2023-01-12

地形図に記されている△の中に黒点がある記号は何?

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地図上の山の中にある△マーク。真ん中に黒点があり、横に数字が記されている、そんな記号を見たことはあるでしょうか。正確には地図ではなく、等高線で土地の起伏が示されている「地形図」に書かれている記号。地図記号を学んだ小学生の時に、きっと見たことがあるはずです。今や地図はWEBサイトやスマホアプリで見られる時代ですが、地形図に切り替えられるものであれば、載っていることもあります。

 

等高線が入り組んだ山の中にあることが多く、三角形をしているので、「山の記号で、数字は山頂の標高」と安易に考えてしまいがち。しかし、実はこの記号は「三角点」とその標高を表しています。三角形の中に点があるから三角点。本当はとても覚えやすい記号なのですが、日常で馴染みがないので、知らなかったという人は多いかもしれません。では、三角点とはいったい何でしょうか。

 

三角点は測量をするうえで基準となる点

 

三角点とは、緯度、経度、標高が正確に測定された、さまざまな測量時の基準となる地点(基準点)のこと。地図作成、地籍調査、道路建設、ダム建設など各種公共事業等で使用されます。地球上に位置するあらゆる場所は、経度と緯度で示せます。同じ緯度同士や経度同士で結べば直線を引くことができるので、真っ直ぐな道をつくることが可能です。

 

しかし、どことどこが同じ緯度や経度なのかを知るのは至難の業。グラフを書くときに縦軸と横軸が交わる点がなければ、座標を定められないのと同じです。現在は、インターネットなどで検索すれば、簡単に調べることができますが、それも緯度と経度が明確な基準点があるからこそ。基準点からどれだけの角度で、どれだけの距離があるのかを割り出すことで、日本のすべての地点の測量を正しく行うことができるのです。

三角点なのにそこにあるのは四角い石柱!?

 

では、地形図に記された三角点の場所には何があるのでしょうか? 実際に行ってみると、そこには一辺12〜18cmの四角い石柱が埋まっています。柱の頭部に「+」と刻まれていて、その中心部分が三角点の場所を示しています。四角い外見からはとても「三角」を連想できませんが、実は三角点の名前は、見た目ではなく「三角測量」によって求められたことに由来しています。

 

三角測量とは、2点を結ぶ1辺の長さと角度から三角形をつくり、残り1点の位置と2辺の長さを求める測量法のこと。出発点は、世界測地系に基づき天文観測によって緯度・経度が求められた日本経緯度原点(東京都港区)です。ここから三角測量で約45km離れた場所、さらにまたそこから約45km離れた場所…と、次々に測定しては三角点を設置し、日本中を網羅します。このとき設置された三角点を一等三角点といい、現在全国に約1000点分布しています。

 

一等三角点の設置が完了すると、それを基準に今度は25km離れた場所に二等三角点を、さらに8km離れた場所に三等三角点、2km離れた場所に四等三角点を設置。そうして合計10万点以上にもなる三角点を、明治4年から約40年もの歳月をかけて設置したのです。

 

険しい山上に測量士が人力のみで石柱を埋設

 

三角測量は、基準となる1点から残り2点の場所が見えなければ測定できません。一等基準点は、それぞれ45kmもの距離が離れているため、ほとんどが見晴らしのいい山の上を選んで設置されました。それでも見えないときは、三角点の上に大きな櫓(やぐら)を立てたり、鏡やプリズムで光を反射させたりして、場所を特定していたそうです。

 

当たり前ですが、三角点を示す石柱はすべて人間が埋設しています。地面から顔を出している部分は高さ15〜21cmほどですが、決して動いてはいけない基準点であるため、地下にはその3倍もの長さが埋まっています。そのため、全体の高さは約80cm、総重量は約90kgにもなるそうです。険しい山の上に登るだけでも非常に大変。そのうえ、石柱をはじめ、測量機や櫓を立てるための木材などを担いでいかなければなりませんでした。

 

新田次郎原作で2009年に映画化された『剱岳 点の記』には、当時活躍した実在の測量士の姿が描かれています。まだ誰も登頂したことがない、登山口さえ分からない剱岳に三角点を設置しようと奮闘する姿は、驚愕に値するもので、日本アカデミー賞最優秀監督賞をはじめとする数々の賞を受賞しました。当時の測量士は、体力や精神力はもちろん、アナログな器械で測量するための高い技術も必要だったことが分かります。

三角点に出合うには?

 

登山愛好家にとっては、地図に載っている三角点は、大切な目印になることも多いようです。神格化されているケースもしばしばで、「登った限りは三角点を拝みたい」と、探し当てて記念撮影をする人も多数。一等三角点は山上にあることが多いです。しかし、山の上ばかりでは三角点を基準にして測量することが難しいため、二等以下の三角点の中には街なかのグランドなどに設置されているものもあります。

 

柱の側面を見れば「三角点」と刻まれているので、それらしきものを見かけたら確認してみましょう。苦労して埋設されたものなので、足で踏んだり汚したりせず大切に扱ってください。場所を調べたいときは、国土地理院のホームページ内「基準点成果等閲覧サービス」で検索できます。東京都測量設計業協会では基準点カードも公開されています。

GNSSを利用した電子基準点の登場

 

経度や緯度が分かっている三角点は、地震などの災害で土地が変動してしまった際、再測量することによって、その変動具合が分かります。そのため、復興のために少しでも早く測量士が駆けつけることが求められていました。しかし今では技術が進歩し、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)の衛星からの電波を連続的に受信する電子基準点が台頭。全国に20kmの間隔で約1,300点が設置され、位置情報データが常に更新されているため、災害による地殻変動の様子をすぐに把握することができます。

 

この電子基準点の一部には、トプコンのGNSS受信機が使われています。「マルチGNSS」対応で、米国のGPS(L1帯、L2帯およびL5帯)、ロシアのGLONASS、日本の準天頂衛星みちびき(QZSS)、EUのGalileoに加え、中華人民共和国のBeiDouの測位信号をも受信する能力を持っています。トプコンは最新のポジショニング技術で、人々の生活基盤をこれからも支えていきます。

トプコンのGNSS受信機・サービス