2023-06-09

個人農家の新たな活路「野菜の定期便」
売り上げを伸ばして販路も拡大!

目次

新鮮な野菜を直接消費者に届ける「野菜の定期便」に取り組む企業や個人農家が増えています。特にコロナ禍を機に巣ごもり需要が追い風となってニーズが拡大し、個人農家にとっては新たな販路を拡大するチャンスになっています。消費者にとっては最も旬の時期の産地のおすすめの野菜が届くというメリットがあり、また、農家にとっても販路が拡大し、売り上げがアップするだけでなく、安定した出荷先が確保できるという大きな利点もあります。個人農家の新たな活路でもある野菜の定期便の可能性を解説します。

 

コロナ禍で市場拡大。「野菜の定期便」が注目される理由

野菜は毎日の食事の中でも必要不可欠な食材。自身や家族の健康に気を配れば、少しでも良質のものを摂りたいと思うのは当然のことでしょう。そんな中、コロナ禍を経て、野菜の購入動向が大きく変わり始めています。コロナ禍において買い物の際の安全面などを理由に外出を控える動きが広まり以前は店舗で購入していた食品をオンラインショップなどネットで購入する傾向が高まったことは周知の通り。矢野経済研究所が実施した食品通販市場に関する調査結果によると、コロナ禍2年目の2021年度の食品通販市場は前年度比2.9%増の4兆4,434億円となり、活況を呈しています。

 

そんなオンラインショプでも利用者が急増しているサービスが、サブスクリプション。野菜の場合は定期的に野菜類を消費者に届ける「野菜のサブスク」「野菜の定期便」として認知されています。この「野菜の定期便」が注目される理由を探ってみると、消費者にとっては多大なメリットがあることがわかってきました。

 

●地域を限定されることなく、全国の野菜の購入が可能。
●産地から旬のものなど新鮮な野菜が直接届けられる。
●無農薬栽培や生産者の顔が見える安心安全な野菜などを選ぶことができる。
●直接自宅まで届けられるため、買い物に行く手間が省ける。

 

特に子どもの健康を気遣う子育て中のママ・パパ世代や共働き世帯、高齢者にとっては直接自宅まで届けられるため、買い物に行く手間が省けることも魅力になっているようです。

ふるさと納税にも採用!企業や個人農家が続々と参入

しかし、「スーパーや青果店など近くの実店舗で購入した方が価格も安く抑えられる場合もあるし、産地直送にそれほどメリットがあるのだろうか」と考える人もいるかと思います。しかしながら、農林水産省の調べによると、野菜を購入する際、特に重要な点については、「味・鮮度」と回答した割合が81.9%と最も高く、次いで「価格」、「安全性」、「産地」という結果もあり(令和元年度農林水産省「野菜やくだものの外観や販売方法に関する意向調査」より)、肉や魚などに対し、比較的安価な野菜は風味の良さや新鮮さを重視する人が多いことから、「野菜のサブスク」「野菜の定期便」が重宝されているようです。

「野菜のサブスク」「野菜の定期便」は、季節の野菜類をセットにして届け、基本はどの野菜が入っているかは送る側のおまかせになっている場合がほとんど。運営側は、企業が複数の農家と提携して配達部分を企業が担うケースと、個人農家が生産した作物を自ら定期販売するケースに分けられます。

 

企業が担うケースで有名なところは、オイシックス・ラ・大地株式会社が運営する宅配サービス「らでぃっしゅぼーや」や、株式会社ビビッドガーデンが運営する宅配サービス「食べチョク」など。中でも食べチョク生産者の中から厳選した、生産者の旬の野菜セットが届くサブスク「食べチョクコンシェルジュ」は、2022年6月に注文数が15万件を突破するなど、野菜のサブスク事業は右肩上がりに。また、産直アプリ「ポケットマルシェ」も2023年2月から旬の野菜と定番野菜をセットにしたサブスクサービス「季節を味わう 旬のお野菜定期便」をスタートするなど、企業の参入も目立ち始めています。

 

さらに、近年はふるさと納税の返礼品に「野菜の定期便」が採用される例も増えてきました。こちらは個人農家が中心となり、「毎月1回6ヶ月連続でお届け」「春夏秋冬の旬野菜を季節ごとにお届け」などが選べるシステムに。提供期間が終われば返礼品のお届けは終了しますが、これがきっかけとなり、その後は直接注文を受けるなど、リピーターを獲得するチャンスにも繋がっています。

売り上げにつながる?農家が取り組むメリット・デメリット

個人農家の場合、JAや地域の直売所などへの販売に加えて、野菜の定期便に取り組むメリットとデメリットは、以下のような点が挙げられます。

〈メリット〉
●継続的な売り上げが立てやすくなり、売り上げの増加や安定化が見込める。
定期便やサブスクは継続型のビジネスモデル。解約者は当然出てきますが、利用者数×単価である程度の売り上げの試算ができます。事前にどのくらいの売り上げが上がるのか見込めるので、新しい作物栽培などへの投資も可能になります。

●新規客を獲得できる。
地域のマーケットだけでなく、全国に購入者を獲得できるため、新たなファンを創出できます。

●規格外の野菜も販売でき、こだわりの作物も自由に値付けできる。
値付けするのは生産者自身なので、売りたい値段で販売できるのも魅力。また、形が不揃いなど規格外品も風味や鮮度さえよければ人気商品にもなり、フードロスにも貢献できます。

〈デメリット〉
●出荷や配送などの手間がかかる。
販路が増える分、在庫の確保や生産計画の管理、そして自分で販売する場合は出荷や配送といった手間が増えます。

●ネットショップを運用するにあたって様々なルールがあり、トラブルが発生することも。
JAや直売所に販売する場合、基本は作物を納品すれば終わりですが、自分でネット販売する場合は購入者に商品が届くまでが仕事になります。ネットショップを開設するにあたり、特定商取引法を守る義務もあり、また、お客さんを獲得するまでのPR方法といったマーケティングの知識なども必要とされます。

野菜のサブスクをスタートさせれば、メリットがある一方でデメリットももちろんあります。けれど、農家にとって販路拡大や売り上げの増収も期待できることから、農業経営を考える上でチャレンジする価値はあるともいえるでしょう。

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