2022-11-01

舗装道路に水たまりができないのはなぜ?

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2021年、夏の甲子園。この年は、本州付近に前線が停滞した影響で、異例の長雨に見舞われました。高校野球は、史上最多となる6度もの順延を行うことに。そして、衝撃的だったのが23年ぶりの降雨コールドゲームです。プレーボール直後から降り続いた雨で、グラウンドは水浸し。多くの水たまりができ、球児の打球が転がらず、ピタリと止まる事態に。試合の続行は不可能と判断されました。阪神甲子園球場は、グラウンド整備を担う阪神園芸社の技術が秀逸で神整備”と話題になるほど。デコボコなど一切なく、水はけのよい土で整備されたグラウンドでも、雨が降り続くと打球を止めてしまうほどの水たまりができてしまうのです。しかし、舗装道路にそこまでの水たまりは見かけません。舗装されているからでしょうか? それとも、なにかトリックがあるのでしょうか? 道路の歴史を振り返りながらその答えを探ります。

 

日本は舗装道路の後進国だった!?

 

日本で最初に国家事業として道路が建設されたのは、天智・天武期(668〜686年)頃の律令制下。中央と地方諸国を結んだ7本の幹線道路「七道駅路」だといわれています。その後江戸時代に入り、徳川家康が拡充・整備に乗り出し、江戸と全国を結ぶ五街道へと発展します。2代目将軍秀忠は、街道に距離の目安となる一里塚(約4kmごとに土を高く盛った場所)を築き、樹木を植えて旅人の休息の場をつくりました。道路の幅は広く平坦で、排水のための溝もあり、当時訪れた外国人が「日本の道路は素晴らしい」と褒め称えたといいます。

 

しかし、この道はあくまで人が歩くためのもの。明治に入って馬車が走り始めると道は傷み、一転して悪路と化します。雨が降ると一層悪化したのでしょう。1920年の函館日日新聞には「馬が一匹埋まってしまった」「生徒が泥の為、足駄を吸い取られ体も埋まってしまう」など、信じられないような報道があります。しかし、鉄道の建設を優先した国家の財政は乏しく、道路の整備にようやく本腰を入れ始めたのは、第二次世界大戦後。自動車が爆発的に普及し始めてからです。

1956年、融資のために招いた世界銀行のワトキンス調査団に「日本の道路は信じがたいほど悪い。工業国にしてこれ程完全に道路網を無視してきた国は日本のほかにない」と酷評を受けたことは有名です。

 

実は平坦ではない日本の道路

 

ワトキンス調査団の発言に触発された日本は、本格的に高速道路の建設を始めます。しかし、一般道は1970年になっても約85%が舗装されていませんでした。当時、雨が降ると水たまりはでき放題。緩んだ地盤に車のタイヤがめり込み、事故につながるケースもありました。冒頭でも触れたとおり、道路の舗装化が進んだ今、水たまりを見つけることはありません。

 

やはり、舗装が水たまりの消滅に一翼を担っているといえそうです。その答えは、大正時代に公布され、1958年に改正された道路構造令の第24条第1項にありました。「車道、中央道(分離帯を除く。)及び車道に接続する路肩には、横断勾配を付するものとする」と記されています。

 

横断勾配とは、道路の中央から端に向かって付ける勾配のこと。つまり日本の道路は、中央部が盛り上がった、かまぼこのような形をしているのです。水を吸収しないアスファルトで道路の表面を覆うことで、雨が降っても勾配に沿って水が流れ、側溝がある両端へたどりつきます。そのため、水たまりができることはないというわけです。

排水性を高めるために進化する舗装技術

 

しかし、横断勾配には難点もあります。大量の雨が降った際、一気に水が側溝に流れてしまうので、排水が間に合わず、結局両端に水たまりができてしまうのです。もし水たまりの上を、スピードを出して走行すると、タイヤと路面との間に水膜ができ、ハンドルやブレーキのコントロールがきかなくなる危険性があります。また、雨水をすべて下水に流してしまうことにもなり、地下水の枯渇や下水量の増加、地中生態系へ悪影響を及ぼしかねません。

そこで開発されたのが、隙間の空いた多孔質のアスファルトを使用する透水性舗装と排水性舗装です。透水性舗装は地中深くまで水を浸透させる方法。排水性舗装はアスファルトの下に水を通さない層をつくり、その層に沿って雨水を側溝へ流す方法です。これらの舗装は、従来のアスファルト舗装よりも表面温度が低くなる利点もあり、生活環境にやさしい舗装だといえます。

高精度で少しの窪みも許さないトプコンのフィニッシャー

今では、舗装されていない道路を見つけることの方が難しく感じますが、それでも2020年時点での舗装率は約82.5%。そのうち半数以上は、耐用年数5年程度の表層が浅い簡易舗装です。西欧諸国の多くが舗装率100%であることを考えると、まだまだ日本の舗装は後れをとっているのが現状。

 

今後は、環境に配慮した舗装化も進んでいくでしょう。トプコンでは、切削機・フィニッシャーシステムを発売中。高精度で安定した位置計測データにより、設計値に沿ってフィニッシャーについている敷きならし機=スクリードを自動制御。精度の高い施工に貢献します。高度な舗装技術の縁の下の力持ちとして、雨天時の交通事故防止を陰ながらバックアップしています。

切削機・フィニッシャーシステム