目次
近年、世界で注目を集めている 「ソバーキュリアス」というライフスタイル。あえてお酒を飲まない選択をするライフスタイルが広まっていることから、アルコールに代わってノンアルコール飲料が支持され、国内でも需要が拡大しています。そして、様々なタイプのノンアルコール飲料があるなかで、特に注目を集めているのが日本の緑茶。緑茶業界のさらなる追い風となりうる可能性を秘めたこのライフスタイルを検証します。
あえて飲まない選択をする「ソバーキュリアス」とは?
近年、世界で「ソバーキュリアス」というライフスタイルが広まっています。ソバーキュリアスとは、「sober(酔っていない)」と「curious(好奇心旺盛な)」の造語になり、直訳すると「シラフでいることへの好奇心」。つまり、お酒は飲めるけれど、あえてお酒を飲まない選択をすることを指します。
ソバーキュリアスに近い意味を持つ言葉に“断酒”や“禁酒”がありますが、お酒を飲みたいけれど我慢するのが禁酒や断酒だとすれば、ソバーキュリアスはお酒のない暮らし方をポジティブに捉えた考え方であることが大きな違いになります。
なぜ「ソバーキュリアス」なライフスタイルが支持されているのか?
ソバーキュリアスなライフスタイルはどのようなメリットがあるのでしょうか?ひとつは健康を維持できることです。お酒を控えることで生活習慣病など様々な病気のリスクを減らせるほか、睡眠の質が向上し、二日酔いによる体調不良がなくなるなど、健康上のメリットは大いにあると言われています。そして、もう一つはメンタル面が安定することです。お酒を控えることで意識がクリアなまま友人や会社の仲間と会話を楽しむことができ、自分らしく人と向き合えると感じる人もいます。飲み方の選択が、自分にとって心地よいコミュニケーションやメンタルヘルスの維持につながるケースも増えています。
そして、ソバーキュリアスが広まった背景には、昨今の健康志向の高まりが大きなきっかけだといわれています。世界保健機関(WHO)の報告書によると、飲酒が原因で年間260万人が死亡しており、全死亡者の4.7%を占めています。また、2億900万人がアルコール依存症に悩まされるなど、世界的にもアルコールの有害な摂取は長年問題視されてきました。さらに、コロナ禍の到来もひとつのきっかけとなったといわれています。コロナ禍により外食や飲み会が減少し、外でお酒を飲む機会が減りました。その結果、改めてお酒との付き合い方を考える人たちが増え、このソバーキュリアスというライフスタイルにたどりついたのかもしれません。
ノンアルコール飲料台頭の中で注目される緑茶
ソバーキュリアスの広まりもあり、注目されているのがノンアルコール飲料です。世界的にもアルコール消費は減少する一方で、国内ではノンアルコール飲料市場は伸長を続け、過去最大規模に達しています。サントリーの調査によると、2023年のノンアルコール飲料市場は4,133万ケースで10年前の1.4倍以上に増加しました。今後はさらに市場が拡大すると予想されています。
こうした流れの中、お酒の代替としてのノンアルコール飲料に注目が集まる一方で、日本ならではのノンアルコール飲料でもある緑茶にも関心が高まっています。各地の生産者や飲料メーカーは新しいお茶のスタイルを考案することで、新たなマーケットの開拓に乗り出しています。例えば、ボトリングティーやスパークリングティーの開発です。ボトリングティーは、クラフトビールのようなおしゃれな瓶に入れ、高級茶葉から抽出したお茶を提供することで付加価値をプラス。また、緑茶と炭酸水で作られるスパークリングティーも注目を集めています。どちらも食事シーンに寄り添い、緑茶をベースにしたノンアルコール飲料として脚光を浴びています。
また、カクテルを模したノンアルコール飲料「モクテル」にも緑茶は格好の素材。さっぱりとした緑茶の旨みを活かしたモクテルが登場し、ソバーキュリアスの人たちもおしゃれにノンアルコールドリンクが楽しめると好評です。
緑茶を含めた農業推進にはスマート農業を活用
農林水産省によると、荒茶(摘み取った茶葉を乾燥させたお茶)の生産量は2014年の約8万3600トンに対し、2023年は約7万5200トンまで減少。お茶を飲む習慣が薄れてきている今の時代だからこそ、緑茶の新たな用途が増えているというニュースはまさに朗報です。
緑茶は味の評価も高く、栄養素を多く含む優れた飲料です。その価値をソバーキュリアスというライフスタイルに合わせて新たな緑茶マーケットを開拓し、さらに世界にも発信することは、今後大きく売り上げを伸ばしていくチャンスだと考えられます。
緑茶をはじめ、これからの農業を推し進める中でスマート農業は欠かせないものになっています。トプコンはいち早くスマート農業に取り組んできました。長年培ってきた光学技術、GNSS技術、また、各種センサーやネットワーク技術を活用し、農機の自動運転システムやレーザー式の生育センサーで作物の生育状況を「見える化」。これにより、農業の自動化・IT化を実現しています。これまで勘と経験に依存していた営農サイクルをデジタルデータで一元管理することで、作業の自動化・効率化を図り、生産性や品質向上にも貢献しています。
〈参考資料〉
公益財団法人日本WHO協会「アルコールと薬物の使用による年間死亡者数は300万人超」
サントリー「ノンアルコール飲料に関する消費者飲用実態・意識調査 サントリー ノンアルコール飲料レポート2024」