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スマート農業に注力する韓国農業
日本の農業に活かせるヒントとは?

目次

高齢化が進み、農家数も減少傾向にあるなど、日本と同様の課題を抱える韓国の農業事情。しかし、韓国では2027年までに農業生産の30%をスマート農業へ転換するといった国家方針を掲げ、デジタル技術やICT、AIを活用することで、農業を高収入かつ先端的な産業へと変革していく方針を進めています。そこで本稿では、韓国農業の動向を踏まえながら、日本の農業に活かせるヒントを探ります。

農家数は減少傾向ながら農業生産額が上昇中の韓国。その理由とは?

日本の隣国である韓国の農業事情も、日本と同様に高齢化が進み、農家の数は減少傾向にあります。農業労働者の高齢化率は2000年に約22%まで達し、農業労働者数は1960年の約1400万人から2015年には約257万人へと大幅に減少するなど、さまざまな課題を抱えています。しかし一方で、農業総産出額(実質値)を見ると、日本の農業は1984年の総産出額117兆円をピークに減少の一途を辿り、1980年代半ばから衰退傾向になっているのに対し、韓国は1990年から2010年までの20年間、緩やかながら成長し続けてきました。韓国農業は2010年代に入ってからも一定の成長を維持しており、成長産業の側面を持っているともいえます。

ではなぜ、このような成長が実現できたのでしょうか?その要因の一つとして挙げられるのが、韓国では2009年の農地法の改正により、農地の所有規制が緩和されたことで、企業の農業参入が可能になった点です。この法改正以降、農業法人数は2009年以降、大幅に増加しました。大規模化された経営体が農業の中心となることで、生産効率の向上が進み、結果として農業産出額の増大に寄与したと考えられます。

 

また、韓国は日本と同様に食料自給率が低い国でもあります。1995年の韓国の食料自給率(カロリーベース)は約51%でしたが、2021年末時点では44.4%にまで低下しました。特に穀物の自給率は、米はほぼ100%に達しているものの、小麦は1.1%、大豆は23.7%とかなり低い水準にとどまっています。このため、韓国政府は食料自給率向上を目指し、2027年までに全体の自給率を55.5%、小麦を8%、大豆を43.5%までに引き上げる目標を掲げています。その実現のために、農業の大規模化を促進し、穀物類の生産拡大を進めています。

2027年までに農業生産の30%をスマート農業へ

韓国では、食料自給率の向上を目指す政策を進めると同時に、2023年にスマート農業の育成・支援に関する法律を制定しました。この法律は、情報通信技術(ICT)やデジタル技術を活用して農業の効率化・自動化を図るスマート農業の導入を促進するとともに、若い革新的な農業人材の参入を後押しすることを目的としています。韓国の研究開発費のうち、農林・食品分野には約1300億円(全体の4.4%)が割り当てられ、そのうちスマート農業関連には約745億円が充てられています。これは農林・食品分野の予算の57%に相当し、韓国政府のスマート農業推進を重要分野として位置付けていることがうかがえます。

 

さらに、韓国政府は2027年までに農業生産の30%をスマート農業による生産に転換することを目標に、「第1次スマート農業育成基本計画(2025〜2029)」を策定しました。この計画では、農業従事者や企業が農業革新を主体的に進められる環境を整備するため、総合的な支援システムの構築が進められています。加えて、地域の特産物のスマート農業生産と関連産業を連携させた「スマート農業育成地区」の指定など、多角的な施策が進められています。

韓国におけるスマートファーム普及に向けた取り組み

現在、韓国では青年就農者の育成と次世代農業技術の研究を目的に、全国に4カ所(2023年時点)の「スマートファーム革新バレー」が整備されています。また、若手農家を中心としたスマートファーム創業の事例が増加するなど、スマート農業の普及が各地で進んでいます。

 

また、農機具の分野でもスマート技術への関心が高まっています。米国調査会社ボナファイドリサーチの調査レポート「韓国の農業用トラクター市場の概要、2029年」によると、韓国では中央政府と地方政府が農業政策を強化し、作物生産のための耕地改善や持続可能で付加価値の高い作物の生産を推進しています。農業の機械化を強化して農業の生産性向上を目指して、今後は農業用トラクターの需要がさらに増加すると予測されています。これにより、市場の成長が一層加速するとも考えられており、韓国の農業用トラクター市場は2024年から2029年にかけて年平均成長率6%以上で拡大すると見込まれています。加えて、農地の大型化が進むなかで、先端技術を搭載した大型農機へのニーズも高まっています。特に、トラクターに自動操舵装置を後付けし、作業の省力化を図る動きが広がっており、農業の効率化を支える重要な要素となっています。

日本でも拡大するスマート農業の可能性

日本でも今後、農地の集約と大型化が進むことは確実視されており、それに伴い、トラクターやコンバイン、田植え機などの農業機具もますます大型化・高性能化していくと見込まれています。一方で、大型農機を導入する際には、熟練した作業者が必要不可欠です。しかし、農業従事者の減少が進む昨今の状況を踏まえると、そうした人材の確保は難しくなっています。このため、作業者の負担を軽減する自動運転の需要が今後ますます高まっていくと考えられます。

 

トプコンでは、こうした課題にいち早く着目し、スマート農業に向けた取り組みを進めてきました。トプコンの「自動操舵システム」は、正確な走行を支援することで、水田での田植え作業において苗の補給などを運転と同時に行うことを可能にし、作業効率の向上に寄与します。また、操作時の負担を大幅に軽減できるため、経験の有無にかかわらず、安定した作業品質の確保につながる点も特長の一つです。

自動操舵システム

 

日本の農業を考えるうえでも、こうした韓国の取り組みは気になる事例といえそうです。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。

トプコンのスマート農業【特長と作業動画】

自動操舵システム活用事例

 

〈参考資料〉
農林水産省「食糧・農業・農村をめぐる情勢の変化(食糧安定供給のための生産性向上・技術開発)

農林水産省「第17号特別分析トピック:我が国と世界の農業機械をめぐる動向」

韓国の農業用トラクター市場概観、2029年

農林水産省「韓国における農業の現状と農政の方向およびその評価」

【韓国】スマート農業の育成及び支援に関する法律の制定

神戸大学経済学部・大学院経済学研究科「韓国における農業の特徴および農地政策の変遷」

九州大学学術情報リポジトリ「韓国と日本の農業構造変化の比較分析:農業経営体の性格変化を中心に」

九州大学学術情報リポジトリ「2015年農業センサスにみる韓国農村社会の変容」

Sience Portal Korea「『農業の半導体』デジタル育種に乗り出す韓国―食糧安全保障と研究開発③」

Sustainabl Japan「【韓国】政府、2027年までに食料自給率を55.5%へ。食糧安全保障強化計画策定」

農林水産省「諸外国の食料自給率(カロリーベース)の推移(1961〜2007)」

政府統計ポータルサイト「食糧需給表/確報 平成29年度食糧需給表」

農林水産省「食料・農業・農村をめぐる情勢の変化(食料安定供給のための生産性向上・技術開発)」

マイナビ農業「韓国農業の最新事情 日本農業との違いとは?」

SMART AGRI「韓国のトラクター事情と、後付式自動操舵装置「プラバオート」が流行っている理由」

独立行政法人 農畜産業振興機構「2022年の農家経済調査結果を発表(韓国)」

アジア経済研究所 IDE-JETRO「韓国農業と国内支援策の動向」

韓国2022食品受給表
└P249に自給率

シン・韓国農業論「【新規就農者育成の拠点?】韓国の「スマートファーム革新バレー(스마트팜 혁신밸리)」特徴5選を紹介【ビッグデータの集積状況は?】」