2023-01-06

一晩で完成!? 豊臣秀吉が築いた一夜城とは?

目次

日本には、一夜にして築いた城という意味を持つ「一夜城」と呼ばれる城がいくつかあります。そのうち、神奈川県小田原市にある「石垣山城」と、岐阜県大垣市にある「墨俣城」は、いずれも豊臣秀吉が建てたと伝わるものです。豊臣秀吉は、土木技術の知識に秀でていたといわれ、長浜城や大阪城、伏見城を築き、その周辺の街の整備や治水工事なども手掛けています。

     

秀吉は城の周りに大きな堤防をつくって水をひき、城を水没、または孤立させる「水攻め」など、土木技術を駆使した攻城戦でも有名です。このときの工事も非常に速かったといわれます。そうはいっても、一般的に3年かかるといわれる城を一晩で築くことが果たして可能なのでしょうか。実は、豊臣秀吉による大きな策略があったのです。

 

城=天守(閣)ではない!?

 

そもそも「城」とはどういうものを指すのでしょうか。江戸時代までに天守閣が建てられて現存しているのは12城のみ。当時の設計どおりに建て直した復元天守、当時とは異なる天守を再現した復興天守、場所を変えたり新たに天守を足したりした模擬天守のすべてを合わせると91城になります。     

 

しかし、公益財団法人の日本城郭協会は「日本100名城」を選定していますから、日本には少なくとも100を超える城があることがうかがえます。そのため「城=天守閣」という図式は成立しないようです。広辞苑によると、城は「敵を防ぐために築いた軍事的構築物」と記されています。たとえば中国では、城は「万里の長城」に代表されるように、都市や地域を囲む「城壁」、あるいはその内部を意味します。ヨーロッパでも中世以前の主要大都市には、ほとんどの場合、敵の侵入を防ぐための高い城壁が備えられています。いわば、マンガ『進撃の巨人』における、巨人の侵入を防ぐ壁に匹敵するものを有しているのが海外では一般的。しかし日本には、そのような城壁はあまり存在しません。

天守がつくられるようになった理由

 

戦国時代末期まで日本の城に天守はありませんでした。敵からの攻撃を効率的に防ぐためには、敵が侵入しにくい高い山に拠点(山城)を築けばよかったからです。ただ、山城は普段政治の拠点とするには不便で、次第に平地に拠点を築き、周囲の防御を固めることで敵の侵入を防ぐようになります。本格的な天守がつくられ始めたのは、織田信長が築いた安土城から。高い建物はよく目立つため、軍事的にはむしろ不利なはずですが、城主の力を誇示するのに十分な効果があったのでしょう。

安土城以降、安土桃山時代から江戸初期にかけて、大名たちは次々に天守のある城を建てるようになります。高い場所から町を見下ろす優越感や憧れは、現代のタワーマンションブームに通じるものがあるかもしれません。敵が目標として定めやすい天守を守るためには、天守にたどり着くまでの道筋をより複雑にする必要があり、城郭内は複雑な設計(縄張)の下、櫓、堀、石垣、土塁などの構造物やエリア(曲輪:くるわ)がつくられるようになります。

 

豊臣秀吉が建てた一夜城とは?

それでは、豊臣秀吉が建てた一夜城はどのような城だったのでしょうか。石垣山城は、豊臣秀吉が天下統一を果たすきっかけとなった城で、天守を持つ近代城郭に分類されます。当時関東を支配していた北条氏の小田原城を攻め落とすために建てられました。小田原城は上杉謙信や武田信玄も落とすことができなかった難攻不落の城。秀吉が攻め込んだ際も、北条氏は鉄壁の守りで籠城に備えます。

 

しかし、北条氏の軍勢が5万に対し、秀吉勢は20万。さらに、小田原城を見下ろす高台に、突如秀吉が築いた石垣山城が現れ、その強大な勢力に北条勢は戦意を失い降伏につながったといわれています。伊達政宗が「昨日までなかった城ができていた」という記述も残っており、一夜にしてできた城というのは事実のように思えます。しかし、実はそのとき北条氏や政宗が見た城は、堀に白い紙を貼って城に見せかけたものだったのです。森の中で作業を行い、最後に周囲の木を伐採することで突然城ができたように装いました。とはいえ、現在の石垣山城跡を訪れてみると、広大な敷地に立派な石垣が残っており、天守跡と思われる場所もあります。一夜城に見せかけながらも、その裏で工事はしっかり進められており、総工事日数は80日間だったといわれています。

 

現代で一夜城を建てることは可能?

 

では、墨俣城跡はどのように建てられたのでしょうか。現地に訪れると、勇壮な天守がそびえていますが、実はこれは模擬天守。実際は野戦用の砦や山城に近かったといわれています。織田信長の美濃侵攻に伴い、秀吉(当時は木下藤吉郎)が、川の上流で材木を加工・組み立ててから現地に運んで作業することで、わずかな期間で建てたように見せたのではないかと考えられています。

別の場所で製造し、現場で簡単な作業だけを行って建築する手法は、工期の短縮化や労働者不足の解消に貢献しています。建物を一夜でつくることは現代でも難しいですが、最新技術を駆使すれば、短時間で当時よりも立派なものをつくることは可能だといえます。トプコンは「建設工事の工場化」を目指し、建機を自動制御できるICT自動化施工システムや3次元計測機をはじめとするソリューションを用いて、建設工事のワークフローの一元管理を図っています。効率化や品質向上が進めば、一夜で家ができるかも…?それはまた、未来のお話です。

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