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食べられる花「エディブルフラワー」
インスタ映えで注目度が急上昇中

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食べられる花「エディブルフラワー」の存在がここ数年で身近な存在になってきました。バラやパンジー、ビオラなど、カラフルな色合いとかわいらしい姿は、スイーツや料理の彩りとして人気を集めています。また、その華やかな見た目だけでなく、品種による風味や香りが楽しめる点も人気の理由に。現在は市場の約90%を愛知県豊橋産が占めており、国内の市場規模は数億円とされていますが、今後はますますの需要が期待できる農作物としても注目を浴びています。そんなエディブルフラワーの魅力や将来性を探ります。

食べられる花「エディブルフラワー」とは?

料理やスイーツを華やかに彩り、飾るだけで料理の見た目がランクアップするエディブルフラワーを最近は目にする機会も多いのではないでしょうか。「食用花」とも呼ばれるエディブルフラワーは、その名の通り、食べることができる花。農林水産省のガイドラインに基づいて食用として安全に栽培された花のことを指し、具体的には毒性がなく、無農薬または低農薬で育てられた花をいいます。

 

エディブルフラワーは70種類ほどあるといわれ、ビオラやバラ、パンジー、ナデシコ、ナスタチウム(金蓮花)、マリーゴールドなどが代表的な品種です。その味わいは野菜によく似ていて、甘みや酸味、辛味などがあります。花の種類によって風味が異なるため、その風味をアクセントにするなど、見た目だけでなく食材としての魅力もあって使用用途が広がっています。

一大産地となる愛知県豊橋市は市場シェア率90%

現在、国内における主要産地は愛知県豊橋市。生産者の多くが加盟する豊橋温室園芸農業協同組合は、今から半世紀以上前になる1967年からエディブルフラワーの栽培をスタートさせました。最初は桜草から始め、早春のイメージをもたせる刺身のつま用として出荷するものの、それまで市場になかったものだったため、当初は全く相手にされなかったとか。その後は様々な品種開発などの努力を重ねた結果、転機となったのが、1988年頃の食用花ブームと1990年に大阪市で開かれた「国際花と緑の博覧会」。出展したレストランがエディブルフラワーを使い、メディアを通じて広く紹介されたことから、広く認知されるようになり、現在では市場の約90%を占める一大産地になっています。

 

エディブルフラワー市場の大半を占める愛知県の収穫量はといえば、令和2年の収穫量が54トンに対し、令和4年は63トンと、わずか2年間で118%も上昇するなど、一部の産地を見ただけでも需要が拡大していることがわかります。しかしながら、その市場規模は数億円ほどと推定され、食材としては黎明期のマーケットです。一方で、レストランやカフェ、洋菓子店などからのニーズは年々増えています。そう考えると、需要と供給がまだまだアンバランスなエディブルフラワーは、今後ますます市場の拡大が期待できるといえます。

エディブルフラワーは需要の拡大が期待できる農作物。その理由とは?

では、なぜエディブルフラワーの市場拡大が見込まれるのでしょうか。その一つが、SNSの台頭による“インスタ映え”の流行です。これまでは一部の高級レストランやウェディング会場など、非日常感を演出するような限られた場所での需要に留まっていたのが、近年はカフェやスイーツショップといった普段使いのお店などでも使われる頻度が増えてきました。若い人もカジュアルに通えるカフェメニューにもエディブルフラワーが登場することから、「エディブルフラワー=インスタ映え素材」としての幅広い層に認知されるようになったことは大きな後押しになっています。

また、以前は飾りとしてあくまで脇役だったエディブルフラワーですが、最近ではその風味や香りを楽しむエディブルフラワーを主役にしたメニューも多く見られるように。エディブルフラワーをテーマにしたメニューを展開する専門店もオープンするなど、新しい食材としての用途が広がっています。

コロナ禍前はウナギ登りに需要が膨れ上がっていましたが、コロナ禍で需要は一時減少。しかし、アフターコロナのマーケットは、SNS映えする料理やスイーツ、ドリンクをはじめ、健康意識の高まりとの相乗効果でヘルシーなイメージを表現するアイテムとしては最適なことから、V字回復は必至だと見られています。そういう意味でもエディブルフラワーのマーケットはこれから確立されていくジャンルであり、有望株であるといえるでしょう。

新しい農作物を導入するならスマート農業が即戦力に

近年はエディブルフラワーの注目度が高まることで、新規参入する生産者も増えています。園芸向けとは異なる栽培の手間はかかりますが、コンスタントに需要があり、高単価販売が期待できるのも魅力。また、小規模栽培が可能な点も参入のしやすさにつながっているようです。

 

エディブルフラワーをはじめ、新しい農産物を栽培する際にぜひ注目したいのがスマート農業です。loTやAIなど先端技術を活用することで農業の生産性や効率性を向上させるスマート農業の導入は、既存の作物はもちろんながら、新しい農作物を栽培し始める機会にチャレンジする生産者も多いといいます。水や温度、収穫量などをまとめて管理できるスマート農業を導入することで、経験の少ない農家でも生産性を高めることができます。ますます注目が高まるエディブルフラワーの栽培を、スマート農業が後押ししていくかもしれません。

 

トプコンは、農業に取り組むすべての農家の皆さんを応援しています。

 

〈参考資料〉

豊橋温室園芸農業協同組合

花卉の食品利用技術開発-秋田県

令和4年産 地域特産野菜生産状況調査(愛知県版)の調査結果