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アフリカの国境に直線が多い理由とは?

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世界地図を見ていると、アフリカ大陸にある国境線がまるで定規を使って引かれたかのような直線が多いことに気付きます。例えば、エジプトの南と西の国境は直線です。三笠書房『世界の今がわかる「地理」の本』では、このような直線の国境がアフリカ大陸全体の国境の44%もあるとしています。なぜ、このような直線的な国境が存在するのでしょうか。その背景には、54カ国を超えるアフリカの国々のほとんどが、かつてヨーロッパ諸国の植民地であった歴史が深く関わっています。国境の形状がアフリカ諸国の歴史とどのように結びついているのでしょうか。その理由を探ります。

国境の引き方の基本:自然的国境と人為的国境

中学校の社会科教育で使用される『新しい社会 地理』(東京書籍)によると、国境線を定める方法には主に二つあります。一つ目は「山や川、湖などの自然地形に沿って設定される国境線」、もう一つは「緯線や経線などを基準に引かれる人工的な国境線」です。前者を自然的国境、後者を人為的国境といい、これらによって国境線の形状は大きく異なります。島国である日本においては、国境という概念はあまり身近ではないかもしれません。しかし、身近な都道府県や市町村の境界を考える際、「川を渡れば隣の町」「山を越えれば隣の県」といった自然の境界が多いことに気付くはずです。このような自然的な境界は、直線にはならず、川の流れや山の輪郭に沿った曲線や複雑な形状をしています。これに対して、人為的な国境線は、直線を描くことが多くなります。アフリカ大陸に、直線の国境が多いのは、この人為的な手法によって国境が定められた背景があることが見てとれます。

ヨーロッパ列強が大陸を分断し国境を決定

アフリカには、国家の領域を明確に定義する「ヨーロッパ式の国境」という概念が、元々存在しなかったとされています。王国は数多く存在していたものの、王たちが支配していたのは土地よりも民族や部族でした。彼らの文化や生活様式に応じて土地を利用していたため、固定された国境という概念は希薄だったのです。しかし、1884年にドイツのビスマルク首相が召集したベルリン会議が転機となり、アフリカ大陸がヨーロッパの列強によって急速に分割されることになります。この時、アフリカに住む人々の意見は尊重されず、列強間の合意で、主に緯度と経度を基準にして国境が決定したのです。これらの国境は、後にアフリカ諸国が植民地支配から独立を果たした後にも引き継がれましたが、元々あった民族や文化的な境界とは関係のないものでした。その結果、同一国内に複数の民族が共存する一方で、同じ民族が異なる国家に分断されるという問題が生じ、これが後に民族間紛争の一因になっているとの指摘があります。

アフリカとは異なる経緯で直線の国境を持つ国とは?

特徴的な直線の国境は、歴史的に比較的新しく成立した国々に多く見られます。アフリカや中東の新興国にその傾向が強いですが、世界で最も長い直線の国境を持つのは、先進国間のアメリカとカナダです。この2国間の国境の長さは8,891kmに及び、特に、カナダのオンタリオ州とマニトバ州、およびアメリカ合衆国のミネソタ州に跨がるウッズ湖あたりから西側に一直線に伸びる国境線は、地図上でも一目瞭然で確認できます。

 

イギリスが北アメリカ大陸にバージニア植民地を建設したのは1607年のことです。その後も、大西洋沿岸に13州が設立されましたが、アメリカ独立戦争を経て、1776年にイギリスからの独立が宣言され、アメリカ合衆国が誕生しました。以降、アメリカ人たちは西部へと土地の開拓を進めていきます。そして、1818年には、協定によって、ウッズ湖からロッキー山脈にいたる北緯49度が、アメリカとカナダ(当時はイギリス領)の国境に定められました。オレゴン地方は当初、アメリカとイギリス両国の共有とされましたが、1846年のオレゴン条約によって、ロッキー山脈の東側の国境も北緯49度と定められたのです。こうして、長い直線国境が形成されました。

ちなみにアメリカ合衆国は、各州境も多くが直線で描かれています。これは、西部開拓時代に、正方形に土地を区切って開拓させていく土地政策「タウンシップ制」が採用されたことに由来しています。直線的に開拓を進めていったアメリカ人にとって、直線的な国境は自然なものであったかもしれません。この点においてアフリカの国境とは異なる経緯があります。

国境の測量から現代の土地確定まで

人為的国境は地図上で定められますが、それを実際の土地上に再現するためには、現地での測量作業が不可欠です。地図上ではまっ直ぐに国境線を引けたとしても、実際に現地で国境線を示そうとすると、障害物があることもあります。島国である日本では国境が地上にないため、なかなかピンとこないかもしれませんが、例えばアメリカとカナダの国境では、建物の中を通る境界線も存在します。

現代において、新たに国境を定めるケースは珍しくなりましたが、土地の境界を決定する測量作業は依然として重要です。土地を売却する際などには、土地家屋調査士が土地の境界を明確にするために、道路や隣接する土地との境界を正確に測定します。また、日本では、地籍調査によって地図上の境界線や形状を現実の土地に合わせて更新しています。多くの地籍図は明治時代の地租改正時に作成されたものが基となっているため、現実の土地の形状とはしばしば一致しない場合があるためです。こうした地籍調査等で測量することを「境界確定測量」といいます。

地籍調査では、関係者が立ち会いのもと、地図上の境界を現地に再現し、結果は地籍簿(文書)と地籍図(地図)に記録され、土地登記に反映されます。この地籍調査は開始から約70年が経過していますが、登記されている土地の膨大な数から、現在までに完了しているのは約半分程度だといわれています。

先端技術で土地測量の精度を高めるトプコンの機器

現代の境界測量の現場に欠かせないのは、精密に測る測量機器です。トプコンは創業以来、「はかる」技術を強みにさまざまな測量機器を提供してきました。トータルステーションやGNSSで正確に土地を測るトプコンの測量機器は、幅広いラインアップで多様なニーズに対応。土地の境界や特定の地点の位置を精密に把握することに役立ちます。

トプコンの「測量」製品一覧

土地の境界を正確に把握することは、所有権の明確化や紛争の予防に不可欠です。
トプコンは、私たちの生活の安定と秩序に役立てることを願い、今後も技術開発に今後も取り組んでまいります。

 

 

(参考資料)

名城大学「アフリカ諸国の国境に直線が多いのはどうして?」

国土交通省「地籍調査とは」

日本土地家屋調査士会連合会「土地家屋調査士とは」

三笠書房『世界の今がわかる「地理」の本』

角川SSC新書『世界の奇妙な国境線』

昭文社『地図でスッと頭に入るアフリカ55の国と地域’23』