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「彼は臭い下水の中を460mも這って進んだ」――これは、1994年のアメリカ映画の名作『ショーシャンクの空に』のワンシーン。ティム・ロビンス演じる主人公が、脱獄するために下水道を利用します。日本では、伊坂幸太郎原作で2010年に映画化された『ゴールデンスランバー』(2018年には韓国版も公開)で、主人公が逃走のために下水道を活用。実際に使われている仙台市の下水道がロケ地に採用されました。
このように映画で垣間見ることはあっても、普段は地下に埋設されていて見ることができない下水道。2024年末時点で日本の下水道は、全てつなげると約50万kmにも及ぶといわれています。これは、地球12周分以上にあたり、月と地球との距離38万kmを優に超える長さ。国道と都道府県道の総延長は約21万kmですから、2倍以上の道が地下に潜んでいるということに!?どんな世界が広がっているのでしょうか。
※参考:
下水道の維持管理(国土交通省)
(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000135.html)

下水道には雨水管と汚水管がある
下水道は、汚水(汚物や廃液など)や雨水を流す公共の水路のこと。私有地にあるものは排水管や排水設備といい、敷地近くに設置された公設枡(私有地から出た汚水や雨水を溜める場所)以降の下水処理施設までが、公共が管理している下水道です。以前は、雨水と汚水を一緒に集めて流す合流式が主流でした。
しかし、大雨時に下水処理場で処理しきれずに河川へ流れてしまうと、汚染が進んでしまう原因になります。そこで近年は、雨水と汚水を別々に収集し、雨水は河川に流して、汚水だけを処理する分流式に切り替わってきています。
自分の街が合流式か分流式かはマンホールの蓋を見れば分かります。近年カラフルで個性的な絵柄が続々と増え、注目を集めているマンホール蓋。よく見ると文字が書かれているものがあり、地下に何があるのかを示しています。「おすい(汚水)」「うすい(雨水)」なら分流式が採用されているということ。「ごうりゅう(合流)」なら、その下に汚水と雨水が一緒に流れているということです。
『ゴールデンスランバー』で主人公が逃走に使ったのは雨水管。一方『ショーシャンクの空に』は汚物が流れる管だったため、主人公は悪臭で苦戦します。最終的に川へ到達しますが、本来は下水処理場で処理されるべき汚水。原作では、あと数ヶ月で下水処理場へつなぐ工事が始まるはずだったと記されているので、現在なら脱獄は失敗に終わったかもしれません。
人が通れない下水道もある
ところで、下水道は実際に人が通れる大きさなのでしょうか? 実は下水道の大きさは、最小のもので直径25cm程度。各家庭から下水処理場あるいは河川へ流れつくまで、上流にあるものほど小さく、人が通れない下水道もたくさんあります。
住宅の近くの小規模な下水管と、町の汚水や雨水を処理場へ運ぶ太い幹線管では、用途によって大きさが異なります。複数の家や施設から出た下水は、まず道路の下にある下水道管に流れ込みます。下水道管の太さは直径20〜40cm程度のものが多く使用されています。
一方、市街地の汚水や雨水をまとめて流す幹線下水道では、直径60cmから1mを超える管が使用されることもあります。さらに、東京23区内の幹線下水道では、最大で直径8.5mに達するものや、2階建ての家がまるごと入るほどの高さ8.3m、幅7.2mの巨大な四角い管などもあります。
私たちが飲み水として使う水を運ぶ上水道管がきれいな水で満たされているのに対し、これら大きな下水道管は、汚水や雨水を安全に流すために十分な余裕をもって設計されています。そのため、長雨や豪雨時を除けば管の内部には大きな空間が残されています。つまり都市の地下には下水道の巨大な空間が広がっている箇所もあるのです。
下水道管の形は上部からの荷重を分散しやすい円形が主流です。ほかに矩形(四角形)や馬蹄形、卵型もあり、素材も硬質塩化ビニル管、鉄筋コンクリート管、強化プラスチック複合管、陶管など多種多様。いずれも工事費用や荷重、現場の状況、維持管理のしやすさなど多方面を考慮して選定されます。
『ショーシャンクの空に』の下水道は、原作では陶製と書かれています。そのため、石で割って中に入ることができました。『ゴールデンスランバー』のクライマックスに出てくるレンガ造りの馬蹄形の管渠(かんきょ)は、撮影当時で約110年の歴史がある下水道。圧巻の姿です。
形や大きさ、素材を変えながら1本につなげられた下水道は、下流へと自然に流れるよう勾配がつけられています。勾配が急であれば多量の下水を速く流せますが、下流で管渠やマンホールの負担が大きくなり破損させる恐れも。逆に緩すぎると土砂や汚物が堆積する原因になります。素材や大きさと同様、管渠の勾配の決定にも、緻密な計算が必要とされるのです。

SDGsにも貢献する縁の下の力持ち
そもそも下水道は、日本でいつ頃から整備され始めたのでしょうか。始まりは弥生時代といわれていますが、本格的に整備が進められたのは明治時代に入ってから。コレラや赤痢など、汚物から伝染しやすい病気の流行がきっかけです。
その後、下水道は都市部への人口集中や工場の増加による水質汚染対策の役割も担うようになります。SDGsの17の目標のうち「⑥安全な水とトイレを世界中に」だけでなく、「⑪住み続けられるまちづくりを」や「⑭海の豊かさを守ろう」の達成にも貢献しているわけです。雨水管を強化すれば浸水被害を防ぐことができるので「⑬気候変動に具体的な対策を」にも寄与します。映画では、逃走ルートとして描かれることの多い下水道ですが、実は、地下で未来の地球環境のために活躍する縁の下の力持ちなのです。
出展:
下水道もの知り事典(東京下水道局)
(https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/pr/kids/corner/yakuwari/5)
SDGsとは? JAPAN SDGs Action Platform(外務省)
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/SDGs/about/index.html)
トプコンの製品が下水道工事に活躍
汚水処理施設の整備は、国の「都道府県構想」に基づいて各地方公共団体が実施しています。その整備状況を示す指標の一つが、汚水処理人口普及率(総人口に対する割合)で表されます。環境省のまとめによると、下水道・農業集落排水施設・コミュニティプラントなどの施設を利用できる人口と、浄化槽を利用している人口を合わせた、日本の汚水処理人口普及率は、93.7%(令和6年度末時点)となっています。依然として約780万人がまだ利用できない状況にあり、100%には至っていません。また、下水道管渠の標準耐用年数は約50年とされており、この年数を超える管渠の割合は、10年後には17%、20年後には39%と急速に増加すると見込まれています。そのため、老朽化した施設の更新や維持管理も重要な課題となっています。
下水道管を正確に埋設するための工事では、レーザーを用いて勾配や通りを管理します。トプコンのパイプレーザー「TP-L6」シリーズは、全長250mmのコンパクト設計により小口径マンホールや管内にも設置しやすく、スマートフォンによる状態確認や操作にも対応。下水道工事の効率化と施工品質の向上を支えています。

下水道などのパイプ埋設工事の基準となる方向と勾配を可視光レーザービームによって指し示す測量機器。従来レベルとセオドライトを用いて行っていた丁張りや水糸の設置、点検測量作業が不要に。スマートフォンで操作が可能なので、マンホールに入る必要がなく、作業効率を向上させます。
https://www.topcon.co.jp/positioning/products/product/laser/TP-L6_J.html
出典:
令和6年度末の汚水処理人口普及状況について(環境省)





