して国内の製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格が過去2番目の高値になるなど、まさに“小麦ショック”ともいえる状況に直面しています。

 

そんな状況下、小麦に代わる救世主として熱視線を浴びているのが「米粉」。それはなぜなのでしょうか?

 

高騰する小麦に代わる救世主「米粉」人気が再燃中

 

2022年4月、大手製粉メーカー各社が小麦粉の値上げを発表するなど、日本は今、小麦ショックに直面しています。小麦の価格は2021年の米国・カナダ産小麦の不作の影響から上昇傾向にありましたが、それに加えて穀倉地であるロシア・ウクライナにおける問題が拍車をかけ、世界全体で両国からの供給懸念がさらなる価格上昇へとつながったといわれています。

日本の小麦需要量の約85%は海外からの輸入に依存しているにも関わらず、輸送費の高騰や円安も加わり、今後さらなる値上げ傾向が強まると予想されています。

 

その背景を受け、脚光を浴びているのが米粉です。近年はグルテンフリーでヘルシー食品としても支持され、活用の幅が広がっています。米は小麦と違い、国内自給率がほぼ100%。米粉が小麦などの輸入品と比べて価格や供給が安定していることはもちろん、今回小麦粉の代替品として盛り上がっている理由には、米粉を使うメリットも大きく関わっています。

約17年前にも米粉ブームが到来するも、普及に伸び悩む

 

米粉が小麦の代替品として注目されたのは実は今回だけではありません。主食用米が豊作だった2005年頃、余った米を活用しようと第1次米粉ブームが到来。2009年には製粉施設の建設などを促進する「米穀の新用途への利用を促進に関する法律」も施行され、米粉の供給量が急激に増加しました。しかし、一時的な盛り上がりはあったものの、普及に伸び悩み、徐々にペースダウンすることに。

 

では、なぜ米粉が浸透しなかったのでしょうか? その理由は明確で、製粉技術の低さから「おいしくない」というイメージが定着したこと。当時、米粉に用いられていたのが、粉砕時のでんぷん損傷が高いといわれる主食用米。でんぷんは傷の多さに比例して吸水量が高くなるため、パンに用いるとでんぷんの吸水量が多くなり、小麦粉のようなふんわりとした仕上がりにならず、利用しにくいというマイナス面が浮き彫りになりました。何よりも一番のネックとなったのが、小麦粉を使ったパンや麺などと比べて風味や食感にギャップがあったこと。そういった要因が重なり、需要が思うように広がらなかったとされています。

 

米粉ブームが去る中、その一方で進んだのが米粉用の米の品種開発。農研機構は米粉パンに適する品種として、粒径が小さく、損傷デンプンの割合が低い「ゆめふわり」「こなだもん」、米粉麺に適する品種でアミロース含有率の高い「北瑞穂」「越のかおり」など、日本の各地域での栽培に適した米粉用品種を次々に育成してきました。また、米の製粉技術も飛躍的に進歩したことから、近年は再評価され、食品会社や小売店などが米粉に回帰。新たな米粉商品の開発が推進されることとなり、米粉の需要量は2017年度までは2万トン程度でしたが、2021年度は前年比5000トン増となり、初めて4万トン以上に増大。国内市場が着実に拡大しているところ、今回の輸入小麦の高騰が追い風となり、さらなる急成長が期待されています。

グルテンフリーなヘルシー食材。米粉を用いるメリットとは?

 

第2次米粉ブームが到来し、俄然注目が集まる米粉。しかし、かつての小麦粉の代替品だった第1次ブームとは異なり、現在は「米粉だからこそ使いたい」という声も大きく、以前とは環境も大きく変わってきています。支持される理由は、米粉用の米が開発されたことで、しっとり・もちもちといった味の評価が格段にアップしたことから。さらに近年顕著な健康志向への高まりも米粉人気に拍車をかけています。

 

小麦に含まれるグルテンというタンパク質は、体の不調の原因になるともいわれ、小麦アレルギーの原因とされています。一方、米、そして米粉はこのグルテンを含まないグルテンフリーの食品。アレルギーを持つ人に加え、米粉は小麦粉よりも油の吸収率が低く、カロリーを抑えられるヘルシーな食品でもあることからダイエットを望む人にも注目されています。いまや小麦の代替品というネガティブ要素は薄れ、米粉ならではのメリットに着目する人が増えているのです。

パンやスイーツだけでなく、チーズにも! 米粉がおいしく進化中

 

現在、米粉の活用用途は大きく進化しています。以前は商品の一部として米粉パンを販売する店が多かったことに比べ、今はグルテンフリーな体にやさしい素材として米粉を全面に押し出した米粉パン専門店が席巻しています。米粉の洋菓子や米粉麺などもすっかり定着し、製パン会社や菓子メーカーといった大手食品会社や外食企業も米粉商品の開発を強化。もはや、米粉を使った商品は食品業界のトレンドになっています。最近では米粉を使ったチーズといった画期的な商品も登場するなど、その人気はうなぎ登りに。国内はもちろん、海外のノングルテン市場のニーズにもマッチすることから、輸出拡大の機運も高まっています。

 

米全体の消費量に関しては2020年度の1人当たりの年間消費量は約50キロと、ピークだった1962年度の半分以下にまで減少するなど、低迷しているだけに、この米粉ブームが一過性のブームで終わらず、長く定着することを期待せずにいられません。

 

今後もますます可能性が膨らむ米粉。その将来性に期待を寄せる生産現場では、栽培の効率化やスマート農業が急ピッチで進められています。トプコンはいち早くスマート農業のサポートに取り組み、「農業の工場化」を目指してさまざまな製品やソリューションを提供しています。

 

トプコンが取り組むスマート農業
https://www.topconpositioning.asia/jp/ja/products/products/agriculture/