眼球内の篩状板(しじょうばん)の厚みを測定することに成功 緑内障の新しい診断基準の可能性

2015.04.16

東北大学大学院医学系研究科
山形大学大学院理工学研究科
株式会社トプコン アイケア・カンパニー

【概要】
東北大学大学院医学系研究科の中澤徹(なかざわ とおる)教授らの研究グループは、山形大学大学院理工学研究科の湯浅哲也(ゆあさ てつや)教授ら、株式会社トプコン アイケア・カンパニーと協力して、視神経が眼球に入る篩状板(しじょうばん)と呼ばれる部分の厚さの測定に成功し、緑内障の患者では健常者よりも篩状板が薄くなっていることを明らかにしました。本研究は、スウェプトソースOCTという装置で撮像した篩状板の厚みを測定し、緑内障における篩状板の菲薄化(薄くなること)を明らかにした重要な報告で、今後、緑内障の診療に役立つ可能性が期待できます。本研究結果は、PLOS ONE誌に4月15日午後2時(米国東部時間、日本時間4月16日午前3時)に掲載されます。 

【研究内容】
本邦では緑内障注1は40歳以上の約5%が罹患し、失明原因の第一位の眼疾患です。緑内障では、網膜の神経節細胞およびその軸索の障害により、視野障害が生じます。
視神経と眼球が繋がる根本の部分には、篩状板注2と呼ばれる視神経を支える網目状のコラーゲン組織が存在します(図1)。緑内障では、この篩状板において視神経が障害を受け、視野の障害が生じると言われてきました。しかしながら、篩状板は眼球の後方に位置することから、実際に生体での測定をすることが困難でした。近年、光を用いた断層画像化法の研究開発が進み、これまでの2次元水平面だけではなく、断層の撮影が可能なOCT注3が開発され、臨床の現場で使用されるようになりました。今回新たに開発されたスウェプトソースOCTは、生体中の侵達性が向上し、篩状板を非侵襲的に(眼球を傷つけることなしに)観察することが可能になりました。
東北大学大学院医学系研究科の中澤徹教授らのグループは、篩状板の網目状の組織が描出される部位を同定する技術を開発し、OCTにおける篩状板の描出に成功しました。その結果、緑内障眼では篩状板が菲薄化(ひはくか、薄くなること)していることを明らかにしました(図2)。更に、視野障害が生じる前段階の極早期緑内障の時期においても、篩状板の菲薄化が認められました。緑内障の病態である軸索絞扼注4に関連していると考えられてきた篩状板厚の解明がなされ、緑内障評価の重要な指標となりうる可能性が期待されます。
本研究成果は、山形大学大学院理工学研究科湯浅哲也教授、堀井高明研究員、株式会社トプコンアイケア・カンパニーの協力、東北大学大学院医学系研究科中澤徹教授、丸山和一講師、面高宗子大学院生らが独立行政法人科学技術振興機構(JST)復興促進プログラムの支援のもと共同研究で行われました。

【用語説明】
注1. 緑内障:視神経が障害を受け、視野が欠けていく病気。
注2. 篩状板:視神経が入ってくる眼球の後方部分にある視神経を支える網目状のコラーゲン組織。
注3. スウェプトソースOCT:光干渉断層計(Optical coherence tomography; OCT)は、光の干渉を利用した断層画像化技術で、眼底用OCTが眼科診療では広く使われ出し、高い診療レベルが可能となっている。近年の光源技術の発展により、スウェプトソースOCTでは深部組織の可視化が可能となった。
注4. 軸索絞扼:神経の軸索線維が通るトンネルのような部分で何らかの原因が加わり、軸索が締め付けられること。神経の先まで栄養などが行き届かなくなり、神経障害が引き起こされる。

図1.眼球後方にある篩状板は視神経の支持的な役割をしている。視神経の障害により緑内障は視野障害を生じる。

図2.篩状板の描出と緑内障性変化

【論文題目】
3D evaluation of the lamina cribrosa with swept-source optical coherence tomography in normal tension glaucoma.
掲載誌PLOS ONE 

日本語訳
「スウェプトソースOCTを用いた正常眼圧緑内障における篩状板の3D評価」

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