2022-11-01

廃棄野菜がクレヨンに!?紙に!?洋服に!?

目次

いま、廃棄野菜へ温かな目が注がれています。これまで農作物の世界では、取引や出荷の簡素化、流通の合理化によって定められた規格に適さない野菜が、「規格外」というレッテルを貼られ捨てられていました。いわゆる「食品ロス」です。食品の廃棄は、「もったいない」だけではなく、捨てて燃やすことにより地球環境への負荷が増大します。そのため、日本では法整備され、SDGsへの取り組みとしても廃棄削減が強化されている最中です。つまり、不当な廃棄はNGへ。そこで、新たな付加価値を持たせる流れが盛んになりました。野菜を全く別のジャンルへと製品化させるのもその一つ。なんと、クレヨンや紙、洋服の染料へアップグレードさせる「アップサイクル」という方法が注目を集め、ヒット商品が続々と誕生しています。

 

隠れ食品ロス問題が2021年に浮上

食品ロスとは、「本来食べられるのに捨てられてしまう食べ物」のこと。売れ残り、規格外品、返品、食べ残し…。実は、ここには、出荷前に畑で廃棄される農作物は含まれていません。畑で規格外と確認できる、曲がったキュウリ、丸くないトマト、先が分かれたニンジンやダイコンなどの変形野菜は、SNS映えはしますが、市場では廃棄されるとわかっているので、産地で処分。ダメージを受けている野菜も、同じく処分。また、豊作の場合も、価格を維持するための生産調整として産地で処分。これらは「畑の食品ロス」とも「隠れ食品ロス」とも呼ばれており、現状が見えにくくなっていました。

 

ところが、2021年に実施された調査によると、それまでの全世界の「食品ロス」が13億トンといわれていたところ、「隠れ食品ロス」を加えると、倍ほどの25億トンという衝撃の結果が判明。食料生産量の40%が廃棄されていることもわかりました。ちなみに、日本では、これまでの「食品ロス」だけでは、1人当たりの場合、お茶碗1杯分のごはん(約124g)の量が毎日捨てられている計算でした(令和元年度推計値)。新事実で単純計算すると、お茶碗2杯分ほどに。「隠れ食品ロス」が判明すると、思わぬ結果が出てしまい、各国は、さらなる削減のために動き出さざるをえなくなっているのです。畑で廃棄される農作物は、自然災害の影響も大きいものの、削減方法を深刻に考えるべき時に来ているようです。

廃棄野菜をアップサイクルするビジネス

 

日本では、食品ロスの削減を促進するために通称「食品ロス削減推進法(正式名称は「食品ロスの削減の推進に関する法律」)」が2019年10月に施行。10月が「食品ロス削減月間」と決められる等、積極的な削減運動がスタートしました。「廃棄野菜」への注目も集まり、ビジネスとしても加速する一方。産地での廃棄野菜、また、加工時にカットされ廃棄される野菜を使用することで、新しい製品が生まれています。モノづくりにも廃棄野菜が活用されているのです。この方法は、廃棄物や不要になったものに手を加え、付加価値を付ける「アップサイクル」と呼ばれるもの。

 

代表的なモノといえば、「おやさいクレヨン」(mizuiro株式会社)。廃棄された野菜(果物も)をパウダー状にして配合し作られています。それぞれのクレヨンには、色の名前ではなく、「きゃべつ」「ねぎ」「ごぼう」「ながいも」「とうもろこし」「雪にんじん」等と材料名の表記。

 

2014年の発売当初は、1年で2万セットを販売。アジア諸国へも販路を拡大。法律制定やSDGsへの強化も手伝って、メディアで頻繁に紹介され、コンスタントに売れ続けたことで、2021年秋の時点で販売した数は15万セット。これまでに27万トンの廃棄野菜や果物をアップサイクルしているとのこと。

 

様々な業界が廃棄野菜の可能性に挑む

 

越前和紙の老舗工房「五十嵐製紙」が手掛けるFood paper」もメディアで多く取り上げられている野菜のアップサイクルです。和紙職人の息子による5年間もの夏休みの自由研究『食べ物から紙を作る研究』がヒントとなり、地元の福井県で廃棄される野菜や果物を使用して紙類などが作られています。使用する野菜は、ニンジン、玉ネギ、ジャガイモがメイン。その他、オクラ、パプリカ、ショウガ、ナス等、収穫できる季節に合わせても製品化。アイテムは、メッセージカード、ノート、サコッシュ、小物入れ、フードストッカーの5種類。単なる紙としてだけではなく、用途を広げたことで、廃棄野菜への注目を高める一助ともなっているのです。

 

環境負荷が最も深刻とされるファッション業界でも、新しい価値が生まれています。野菜を中心とする廃棄食品に含まれる成分から染料を抽出し、素材や商品を提供するプロジェクトブランド「FOOD TEXTILE」(豊島株式会社)が名だたる企業をサポートしているのです。化学染料ではなく、野菜等による天然染料90%を使用したTシャツ、ネクタイ、シューズ、ハンカチといった洋服や雑貨に驚きを隠せない消費者が続出しています。トレーサビリティを徹底し、タグから読み取れる商品の背景や生産の過程を大切にしていることも大きな試みです。持続可能を目指す社会では、ファッション業界でさえ取り組みが問われることを、このブランドは教えてくれています。

 

得策は廃棄野菜を増やさないこと

 

廃棄野菜の一つ、規格外野菜についていえば、アップサイクルがあるから課題が解決するわけではなく、根本的な解決が必要といえるでしょう。そもそも「規格」がなぜ生まれているかを一人一人が考えることも大切ですし、農家は「規格外野菜」と呼ばれる、変形したり、病気で形が悪くなったり、害虫によるダメージを受けたりする野菜を作らないように努めることも重要です。例えば、キュウリが曲がる原因は、肥料や水不足。解決策としては、やはり、適したタイミングで適した量の肥料や水を与えることが求められます。雨や水がはねて野菜の葉につくと病原菌が付着することから、予防のために畝にマルチを張ることも有効です。そして、害虫は、タイミング良く実施する防除作業が必要です。

 

このような作業の際に大いに役立つのがトプコンの製品「GNSSガイダンスシステム」と「自動操舵システム」。農作業の経験がなくても、正確にトラクターを走らせながら高精度な作業が可能になるため、野菜生産が廃棄野菜の軽減へつながります。それは、つまり、世界が取り組む「食品ロス」削減の問題解決へ、一緒に向かっていけるのです。

 

トプコンは2006年からスマート農業に取り組んでいます。
https://www.topconpositioning.asia/jp/ja/products/products/agriculture/

<製品紹介>

経路誘導ナビシステム「GNSSガイダンスシステム」は、お持ちの機械に装着可能。モニターで走行ラインがわかり、走行ラインからのズレ量もcm単位で表示されるので、誰でも簡単にラインに合わせて作業することができます。作業軌跡をモニターで確認することにより、重複作業を防止できることも特徴です。

「自動操舵システム」は、どなたが作業してもハンドル操作不要。肥料散布、防除作業といった高精度の直進作業が可能です。散布マップが読み込めるので、圃場に合わせた作業が行えます。マルチ作業も手放しでOK。必要な部分のみに農薬を散布するブームスプレイヤ作業にも使用可能。お持ちの機械に装着するだけでラクラク自動化を実現します。