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いくつ知っていますか? 目の部首を持つ漢字

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漢字の多くは複数の部分に分解でき、どの漢字にも「にんべん」「しんにょう」「うかんむり」などの部首があります。部首にはそれぞれ独自の意味があり、同じ部首を持つ漢字を集めると意味の上で共通点が見られます。紀元後1世紀の末頃に活躍した学者、許慎(きょしん)は、この点に着目して、漢字を形と意味によって分類した『説文解字(せつもんかいじ)』という辞書を作りました。許慎は各グループを「部」と呼び、グループの最初に置かれた代表的な漢字を「部首」としました。これが部首の始まりです。

 

例えば「目」の部首には、「目」「目の一部」「目の動作・状態」「見る」などの意味があります。本記事では、目の部首を持つ漢字に焦点を当て、初級編(小学校低学年程度)、中級編(小学校高学年程度)、上級編(高校程度)に分けて紹介します。「目」について、漢字の成り立ちから触れてみましょう。

初級編

目(め、モク)

目の部首のグループで最初に登場する漢字は「目」です。「目」は、人の目をかたどって縦にした象形文字であり、古代の文字には瞳の印も付いていました。意味は、物を見る感覚器官である「目」をそのまま表すほか、「見る」「見つめる」などの目の動作や状態、さらに、「めつき」や「まなざし」、順序を示す接尾語としての「目」、重要なポイントや要点を意味する「かなめ」のほか、小分けや分類を示す意味も持っています。

直(すぐ、ただちに、なおす、チョク、ジキ、ジカ)

「直」は、基本的に「曲がりがない」ことを意味し、「直線」や「直進」などの熟語に用いられます。転じて、「正直」や「実直」のように「嘘や飾りがない」ことを指す場合にも用いられます。「間にはさまない」「本人自身が」という意味を持つことも多く、「直接」「直筆」「直伝」などに使われます。また、時間的な意味に用いられる場合には「直前」「直ちに」のように「すぐさま」という意味になります。

「直」に「目」の部首がついているのは、本来「正面から見る」ことを意味していたからだと考えられています。「曲がりがない」や「間に何もはさまない」という意味は、「正面から見る」ことから派生したと予想されます。

 

中級編

眼(め、まなこ、ガン、ゲン)

「眼」は、「目」に「艮(こん)」がついています。「艮」にも「目」という意味があり、同様の意味を2つ組み合わせることで“目”を強調し、特定のニュアンスを込めて“目”を指す際に用いられます。例えば、「眼球」や「肉眼」などは、視覚器官としての目そのものを強調し、「眼光」や「血眼になる」などでは、見るという働きを強調しています。音読みは「ガン」を用いるのが原則です。「ゲン」は奈良時代以前からの古い読み方で、現在では「仏像に眼を入れる」ことを表す「開眼法要(かいげんほうよう)」のように、仏教の言葉で使われるくらいです。

看(みる、カン)

「看」は、部首「目」の上に「手」を組み合わせた漢字で、“手をかざして見る”ことから、「看守」や「看板」などのように、「注意して見る」という意味を表します。特に「看護」や「看病」のように、「病人を見守る」という意味を表すために用いられることが多いようです。訓読みは「みる」ですが、「見る」「観る」「視る」「診る」などもあるため、現在では「看」を「みる」と訓読みして使うことはあまりありません。

上級編

盲(モウ)

「盲」は、「亡」に「無い」という意味があることから、「目が見えない」ことを表します。転じて、何かを「認識できない」という意味にもなります。例えば、「盲点」は「目に入らない、認識していない」ことを、「盲信」は「きちんと考えないで信じる」という意味で用いられます。

睡(スイ)

「睡」の「目」は「まぶた」を表し、「垂」には「たれる」という意味があります。つまり、「睡」は、まぶたがたれてうたた寝することを意味します。「垂」は一説には「ぐにゃぐにゃになること」を表すとされ、このことから「睡」は目が疲れて張りがなくなり、自然に目をつぶることを意味するともいわれています。「睡魔」を“眠魔”と言わないように、「睡」は、眠り込む状態を表す「眠」とは異なり、「ねむたくなる」「うたた寝する」という意味が強くなります。

「睡蓮」という花の名前も、夜に花を閉じ、朝になると開く様子から「睡」の字がつけられたそうです。

 

いかがでしたか。以前は分からない漢字を調べるときに、部首から漢和辞典を引いていましたが、今はスマホでなぞったり、写真を撮れば、簡単に調べられます。そのため、部首については小学校のときに習ったきりという人も多いかもしれません。しかし、部首から漢字の成り立ちや意味を考えると、一層言葉の世界が広がります。目を部首に持つ漢字は多く、100字以上もあり、常用漢字だけでも16字あります。それだけ、目が人間にとって重要な器官であるということでしょう。もし、家に眠っている漢和辞典があれば、改めて引いてみるのも面白いかもしれません。

 

(参考文献)

株式会社ジテンオン「漢字辞典オンライン」

小学館「新選 漢和辞典 新版」

研究社「漢字ときあかし辞典」

研究社「部首ときあかし辞典」

理論社「部首から知る漢字のなりたち」

中公新書「部首のはなし」