ウエハ基板電流測定装置(EB-Scope)の開発に成功

日本・韓国有力デバイスメーカに納入
2008.03.12

歩留り改善に効果を発揮するウエハ基板電流測定装置(EB-Scope;EBS3000)の開発に成功し、日本・韓国有力デバイスメーカに納入

概要

株式会社トプコンは、半導体製造過程での歩留りを大幅に改善できる、電子ビーム基板電流測定装置(EB-Scope;EBS3000)の開発に成功。日本・韓国の有力デバイスメモリーメーカに納入を行ない2社から検収完了を頂きました。今回販売する装置は、65-45nmhp設計ルールデバイスのウエハのコンタクト穴底サイズ・界面の測定・評価を高精度・高感度、且つ、非破壊で行うことができる装置です(写真)。今後、本格的な受注活動を開始し、他社では実用化していない新しい測定原理に基づくEB-Scopeを世界に先駆けて市場に供給する計画で、本領域での業界のリーディングカンパニーを目指します。国内はもとより、米国、アジア等ワールドワイドに積極的な販売を展開します。

背景
半導体素子製作過程で生じる”non-visual欠陥”(物理的な痕跡を残さないで電気的な不良を引き起こす欠陥)は、素子の微細化に伴い検査が難しくなってきています。

non-visual欠陥は、ビア(Via)、ゲート、コンタクトの製造工程で生じる欠陥が主流を占めると言われおり、その中でコンタクトの穴底で残渣が若干残っているソフトオープンや穴底形状(サイズ)の不良は、素子の電気的な不良を引き起こす欠陥としてよく知られています。現在行われているトップダウン観察では、微細化に伴う”non-visual欠陥”を認識することが難しく、大きな問題となっています。特に、65nmhp以細のデバイスでは、歩留まり悪化要因はプロセス不良が多いと考えられ、その中で”non-visual欠陥”が占める割合は非常に多いと推定されており、歩留りは50%程度になるという予想もあります。

電子ビーム(EB)を用いてウエハ吸収電流を測定する検査方式(基板電流測定)は、”non-visual欠陥(穴底サイズと界面状態)”を感度良く検査できます。デバイス表面からの反射エネルギーを計測する従来の方法(光、CD-SEM)とは全く異なり、電子ビーム(EB)照射によりウエハ基板に注入(吸収)された電流の一部を高精度で計測する方法を基礎としているためです。

図1に示すようにウエハ基板電流測定法は、コンタクトホールの穴径に向けてEBを照射し、穴の底から吸収された電流を高精度に測定することで、穴底の残渣、穴径を正確に測定する方法です。この方法では、穴底径の測定と同時に”Soft-fail”と呼ばれる微妙なプロセスの揺らぎ(穴底残渣による欠陥)をコンタクト抵抗値換算で数100Ωという高感度で検査することが可能です。コンタクト穴底径の測定結果と関連させて、プロセスの不良原因の推定も可能です。また、従来の測定が、画像の測定結果からの判定(視覚的判断)であったものを、基板電流値で厳密に数値化できます。これによって、開発から製造への歩留り管理に関する技術移管を容易にすることができます。同時に、製造現場での複数台のプロセス装置間機差の評価、プロセス条件振り、日々の性能維持モニタリングに使用することで、歩留り改善に大きく寄与すると考えております。また、非破壊で測定でき、ウエハをラインに戻せることも大きな特徴です。製造工程での異常は、従来は電気特性試験で2ヶ月近くかかり初めて判明していたものを、EBS3000では1時間程度まで短縮することが出来ます。

このように、基板の吸収電流を計測する”non-visual欠陥検出”は、検査・計測の領域で新しいパラダイムを提案することが出来ると考えています。

ウエハ基板電流測定に関する基本技術・営業権は、2007年4月にファブソリューション株式会社から当社が営業譲受し、ファブソリューション社技術者と共同で開発をすすめてまいりました。そして、検出感度向上の為、基板電流アンプの高精度化や、測定データを解析するアナライザー、自動化ソフト、QC手法の開発を行い、EBS3000の完成となりました。

EBS3000性能・販売計画・価格予定
EBS3000は、実験的には40nm穴底サイズ測定・界面状態(アスペクト比30)の評価が可能であることが分かっており、ITRSロードマップを超えた性能を確認しております。使用される工程は、先ず、エッチング工程、洗浄工程等を考えており、工程内装置性能管理、装置間マッチング検証、ラインの工程モニター(ウエハ内分布、異常要因分析等)での使用を想定しています。歩留り改善への有力な装置となると考えております。

現在、有力デバイスメーカ複数社からデモ依頼があり、デモ評価を通じて装置コンセプトの浸透、アプリケーションの拡大を狙っております。
EBS3000の装置本体標準価格は、3億2千万円を予定しています。

EBS3000のコンセプト・特長
EBS3000の製品コンセプトは、「見えないものを見る技術で、検査・計測分野に新しいパラダイムを提案する」です。
EBS3000の主な特長は、

  1. ウエハ基板電流測定によるボトム径・ボトム界面状態の計測・評価が非破壊で可能(数100Ωのコンタクト抵抗値の測定が可能)。
  2. エッチング工程、洗浄工程での工程内装置性能管理、装置間マッチング検証、ラインのプロセスモニターとして使用。
  3. ボトム径・ボトム界面状態の計測が可能であることから、プロセス不良要因を推定できる。
  4. 装置仕様
    ・加速電圧:700〜3.0kV
    ・電流密度:1〜8pA(標準4pA)、測定再現性:90fA
    ・スポットビーム
    ・300mmウエハ対応
    ・測定モード
    ラインスキャンモード(LSM):主にコンタクト径を測定するモード
    ブランケットモード(BLM):コンタクト底の界面状態を評価するモード
    ・上位通信:GEM300対応
    ・安全規格:SEMI:S2/S8、CEマークに対応
図1 測定原理

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