2023-01-13

驚異の地下ワールド! 日本の下水道をつなげば月に到達!?

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「彼は臭い下水の中を460mも這って進んだ」――これは、1994年のアメリカ映画の名作『ショーシャンクの空に』のワンシーン。ティム・ロビンス演じる主人公が、脱獄するために下水道を利用します。日本では、伊坂幸太郎原作で2010年に映画化された『ゴールデンスランバー』(2018年には韓国版も公開)で、主人公が逃走のために下水道を活用。実際に使われている仙台市の下水道がロケ地に採用されました。

 

このように映画で垣間見ることはあっても、普段は地下に埋設されていて見ることができない下水道。日本の下水道は、全てつなげると約49万kmにも及ぶといわれています。これは、地球12周分以上にあたり、月と地球との距離38万kmを優に超える長さ。国道と都道府県道の総延長は約21万kmですから、2倍以上の道が地下に潜んでいるということに!?どんな世界が広がっているのでしょうか。

下水道には雨水管と汚水管がある

 

下水道は、汚水(汚物や廃液など)や雨水を流す公共の水路のこと。私有地にあるものは排水管や排水設備といい、敷地近くに設置された公設枡(私有地から出た汚水や雨水を溜める場所)以降の下水処理施設までが、公共が管理している下水道です。以前は、雨水と汚水を一緒に集めて流す合流式が主流でした。

 

しかし、大雨時に下水処理場で処理しきれずに河川へ流れてしまうと、汚染が進んでしまう原因になります。そこで近年は、雨水と汚水を別々に収集し、雨水は河川に流して、汚水だけを処理する分流式に切り替わってきています。

 

自分の街が合流式か分流式かはマンホールの蓋を見れば分かります。近年カラフルで個性的な絵柄が続々と増え、注目を集めているマンホール蓋。よく見ると文字が書かれているものがあり、地下に何があるのかを示しています。「おすい(汚水)」「うすい(雨水)」なら分流式が採用されているということ。「ごうりゅう(合流)」なら、その下に汚水と雨水が一緒に流れているということです。

 

『ゴールデンスランバー』で主人公が逃走に使ったのは雨水管。一方『ショーシャンクの空に』は汚物が流れる管だったため、主人公は悪臭で苦戦します。最終的に川へ到達しますが、本来は下水処理場で処理されるべき汚水。原作では、あと数ヶ月で下水処理場へつなぐ工事が始まるはずだったと記されているので、現在なら脱獄は失敗に終わったかもしれません。

人が通れない下水道もある

 

ところで、下水道は実際に人が通れる大きさなのでしょうか? 実は下水道の大きさは、最小のもので直径25cm程度。各家庭から下水処理場あるいは河川へ流れつくまで、上流にあるものほど小さく、人が通れない下水道もたくさんあります。

 

形は上部からの荷重を分散しやすい円形が主流です。ほかに矩形(四角形)や馬蹄形、卵型もあり、素材も硬質塩化ビニル管、鉄筋コンクリート管、強化プラスチック複合管、陶管など多種多様。いずれも工事費用や荷重、現場の状況、維持管理のしやすさなど多方面を考慮して採択します。

 

『ショーシャンクの空に』の下水道は、原作では陶製と書かれています。そのため、石で割って中に入ることができました。『ゴールデンスランバー』のクライマックスに出てくるレンガ造りの馬蹄形の管渠(かんきょ)は、撮影当時で約110年の歴史がある下水道。圧巻の姿です。

 

形や大きさ、素材を変えながら1本につなげられた下水道は、下流へと自然に流れるよう勾配がつけられています。勾配が急であれば多量の下水を速く流せますが、下流で管渠やマンホールの負担が大きくなり破損させる恐れも。逆に緩すぎると土砂や汚物が堆積する原因になります。素材や大きさと同様、管渠の勾配の決定にも、緻密な計算が必要とされるのです。

SDGsにも貢献する縁の下の力持ち

 

そもそも下水道は、日本でいつ頃から整備され始めたのでしょうか。始まりは弥生時代といわれていますが、本格的に整備が進められたのは明治時代に入ってから。コレラや赤痢など、汚物から伝染しやすい病気の流行がきっかけです。

 

その後、下水道は都市部への人口集中や工場の増加による水質汚染対策の役割も担うようになります。SDGsの17の目標のうち「⑥安全な水とトイレを世界中に」だけでなく、「⑪住み続けられるまちづくりを」や「⑭海の豊かさを守ろう」の達成にも貢献しているわけです。雨水管を強化すれば浸水被害を防ぐことができるので「⑬気候変動に具体的な対策を」にも寄与します。映画では、逃走ルートとして描かれることの多い下水道ですが、実は、地下で未来の地球環境のために活躍する縁の下の力持ちなのです。

 

トプコンの製品が下水道工事に活躍

 

現在、日本の汚水処理人口普及率は、92.1%(令和2年度末時点)と、まだ100%には至っていません。また、標準耐用年数約50年を超える管渠が、10年後には17%、20年後には39%と急速に増えることから、老朽化対策工事も必要不可欠となります。

 

トプコンでは、下水道のパイプ埋設工事の効率や仕上がり精度を向上させる測量機器、6代目パイプレーザー『TP-L6』シリーズを発売中。全長250mmの小型化に成功し、スマートフォンで操作できることから、小口径の比率が増加している下水道工事でも容易に作業できます。

 

下水道などのパイプ埋設工事の基準となる方向と勾配を可視光レーザービームによって指し示す測量機器。従来レベルとセオドライトを用いて行っていた丁張りや水糸の設置、点検測量作業が不要に。スマートフォンで操作が可能なので、マンホールに入る必要がなく、作業効率を向上させます。

https://www.topcon.co.jp/positioning/products/product/laser/TP-L6_J.html