2024-02-29

大豆の自給率はなぜ低い?
大豆ミートは需要増につながるか

目次

日本人にとって馴染み深い大豆は、豆腐をはじめ、納豆や醤油、味噌などの原料として日本人の食生活を支えてきました。しかし、その自給率はわずか6%。その理由は、年次変動が大きく、地域ごとの単収のバラつきや農家数の減少などが挙げられます。

 

その一方で国産大豆の需要は高まっており、特に近年注目されているのが“第4のお肉”ともいわれる「大豆ミート」。かつてはベジタリアンやヴィーガンの価値観に共鳴する人たちに向けた製品だった大豆タンパク製品が、加工技術の進展から食感や風味がアップしたことや、コロナ禍での健康志向の高まり、輸入肉の高騰などの影響から市場規模が拡大しています。

 

2022年の大豆ミートの市場規模は25億円で、2025年には40億円まで拡大すると予測されています。この様な背景から、国産大豆の安定供給、そして増産に対する期待は高まる中、現在の国産大豆の状況を踏まえて今後の展開をご紹介します。

日本の食文化を支えてきた大豆の自給率はたった6%

大豆は日本人の食生活には欠かせない食材です。豆腐や納豆、醤油や味噌などの原料として使われるなど、毎日に何らかの形で摂取しているものの、その自給率は6%という驚きの低さです。
大豆自給率の伸び悩みの理由は、農家数の減少はもちろんながら、大豆は気象の影響を受けやすく、年次変動の大きい作物であるため、生産年や地域によっても単収にバラつきが生じることが大きな要因に。そのため、海外産に頼らざるを得ない場合が多いため、安定的な販路を確保することが難しく、結果的に単収の低下に繋がっているようです。

 

さらに、生産期間も時間がかかり、労働力もその間必要とされることも生産量が増えない一因になっています。

 

しかし、国内における大豆の需要動向は堅調で、2017年度が357万トンに対し、2022年度は389万トンと、順調に増加傾向で推移しています。国産大豆は味の良さや安全面などから信頼度は高く、消費者ニーズの高まりもあり、今後も安定した高需要が期待されています。

「大豆ミート」の躍進から、今後ますます大豆需要が期待される

そんななか、2023年10月に飛び込んできたのが、日本大豆ミート協会が設立されたというニュース。大豆を原料とした肉代替食品(代替肉)の市場は年々拡大傾向にあり、その追い風を受けて食品メーカー大手5社で協会を設立し、一般家庭への普及などに注力するそうです。

 

この肉代替食品は「大豆ミート」とも呼ばれ、“第4のお肉”として注目を浴びています。大豆ミートは、以前はベジタリアンやヴィーガンなどの価値観に共鳴する人たちに向けた食材として知られていましたが、近年はコロナ禍での健康志向の高まりや輸入肉の高騰などの背景から認知度が拡大。栄養価は高い反面、低カロリーであることから、ヘルシー志向の人や植物性タンパク質を積極的に取り入れたい人などからの支持が増加しています。

 

その人気ぶりを示すかのように、現在、国内の大豆ミートの市場規模は25億円ながら、2025年度には40億円が見込まれています。さらに世界での大豆ミートの市場規模は大きく、2030年には1.87兆円に達すると予測されているとか。特に日本の大豆は海外でも評価が高いので、海外輸出が増えることも想像に難くありません。

国産大豆の安定供給が今後の課題に

国産大豆の需要増が今後ますます高まるなか、課題になっているのが国産大豆の生産量を増やすための取り組みです。国の施策としては、国産大豆の生産性向上のための作付けの団地化の推進や営農技術の導入、生産拡大に向けた機械導入などを支援することにより、国内の大豆の生産基盤を強化し、安定供給体制の構築を推し進めています。

 

また、特に注目したいのが、生産拡大に向けた機械・施設の導入について。大豆の生産拡大や成果目標の達成のために必要な機械・施設の導入、リース導入・改良を支援するとあり、大豆生産の拡大を考えている生産者や、この先大豆生産に乗り出そうと考える農家にとっては、心強いサポートに期待が高まります。

 

また、2023年11月には農研機構が大豆の新品種「そらみずき」「そらみのり」を育成したとの報告も届いています。両品種とも、米国の多収品種と加工適正の高い国内品種を交配し育成したものになり、国内で最も普及している品種「フクユタカ」と比較しても3割以上多収になるとか。また、両品種ともさやがはじけにくく、収穫ロスが抑えられるといった特長もあり、これらの品種の普及が進むことで、国産大豆の安定供給の向上や、ひいては食料自給率の向上にも貢献することが期待されています。

スマート農業の導入で、高効率性で安定した農業を実現

今、まさに生産拡大が求められている大豆ですが、当然ながら生産量を増やすためには農地を大規模化する方が効率がよく、規模が大きくなればなるほど機械化の推進が望まれます。例えば、自動操舵システムを取り入れたトラクターで圃場を耕すなど、機械化との相乗効果で省力化が叶えられるなど、スマート農機といった新しい技術を導入することにより、収量アップも見込めるからです。

 

トプコンではスマート農業にいち早く取り組み、技術面での負担を軽減する製品「GNSSガイダンスシステム」や「自動操舵システム」などを開発。例えば、お持ちのトラクターに取り付けるだけで自動操舵が可能になれば、大規模圃場であっても作業の効率化・省略化が図れます。また、農作業が不慣れなオペレーターであっても熟練者と同じ高精度の作業が可能になります。

 

日本人にとって必要不可欠な大豆の栽培を拡大するためには、農家の人たちの弛まぬ努力があってこそ。そして、さまざまな工夫も取り入れることで、増収にもつながることが望まれます。トプコンは日本の農業を支えるため、様々な技術でサポートしていきます。

 

トプコンは、2006年よりスマート農業に取り組んでいます。
トプコンのスマート農業

 

〈参考文献〉

農林水産省「日本人は大豆をむかしから食べているのに、なぜ自給率(じきゅうりつ)が低いのですか。

農林水産省「大豆をめぐる事情」令和6年3月版

日本農業新聞「日本大豆ミート協会設立 食品5社、商機へ連携」

農林水産省「麦・大豆生産技術向上事業の概要」

農研機構「(研究成果) 収量が高く豆腐に利用できるダイズ新品種「そらみずき」、「そらみのり」」