2022-12-13

食料自給率を上げるには、若手農家の食生活が鍵!?

目次

日本の食料自給率は37%(2020年)です。兼ねてから食料の多くを海外に依存していることから、不測の事態が危惧されていました。不測の事態とは、自然災害による世界的な収量の減少、感染症拡大や紛争による食料輸出の停滞、供給途絶、原油高や輸送コスト高騰による物価高騰です。

 

さらなる事態も考えられますが、2020年代に入り、これらすべてが現実のものとなり、生活を直撃しています。このような中、新規就農した若手の農家からは「食に関して、それほど不安を感じていない」という声を耳にします。それは、なぜでしょうか。ひとりの農家の食生活を探ると、キーワードは「米の消費量」。自給率アップの鍵となる食事をしていました。

 

「農家は一生食べ物に困らない」

 

「農家は、天候や自然災害に左右されるため、金銭的に不安定な職ではあるけれど、作物を自給できる身としては、何があっても食いっぱぐれがありません」。これは、この10年程の間に新規就農した若い農家から度々耳にする声です。

大阪の北部にある農業が盛んな町で、2020年春、米農家として新規就農した30代の農家Y氏は、自身の子どものため、生後100日前後に行う儀式「お食い初め」を敢えて行いませんでした。お食い初めに込められる願いは「一生食べ物に困らないように」。Y氏の考えは、「うちの子どもは、農家の子。一生食べ物に困ることはないから必要ない」ということです。農家は、米はもちろん、大豆、季節ごとの野菜、さらには小麦と、欲しい作物を栽培でき、「自家自給率」を上げることが可能だからなのです。

 

↑写真はイメージです。

 

食料自給率はカロリーベースか生産額ベースか

 

ところで、日本の食料自給率の37%(2020年)という数値は、カロリーをベースにした計算であることをご存じでしょうか。これは消費に回された食料全品目のうち、可食部における国民ひとりあたりの1日に対する熱量の合計の割合から換算したものです。1日当たりに供給している全品目の熱量の合計(供給熱量:2,269kcal)に占める国産の熱量(国産熱量:843kcal)の割合を計算し「37%」となっています。実は、これとは別に、金額で換算する生産額ベースの食料自給率も存在するのです。

 

カロリーベースでは、単位重量当たりのカロリーが高い米、小麦、油脂類(原料となる大豆や菜種等)の影響が大きくなります。一方、生産額ベースでは、単価の高い畜産物、野菜、魚介類の影響が大きくなります。また、全般的に輸入品より国産品の方が高価なので、国内生産額は高くなり、その結果、生産額ベースの自給率はカロリーベースより高くなります。

 

そのため生産額ベースで考えると、日本の食料自給率は67%(2020年)。高品質な農作物を生み出す日本の良さであり強みが反映されている数値です。

「カロリーベース」か「生産額ベース」か。国際標準は、生産額ベースです。とはいえ、どちらで計算したとしても、日本の食料自給率は、他の国々と比較すると低い水準にあります。自給率の高い米の消費が減少し、海外に依存している畜産物や油脂類の消費量が増えてきたことから、長期的に低下傾向で推移しているのです。

 

 

自給率低下の要因=生活習慣病の要因

 

時代を遡れば、1965(昭和40)年のカロリーベースの自給率は73%でした。現在と比較すると、半減していることがわかります。この自給率の低下は、米の消費量の減少と比例しているのです。国民ひとりあたりが1年間に食べているお米は、1962年の118.3kgをピークに年々減少しており、2020(令和2)年では 50.7kgと約半分になりました。

 

日本人の食生活が徐々に変わってきことで増加したのが、肉類や油脂類なのです。1960(昭和35)年では、国民ひとりあたりが1年間に食べている食肉(牛肉・豚肉・鶏肉)の消費量は、わずかに3.5kgでしたが、2020(令和2)年では33.5kgと増えました。約10倍の増加です。かつては米がメインディッシュ、現在は肉類がメインディッシュともいえてしまいます。これは、肥満や生活習慣病が増えてきた要因とも重なります。

現在の日本では、さらなる不測の事態に備え、一人ひとりが食生活ひいては食料自給率に対して真剣に考えることが求められます。自給率を上げるよう国を挙げて努めることも大切ですが、自分自身の「栄養バランス」や「健康」について考えることも大切といえるでしょう。結果、気づいたときには、食料自給率が上がっていたという未来が待っているかもしれません。

 

 

食生活の原点回帰が日本を救う!?

 

前出の米農家Y氏は、米だけではなく、畑で大豆を栽培し、米で麹も作り、1年分の自家製味噌を仕込んでいます。Y氏の食事は、米、具沢山味噌汁、プラスαを基本とした昔ながらの日本の食事です。味噌汁の具材は、自家栽培か地元のもの。「食料危機が来たとしても、日本人は米と味噌があれば死ぬことはありません」と明るく話します。Y氏の米の消費量は、ひとりで1日3合程。年間では、日本の1962年のピーク時以上の量のお米を食べていることになるのです。

 

Y氏のように積極的に米を食べる。これは、まさに食生活の原点回帰といえます。今後、日本人の食事の在り方は、米がメインディッシュに返り咲く必要性が出てくるかもしれません。

 

米が、これからの日本の食を今以上に支える未来をつくるには、米を栽培し続けることが必須です。けれども、日本では農家の高齢化が大きな課題。栽培量を維持するためには、Y氏のような若手の米農家が増え、技術を継承し、広がり続ける休耕田を食い止めることが必要です。その際に一助となるのがスマート農業なのです。トプコンの製品はスマート農業を支えるもののひとつ。初心者でも熟練者と同じ精度で作業が可能となり、労力軽減、収量アップを実現でき、日本の自給率アップや食への不安軽減へ貢献できるよう努めています。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。
https://www.topconpositioning.asia/jp/ja/products/products/agriculture/

<製品紹介>

経路誘導ナビシステム「GNSSガイダンスシステム」は、お持ちの機械に装着可能。モニターで走行ラインがわかり、走行ラインからのズレ量もcm単位で表示されるので、誰でも簡単にラインに合わせて作業することができます。オペレーター経験が浅い方や今まで不安があって運転作業できなかった人でも、熟練者と同じ精度での作業が可能です。

「自動操舵システム」は、どなたが作業してもハンドル操作不要で、田植え、畝立て、播種、収穫作業といった多岐にわたる直視作業が高精度で行えます。お持ちの機械に装着するだけでラクラク自動化を実現。

 「CropSpec」は、物にレーザー光を照射して、生育状況をリアルタイムに計測する、画期的なセンサーです。GNSS自動操舵/ガイダンスシステム、可変施肥機と連動してリアルタイムで可変施肥を行うことができます。

 「可変施肥設計ソフトウェア nRate-Map Web」は、「畑輪作で活用できる生育履歴情報を利用したマップベース可変施肥技術」にて使用されている、『施肥マップ』のウェブアプリケーション版です。