2023-02-08

日本製ブルドーザーが世界で活躍するまで

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ブルドーザーは、土木や建設の作業に使われる建設機械(重機)のなかで最もポピュラーな存在です。特に、1955~1973年ごろの日本の高度経済成長期に大活躍しました。しかし、それ以前の日本では、土木作業の大部分が人力で行われていたといいます。一方、アメリカでブルドーザーが発明されたのは1923年。日本の大正時代にあたります。アメリカから随分遅れをとっていた日本のブルドーザー市場ですが、現在は世界シェアをアメリカと二分するまでに成長しています。ブルドーザーは日本でどのように誕生し、活躍してきたのでしょうか。その変遷をたどります。

ブルドーザーはどんな建設機械?

 

ブルドーザーとは、前面についた大きな排土板(金属の板・ブレード)で、土を削り取ったり、前方へ押し出したり、平らにならしたりする車のこと。土砂の運搬、削土、盛土、土ならし、除雪などに使われます。車体の後部にリッパーという鉄の爪をつけて、固い地面を砕いて掘り起こす機能を持つものもあります。

 

大型のものでは、排土板が幅5m以上にも及び、最大27t(アフリカゾウ約5頭分)もの土砂を押し出すことができます。タイヤにあたる部分は、金属やゴム製の帯をつなぎ合わせたベルトを車輪にかけ渡したクローラを採用。地面との接地面積が広いので、斜面でも倒れずに走ることができます。

 

ブルドーザーの名前の由来にはさまざまな説があります。以前アメリカでは雄牛(Bull)が居眠り(doze)するほど暇になったことから、Bulldozerと名付けられたという説が出回っていました。しかし、実際には雄牛ではなく、馬やラバが使われることが一般的であったことから、今は「強引に推し進める」という意味のあるスラングBull’s doseが変化したものであるとする説が有力です。

太平洋戦争でアメリカとの技術差に愕然

 

ブルドーザーの起源は定かになっていませんが、その昔、手押一輪車の前に板をつけて盛土を押し出していたことが始まりだといわれています。1917年のアメリカ系の貿易会社・ラッセル社のカタログには、2頭の馬の前面に排土板を付けた写真があり、「Bull Dozer」という名称が掲載されています。1923年には、トレーラーや農業機械を牽引する作業用自動車・トラクターの前方に排土板を付けたものが登場。これが、現在のブルドーザーの出発点だといえそうです。

 

しかし、その頃の日本は人力が主流。太平洋戦争中の1942年、日本帝国海軍はウェーク島を占領し、飛行場修理のために200人以上の米軍捕虜を要求しました。すると、米軍は「200人も必要ない」と言ってブルドーザーを用い、10人程度で作業を終わらせたそうです。しかも、それまで数ヶ月かけていたことが、わずか数日間で完了。当時の日本の技術では到底敵わない優れた性能を目の当たりにした将校は、そのとき日本の敗戦を確信したといいます。すぐにそのブルドーザーは日本に持ち帰られ、国内開発が進められるきっかけになりました。

戦後の復興に国産ブルドーザーが活躍

 

持ち帰ったブルドーザーを元に国産化が進められたのは、それからたった約1ヶ月後。驚異的な速さでした。その大部分は軍事用とされ、敗戦と同時に、設計図もすべて処分されました。戦時中に海の底に沈んでしまったものもあります。日本で再び国産のブルドーザーが活躍し始めたのは、敗戦後の復興時です。処分した設計図を思い出し、1から製造が始まりました。当初アメリカ製と比べ、まだまだ故障も多く、パワーも少なかった国産ブルドーザーは、何度も改良を重ね、世界で通用するまでにレベルアップしました。空襲で瓦礫の山と化した街をきれいにし、農地を切り開き、道路を整備し、ダムを建設して電力を確保。国産ブルドーザーは、現在の日本の礎に大きく寄与したといっても過言ではありません。

 

人手不足を補うシステムをトプコンが開発

 

ブルドーザーは前部にエンジン、後部に運転席という配置が一般的です。運転席には、ハンドルはなく、左右にレバーや装置がついています。レバーで排土板やリッパーを操作し、レバーについているボタンで進む方向や速度を変えます。ブルドーザーを操作するには、重機を公道で走らせるための大型特殊自動車免許や小型特殊自動車免許が必要で、仕事目的で運転するための車両系建設機械運転技能講習にも合格しなければなりません。その後も、実践で通用する運転技術を養う必要があります。

 

人材不足が深刻な土木・建設現場のなかでも、技術が必要なブルドーザーの操作。「建設工事の工場化」を進めているトプコンは、ブルドーザーの排土板をコントロールし3次元設計データ通りに施工する「ドーザーシステム」を開発しました。「Mastless Dual GNSS MC-Max Dozer」は、マルチGNSS対応受信機と高精度センサーを搭載し、ブルドーザーと通信することで、設計図通りに作業が進められるようにコントロールします。さらに、設計面に対して排土板を自動制御し、複雑な斜面でも滑らかな仕上がりを実現します。

 

GNSSでは上空視界が確保できない山間部やトンネル、都市部など上空視界の狭い現場では、「3D-MC TSドーザー Z-53 LPS」が活躍。トータルステーション(マシンコントロール対応)を活用することで、場所に左右されずに利用することが可能です。トプコンが、国産ブルドーザーの世界への躍進の一端を担っているのです。

トプコンのマシンコントロール・ドーザーシステム