公開日:

最終更新日:

究極の精度が求められるF1サーキットの施工技術

目次

大阪万博の跡地にF1サーキットを誘致する構想が今再燃しています。コースによっては時速300kmを超えるスピードで、バトルが繰り広げられることもあるF1レース。その舞台となるサーキットは、ミリ単位の精度で設計・施工される特別な道路です。わずかな路面の凹凸がレース結果を左右するため、最高水準の測量・舗装技術が求められます。

 

サーキットコースの改修などを通じて、トプコンはモータースポーツの世界とも深い関わりがあります。そこで、F1サーキットの施工技術と、トプコンの技術がどのように貢献できるのかを紹介します。

F1サーキットの建設とは? 超高精度な舗装技術が求められる理由

F1(フォーミュラ・ワン)は、1950年に世界選手権として公式にスタートしましたが、それ以前からヨーロッパ各地でグランプリが開催されており、マシン性能とドライバー技術を競うモータースポーツとして発展してきました。特に戦後の技術革新とともに、エンジンや空力設計の進化が加速し、直線スピードやコーナリング性能は飛躍的に向上しました。そんなF1も現在では世界20か国以上で、年間を通じてレースが行われています。

 

F1マシンは、直線で時速300kmを超える速度に達することもあり、わずかな路面のうねりや段差でも、ドライバーは瞬時にその影響を受け、コントロールを失うリスクが高まります。特にコーナリングなどではマシンに数Gもの荷重がかかるため、ドライバーが危険にさらされるおそれがあります。

 

一般道路でも舗装精度は数ミリ単位で管理されますが、F1サーキットではさらに厳しく、前述の通り路面のわずかな凹凸さえも許されません。平坦性や縦断勾配はタイヤグリップや車両挙動に直結するため、高度な設計と、それを厳密に施工する技術が必要です。

 

F1で使用するタイヤは、走行中に表面温度がおよそ80~100℃に達し、ゴムが柔らかくなることで路面にしっかりと接地します。この温度変化はグリップ特性やタイヤの摩耗に影響するため、舗装材の耐摩耗性や排水性も重視されます。さらに、マシンが高速で走行すると空気圧の変化やタイヤのたわみによって接地面積が変化するため、舗装面の微細な凹凸も走行に影響します。加えて雨天や霧といった気象条件でも安全性を確保するため、路面には緩やかな勾配を設けて排水性を確保します。しかし勾配を付けすぎるとコーナリング時のマシン挙動に影響するため、排水性と走行安全性のバランスを慎重に設計・施工する必要があります。

F1サーキットデザインの特徴とくり返される安全のための改良

F1サーキットのデザインは、単に速さを競うだけでなく、スリルと安全性を両立させることを目的に緻密に計算されています。ストレート、シケイン(連続した急方向転換の小さなコーナー)、ヘアピンなどを巧みに組み合わせることで、観客に見応えのあるレースを提供するとともに、ドライバーや車両への負荷も考慮した設計が行われています。たとえばS字コーナーの連続では、ブレーキを繰り返し使用することによるタイヤやブレーキへの負荷も設計上の重要な要素となります。

安全性向上は常に求められる課題で、クラッシュ時の衝撃を吸収するランオフエリアの広さや縁石の形状調整など、細かな改良は定期的に行われます。一方で、F1マシンも「より速く・より強く曲がれる」ように年々進化しており、ウィング形状やディフューザーなどの空力設計の改善によりコーナリング時の路面やタイヤへの荷重は増加しています。このため、以前と同じ速度であっても路面への負荷が大きくなるため、サーキット設計や安全設備もマシン性能の変化に合わせて見直されます。

 

こうした改良はレースごとに評価され、FIA(国際自動車連盟)の厳格な安全基準に基づきアップデートされています。このようにサーキットでの設計・施工と安全の両立は、高度な技術の積み重ねにより可能となるのです。

日本と世界のサーキット、それぞれどんな特徴?

日本を代表するサーキットとして、多くの人が名前を挙げる鈴鹿サーキット。1962年の開設で、8の字型レイアウトやS字コーナー、スプーンカーブなど中低速コーナーが連続するテクニカルな設計です。精密なステアリング操作とブレーキングが要求され、マシンとドライバーの協調性が試されます。対照的に、富士スピードウェイは長いストレートコースが特徴で、高速域での加速やブレーキングが勝敗を左右する重要な要素となります。両サーキットとも、起伏や雨量・湿度変化の大きい日本の気象条件に対応した舗装や排水設計が施されています。

 

海外では、イギリスのシルバーストーン・サーキットやイタリアのモンツァ・サーキットが高速コースの代表です。長いストレートと高速コーナーの組み合わせにより、空力性能やタイヤ耐久性、車体安定性が試されます。一方、モナコグランプリが開催されるモンテカルロ市街地コースは、狭くタイトなコーナーが連続するため、舗装精度や安全設備の配置が重要になります。このようにそれぞれのコースは土地や歴史、気象条件に応じて独自の設計を持っており、例外はあるものの、日本のサーキットは比較的テクニカルで起伏が多い一方、海外では高速向きのコースと市街地向きのコースに分かれる傾向があります。

 

F1サーキットの施工にも役立つトプコンの技術と、広がる可能性

既存のサーキットでは、設計どおりの精度を保ちながら効率的に再舗装することが求められます。ここで活躍するのが、トプコンの再舗装ソリューション「SmoothRide」です。

「SmoothRide」は、再舗装に必要なスキャン、設計、切削、舗装、締め固めの5つのステップをカバーしています。まず既存の路面をスキャンし、3D設計データを作成。その設計データに基づき、切削、舗装、締め固めの際に、施工機器を制御します。

その実績は、イギリスのシルバーストンやシンガポールのマリーナ・ベイといった、世界的な著名コースに及びます。

トプコンは、最高峰の路面精度で、トップレーサーたちの熱い戦いを支え続けています。

現在、大阪・夢洲の万博跡地でのF1サーキット誘致構想が注目されています(2025年10月現在)。報道によると、あの大屋根リングの曲線に沿うような形で、長い高速コースを設ける構想もあるそうです。もし実現すれば、最新技術を活用した未来の挑戦になるかもしれません。

 

<製品紹介>

トプコンの切削・オーバーレイシステム

Topcon Positioning Systems社の「SmoothRide」