公開日:

最終更新日:

レンズで物が大きく見えるのはなぜ?

目次

私たちの日常生活に欠かせないレンズ。眼鏡や顕微鏡、カメラ、望遠鏡などはもちろん、測量機や眼科の検査機器など、さまざまな機器で使われています。レンズを通して物を見ると、裸眼では見えにくい細部がクッキリと見えたり、遠くの物が大きく見えたりするのはどうしてでしょうか。今回は、レンズの誕生から現在の技術、レンズの仕組みについて詳しく解説していきます。

レンズの語源と歴史

レンズとは、ガラスやプラスチックなどの透明な物質でつくられ、一般的には片面もしくは両面が球面になっているもののことです。球面が膨らんでいるものを凸レンズ、へこんでいるものを凹レンズといいます。「レンズ」という言葉は、ラテン語でレンズ豆を意味する「Lens」に由来しています。レンズ豆の形が凸レンズに似ていることから命名されました。ちなみに、レンズと機能が似ているといわれる目の水晶体のことも英語で「lens」といい、これもレンズ豆に由来しています。レンズ豆は、レンズに形が似ているから名付けられたのではなく、実際は逆でレンズがレンズ豆に似ているから名付けられたものです。

 

レンズの歴史は紀元前にまで遡りますが、最初は物を見るためではなく、太陽光を集めるためや、装飾品として使われていました。レンズが拡大鏡として広く使われ始めたのは13世紀頃からです。この頃に、片面が平らな凸レンズを使用したリーディングストーン(読書石)が登場し、文字を拡大して読むことができるようになりました。当時の人々も老眼に悩まされていたでしょうから、レンズの登場に助けられた人は多かったはずです。その証拠に、物をよく見るためのレンズは急速に広まり、同じく13世紀に眼鏡が発明されました。さらに、16世紀に顕微鏡、17世紀に望遠鏡が誕生しました。

レンズの仕組み

 

浮世絵で有名な葛飾北斎(1760〜1849)が描いた絵本『富獄百景』の中に、富士山が逆さまになって障子に映り、それを見て驚く人の姿が描かれた「さい穴(節穴)の不二」という絵があります。なぜ室内に富士山が逆さまに映ったのでしょうか。それは障子の向かい側にある雨戸に小さな穴(節穴)が開いていて、富士山に反射した光が節穴を通って障子に像を映し出していたからです。物体が発した、または反射した光は四方八方に広がって真っ直ぐ進む性質があります。従って、富士山の上部からの光は障子の下の方に届き、下部からの光は上方向に届くため、上下が逆になって映し出されたのです。この現象はピンホールカメラに応用されています。ピンホールカメラは単純な構造で像を投影できますが、得られる像はとても暗くなります。この像を明るく鮮明にするためには、より多くの光を集める必要があります。そのために活躍するのがレンズです。

レンズの仕組みを理解するには、まず光の性質を理解する必要があります。光には、まっすぐ進む「直進」や、鏡などに当たると方向を変える「反射」といった特徴があります。また、光には異なる物質の境界面を通過すると、進む方向を変える性質があります。光は、空気中よりもガラスや水などの透明な物質の中では遅く進むため、空気からこうした透明な物質へ進む際には、境界面で進む方向が変わります。この現象を「屈折」と呼びます。

 

例えば、光が空気から水に入ると、水面に向かう角度「入射角」は、水の中に入った後の角度「屈折角」より大きくなります。逆に光が水から空気に出る際、入射角が屈折角よりも小さくなります。レンズはこの屈折を利用し、光の進む方向を制御し、像を拡大または縮小したりします。

 

眼鏡やカメラ、顕微鏡、望遠鏡などで使われているレンズは、対象を拡大・縮小する役割を果たしています。光が空気からプラスチックやガラスを通過する際の屈折を利用して、その進む方向を変え、光を集めたり散らしたりします。こうした働きを持つレンズは、大きく分けて2種類あります。

中心が厚く、表面が外側に膨らんだ「凸(とつ)レンズ」は、光を内側へ曲げることで、平行に進む光を一点に集めることができます。一方、中心部が薄く表面が内側にへこんだ「凹(おう)レンズ」は、平行に進む光を外側へ広げる働きがあります。レンズを通して屈折した光の束が一カ所に集まる点を「焦点」といいます。凹レンズでは、広がった光を逆方向へ延長したときに交わる点が焦点となります。凸レンズでは、通過した光は実際に内側の一点に集まり、これが焦点となります。

 

凸レンズ凹レンズの組み合わせで、用途が広がる

 

近視眼鏡には凹レンズが使われています。近視の人は、目に入った光の焦点が網膜より手前に結ばれるため、遠くの景色がぼやけて見えます。これを改善するために、水晶体の前に凹レンズを配置し、光の屈折を弱めて焦点距離を伸ばし、網膜に鮮明な像を結べるようにします。

 

一方、凸レンズは、老眼鏡や遠視用のメガネに使われます。老眼は、遠くを見たり近くを見たり、自由にピントを変える力が加齢によって衰えることによって起こります。遠視の人は目に入った光の焦点が網膜の後ろで結ばれる傾向があるため、近くのものが見えにくくなります。

これを補うために、凸レンズによって光をより強く集め、焦点が網膜上に結ばれるようにします。

その結果、ピントを合わせやすくするのです。

 

顕微鏡や望遠鏡、カメラなど、さまざまな光学機器では、1枚のレンズだけでなく、複数の凹凸レンズを組み合わせて使用します。これらのレンズを組み合わせることで、肉眼では見えないほど小さなものを拡大したり、遠くのものを鮮明に観察したりすることができます。例えば、凸レンズと凹レンズを組み合わせた「ガリレオ式望遠鏡」では、凸レンズで集めた光を凹レンズで調整することで、遠くの物体を拡大して見ることが可能です。また、複数の凹凸レンズを組み合わせ、レンズ同士の間隔を変えることで、焦点距離を調整し、望遠倍率を滑らかに変えることができます。

 

レンズを使えば視力はどれだけ上がる?

レンズを使うことで、人間の視力はどれほど向上させることができるでしょうか。視力に換算して比較してみましょう。一般的なメガネで補正可能な視力は1.0〜1.5程度です。望遠鏡の視力は、口径が大きいほど上がります。例えば、ハワイにある「すばる望遠鏡」の分解能(ものを識別できる力)を視力にたとえると1000以上で、富士山頂に置いたコインを東京都内から見分けられるほどの視力です。ただし、地球には大気があり場所によって気温が異なるため、光の進み方が乱され像が歪んでしまいます。そのため、実際の解像力は理論値よりも大きく低下し、約10分の1程度まで低下するとされています。大気の温度差がない宇宙空間にある「ハッブル宇宙望遠鏡」なら、地上では困難な高い精度での天体観測が可能です。

 

現在、レンズは拡大鏡としての役割だけでなく、CD/DVDプレーヤーやコピー機、レーザープリンターなど、様々な光を使った製品でも活躍しています。レンズの技術は日進月歩で進化しており、近年では、ナノテクノロジーやコンピュータ技術を駆使した高度なレンズも開発されています。これらの技術をVR(仮想現実)やAR(拡張現実)と組み合わせることで、実際には存在しない物まで見ることができます。

 

トプコンの製品の中にも、さまざまなレンズが入っています。レンズを通して正確な座標をはかる測量機、レンズを通して眼の検査をする検査機器など、90年以上の歴史を通して培ってきた技術の結晶が詰まっています。

これからも、レンズの可能性は無限大に広がっています。私たちの生活を豊かにし、未知の世界を探求する手助けをしてくれるレンズのさらなる進化が期待されます。

 

 

参考

すばる望遠鏡の本体

すばる望遠鏡 観測成果

公益財団法人 日本眼科医会 子供が近視といわれたら