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2024年上半期の販売金額伸び率ランキングにおいて、「トマトジュース」が食品カテゴリーの中で1位になったことをご存じでしょうか?その背景には、トマトジュースが手軽に豊富な栄養素を摂れる飲み物として注目されていることがあるようです。特に、健康を気遣う中高年層だけでなく、美容を意識する若年層の消費が増加していることが考えられます。これまでトマトジュースの原料の多くは輸入に頼っていましたが、近年の著しい価格高騰を受け、メーカー各社は国産トマトの調達を強化しています。そこで、トマトジュースの人気の理由や、現在の加工用トマトの生産状況、さらには国産トマトの栽培の可能性などについて考察します。
トマトジュースの人気増。その背景にある健康ブーム
ここ数年、トマトジュースの売れ行きが好調です。市場調査をするインテージ社のまとめによると、2024年上半期の販売金額伸び率ランキングで、トマトジュースは前年比130%増の伸び率を記録し、食品では第1位になるなど大きく数字を伸ばしています。さらに、トマトジュース販売大手のカゴメでも、トマトジュースは3年連続で過去最高の出荷量を更新。2024年度は前年から約20%増と、大幅に伸長したと報告されています。
その人気の背景には、消費者の健康志向の高まりがあると言われています。トマトには、善玉コレステロールを増やすリコピンや、血圧を下げる効果が認められるGABAなど、豊富な栄養が含まれています。トマトジュースは、中高年層には飲むだけで手軽に栄養補給できる点が支持される一方で、リコピンの抗酸化作用による美容効果を期待する若年層の新規飲用者も増え、幅広い層を獲得したことが売上の増加につながったと考えられます。
輸入品の価格高騰を受け、国産トマトへの注目が高まる
トマトジュースの人気が高まる一方で、課題となっているのが原料の調達です。農林水産省のデータによると、国産加工用トマトの出荷量は年々減少傾向にあります。2003年には作付面積が713ヘクタール、出荷量は4万8400トンでしたが、2023年の作付面積は479ヘクタール、出荷量2万5900トンと、20年間でそれぞれ33%、47%も減少しています。
国内生産の縮小により、多くのメーカーは原料の大半を海外産に頼ってきました。しかし、近年の世界的な気温上昇の影響により、トマトの不作が続き、輸入品の価格も高騰。そのため、国産トマトの供給拡大に期待が集まっています。
加工用トマトの生産拡大の可能性
ここで改めて「加工用トマト」を説明すると、加工用トマトとはトマトジュースやトマトケチャップなどの加工品の原料となるトマトで、普段食卓に並ぶ生食用トマトとは栽培方法や品種が異なります。加工用トマトは、リコピン含有量や色調などが国ごとに厳格に規定されており、また、完全契約栽培のため市場には流通しないそうです。
国内で加工用トマトを栽培することは、さまざまなメリットがあると考えられます。たとえば、価格の安定です。市場で取引される生食用トマトとは異なり、相場の変動に左右されることが少なく、また、出荷規格を満たせば全量を出荷できることも大きな魅力のひとつかもしれません。さらに、栽培・収穫の手間が少ないこともポイントです。生食用トマトは支柱やハウス施設が必要になることが多いですが、加工用トマトは地這いの露地栽培が可能なため、設備コストを抑えられやすいとされています。また、誘引や芽かきといった作業が不要で、収穫時にもヘタを取る必要がないなど、生食用の栽培と比べて労力を低減できる点もメリットといえるでしょう。
こうした背景を踏まえ、2024年の国内加工用トマトの生産量は前年比4.4%増の1097万3000トン、そのうち、トマト生産量全体の約63%を加工向けが占めています。過去の数字からも、加工向けトマトの需要が着実に伸びていることがわかります。
スマート農業がトマト生産もサポート。農業の発展を支える
輸入トマトの価格は当面高止まりが続くとされており、国産加工用トマトの需要拡大が期待されています。その流れを受け、全国各地でJA (農業協同組合)や集落営農が地域一体となって栽培に取り組む動きが広がっており、契約栽培農家を募集する企業も増えています。
現在、新たに加工用トマトの契約栽培に参入した生産者は、個人農家から大規模生産法人まで多様化しており、農業の持続的な成長と高収益化が実現できるビジネスチャンスとして注目を集めています。
今後、時代の変化に伴い、求められる作物も変わってくるため、生産者の柔軟な対応が求められます。その中で、農業の省力化・効率化を実現する手段として期待されているのがスマート農業です。トラクタなどの農機のロボット化や、作物の生産・栽培・収穫工程をITで一元管理するなど、スマート農業を導入することで作業負担を軽減し、生産性を向上が期待されます。
このように、変化する時代のニーズに応える手段としてスマート農業が注目される中、トプコンでは、2006年よりスマート農業の取り組みを進めてきました。これからも、農業が直面する課題解決に向けたソリューションを提供し、持続可能な農業の実現に貢献していきます。
(参考資料)