2023-08-24

小規模農家もDIY型スマート農業で課題解決!

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スマート農業に関するニュースを数年前より頻繁に目にするようになっています。「スマート農業」は、2013年頃より注目されるようになりましたが、当初は、大規模農家向けに機器の開発がおこなわれ、導入されていました。ところが、ここ数年前より、小規模農家へも浸透しはじめているのです。そこで、小規模農家のスマート農業における現状はどうなっているかを探ってみました。キーワードは、DIYです。

低コストで実現するスマートなハウス栽培

スマート農業とは、「ロボット技術、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)等、先端技術を活用する農業」のことです。日本で、農業の担い手不足や高齢化が加速するなか、また、環境面や労働面においても持続可能な農業を目指すにあたり、デジタル化・自動化によって作業の効率化や負担軽減、収量の最大化につながる機器は、農業の規模にかかわらず、導入することが必須と今や考えられています。

 

当初は、国の施策や企業による機器の開発は、その大半が大規模農家向けでした。そのため、小規模農家が導入するにはコスト面がネック。その状況下において、装置の自作によって低コストでスマート農業化を図る小規模農家が現れたのです。いわば、DIY型のスマート農業。主に、ハウス栽培での環境監視(温度や湿度)と制御、水やり、扉開閉の遠隔自動化などに活用されているのが現状です。

例えば、ハウス栽培の室温や湿度を遠隔監視するシステムを導入すると、何度も確認のために出向く必要がなくなり、設定した間隔でスマートフォンに通知される数値を確認するだけ。さらには、取得データの平均値等の管理作業に必要な情報をグラフ化し、確認もできます。スマート農業を導入すれば、畑の様子を見る身体的負担はもちろん、データの入力や集計といった事務作業の負担も軽減されます。

 

「ラズベリーパイ」が小規模農家を救う!?

小規模農家がスマート農業を導入しやすくなった要因の一つが、IoT機器を開発できる環境が安価に準備できるようになったことです。例えば、オリジナルのIoT機器開発に人気なのが「ラズベリーパイ」。通称「ラズパイ」は、子どもたちへ基本的な教育を促進するためにイギリスで開発され、日本では2017年より販売がはじまったカードサイズの小さなコンピュータです。ラズベリーパイにセンサーやスイッチ、カメラなどさまざまな部品を組み合わせることで、オリジナルのIoT機器を開発できます。価格も低く抑えられ、ラズパイを含むシステムの頭脳部分の購入価格を合計すると、2万円から数万円程度でスマート農業に必要な機器が作れます。

 

それにともない、製作方法のマニュアルを公開するサイトが作られたり、YouTubeで丁寧に紹介する人が出てきました。DIYキットを販売する会社や、以前より自作していた農家が需要を見込んで製品化して販売する事例も出てきたりと、以前では考えられなかった現象が起こっています。

伸びしろが大きいからこその手厚い支援

スマート農業の発展を願う国や行政によるサポートが増えつつあることも、技術面や資金面に不安を抱く小規模農家が導入しやすくなっている要因です。中山間地域の小規模農家が多い日本では、スマート農業の伸びしろはまだまだあり、支援の手が伸びれば伸びるほど、発展していくと言えます。

 

金銭面に関しては、中小企業の生産性アップを支援する「ものづくり補助金」は農業にも活用可能ですし、農水省の「逆引き辞典」で補助事業を調べることもできます。今後、DIY型スマート農業のために必要になってくる支援としては、機械いじりや組み立てが苦手な人や、さらなる自動化・効率化のための「あったらいいな」を実現するための専門家の力でしょう。

 

例えば、ハウス栽培の小規模農家が多い大阪府では、2021年より「大阪府スマート農業機器自作支援事業」を実施しています。モノづくりに優れた事業者が多い利点を活かし、JAグループ大阪と連携することで民間事業者と農家とをマッチング。DIYによる低コストのスマート農業機器の開発や製作、導入への支援をおこなっています。材料費の助成、スマート農業機器を自作するために必要な経費、さらには、アドバイザーの派遣費用についても助成するなど手厚いサポートが特徴です。他にも、アドバイザーやいち早くDIYに取り組んだ農家との交流会等も実施。これまでの実績としては、ぶどう農家に対して点在する農業用ハウスの環境遠隔監視システムの自作、電源が確保できない土地にハウスを持つ農家には省力化を図れるソーラー発電自動開閉装置の自作を支援しています。

「スマート農業」が“普通”の未来へ!?

DIY型のスマート農業は、ハウス栽培での導入が主流ですが、大学や企業では、田畑や果樹園における除草や雑草抑制、生育情報の収集、収穫、運搬等の低コストで小型の機器開発が加速しています。想定されているのは、24時間の使用をはじめ、シェアやリース・レンタル等も。もちろん、材料が安価で揃えばDIYも可能となるかもしれません。

 

今後、多くの小規模農家も、それぞれの農地では何が課題かを考え、的確な方法を選んでスマート農業を導入することになると予測されますが、そうなれば、日本におけるスマート農業がますます盛り上がり、農業の課題解決につながることでしょう。そして、近い未来の農業は、ロボット技術、ICT、AI、IoT等、現在の「先端」と呼ばれる技術が「普通」の技術として日常使いされているかもしれません。

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