TCFD提言に基づく開示
ガバナンス
当社は、気候変動を含むサステナビリティに関する取り組みを経営の重要事項として捉え、ガバナンス体制を構築しています。
リスク管理
当社は、気候変動に関するリスクを、ビジネスリスクの一部として捉え、監視・管理しています。
気候変動に関するガバナンスおよびリスク管理について、詳細は「サステナビリティ ガバナンス」(統合報告書のP44、P48)をご参照ください。
戦略
当社事業において、2030年に影響が大きいと思われる、気候変動関連のリスクおよび機会を特定するため、シナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析においては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づき、2100年における世界の気温上昇が産業革命時期比で1.5℃上昇、4℃上昇のシナリオを想定しています。
1.5℃シナリオでは、グローバルに気候変動対策が進展し、気候変動関連政策の導入(炭素税の導入、脱炭素規制の強化等)、市場・技術の低炭素型への移行(省エネ・再エネ導入・カーボンニュートラルへの要求の高まり等)、評判の変化が生じることを想定しています。
4℃シナリオでは、気候変動対策が進展せず、気候変動による影響が深刻化し、異常気象の激甚化(台風・ハリケーンの大規模化等)、気温上昇・異常気象の発生増加等の変化が生じることを想定しています。
また、下表に示すような研究機関で開示されているシナリオを参照し、重要度評価・財務影響評価を実施しました。
シナリオ分析で抽出されたリスクと機会をまとめ、リスクの最小化・機会の最大化に向けた対応策を検討しました。
気温上場 | 移行シナリオ | 物理シナリオ |
---|---|---|
IEA(国際エネルギー機関) 「World Energy Outlook 2023」 | IPCC(気候変動に関する 政府間パネル) 「AR5(第5次評価報告書)」 | |
4℃ | The Stated Policies Scenario(STEPS) | Representative Concentration Pathways(RCP)8.5・6.0 |
1.5℃ | Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE) | RCP1.9 |
戦略策定のステップ

1.5℃上昇シナリオ(NZE、RCP1.9)

想定される事業への影響
全事業
- 炭素税の導入
- 脱炭素規制の強化、脱炭素意識の高まり
- 人・モノの移動の制限
- 環境への取り組みの測定、追跡、報告に対する規制強化
- 省エネ性能の要求増加
- 顧客/投資家の評判変化
- 生産・物流プロセスの効率化
- バリューチェーン全体の生産性向上支援の需要増加
ポジショニング事業
- 建設・測量・農業における低・脱炭素化需要の高まり
- 高精度で効率的な農業・建設ソリューションの進展
- 次世代技術の進展
アイケア事業
なし
4℃上昇シナリオ(STEPS、RCP6.0/RCP8.5)

想定される事業への影響
全事業
- 炭異常気象の激甚化(台風・ハリケーンの大規模化等)
- 気温上昇・異常気象の発生増加
ポジショニング事業
- 異常気象の激甚化(台風・ハリケーンの大規模化等)
- 降水・気象パターンの変化
- 災害復旧に対応する製品・サービスの需要増加
アイケア事業
- 気候変動による眼疾患の増加
- 屋内生活の長時間化による近視人口の増加
1.5℃シナリオにおける気候関連リスクおよび機会
気候関連リスク
種類 | 想定される事業への影響 | 対象 セグメント |
||
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移 行 リ ス ク |
政策および 規制 |
炭素税の導入 | 炭素税の導入により、調達費用、輸送費用などの操業コストが増加する | 全社 |
炭素税の導入により発生したコストを、製品価格へ転嫁した場合、製品の価格 競争力が低下し、マーケットシェアが縮小する |
全社 | |||
脱炭素規制の強化、脱炭素 意識の高まり |
化石燃料による火力発電への規制が強化された場合、エネルギーコストが増加する | 全社 | ||
化石燃料の使用が規制された場合、代替設備へ更新するための対応コストが発生する | 全社 | |||
炭素に関する規制が強化され、対応できなかった場合、罰金や懲罰の発生、さらには操業停止に至る | 全社 | |||
人・モノの移動の制限 | 人・モノが移動する際、CO₂排出量の多い飛行機の利用が制限され、製品製造から販売までのリードタイムの長期化により、 操業コスト増加や売上減少の可能性がある | 全社 | ||
環境への取り組みの測定、追跡、報告に対する規制強化 | EUにおける既存のコンプライアンス要件に加え、気候変動に焦点を当てた環境への取り組みの測定、追跡、報告に対する規制の重点が高まり、 それらに対応するためのオペレーションコストが増加する | 全社 | ||
技術 | 省エネ性能の要求増加 | 顧客からサプライヤーへの省エネ要求の高まりに伴い、再生可能エネルギー利用やカーボンニュートラル対応等が要求され、 対応できない場合、ビジネスチャンスを喪失し売上が減少する | 全社 | |
市場・評判 | 顧客/投資家の評判変化 | 顧客の電動化要望に対応できない場合、売上が減少する | 全社 | |
脱炭素対応や情報開示が十分でない場合、評価・評判を損ない、株価や売上が低下・減少する | 全社 | |||
顧客の脱炭素意識の高まりにより、地産地消が促進され、自国または地域で生産された製品が選ばれ、 売上が減少する可能性がある | 全社 |
気候関連機会
種類 | 想定される事業への影響 | 対象 セグメント |
||
---|---|---|---|---|
機 会 |
資源効率 | 生産・物流プロセスの効率化 | 製品の出荷時の梱包を簡素にすることで、梱包材と輸送に関わるCO₂排出量とコストを削減する | 全社 |
生産プロセス、物流の効率化や省エネ活動により、将来的な炭素税やエネルギーコストを低減する | 全社 | |||
LED照明の交換、効果的な照明の制御、建屋改修および空調設備更新によるエネルギー消費量を削減することで、CO₂排出量とコストを削減する | 全社 | |||
製品および サービス |
バリューチェーン全体の生産性向上支援の需要増加 | 医療・農業・建設分野におけるエネルギー削減や効率化ニーズを背景とした、顧客バリューチェーン全体のGHG排出量削減需要とそれに適応する当社製品の売上が増加する | 全社 | |
市場 | 建設・測量・農業における低・脱炭素化需要の高まり | 建設市場での低・脱炭素化に貢献する建機、ひいてはICT施工ソリューションの売上が増加する | ポジショニング 事業 |
|
農業市場での低・脱炭素化に貢献する農機、ひいては農機の自動操舵などの売上が増加する | ポジショニング 事業 |
|||
高精度で効率的な農業・建設ソリューションの進展 | 化石燃料の使用が規制された場合、サトウキビやとうもろこしなどのような、バイオエタノールの原料となる作物の大規模栽培が進み、当社の農業自動化システム需要が増加する可能性がある | ポジショニング 事業 |
||
技術 | 次世代技術の進展 | 建機のハイブリッド化、電動化、ICT化の進展に伴い、市場が拡大し、売上が増加する | ポジショニング 事業 |
|
農機のハイブリッド化、電動化、スマート農業の進展に伴い、市場が拡大し、売上が増加する | ポジショニング 事業 |
|||
気候変動に対応する製品・サービスを通じた需要増加 | 脱炭素社会の実現に貢献する技術やビジネス展開に対する顧客/投資家などからの評価が高まり、売上が増加し株価が上昇する | ポジショニング 事業 |
4℃シナリオにおける気候関連リスクおよび機会
気候関連リスク
種類 | 想定される事業への影響 | 対象 セグメント |
||
---|---|---|---|---|
物 理 リ ス ク |
急性 | 異常気象の激甚化 (台風・ハリケーンの大規模化等) |
豪雨や洪水などの気象災害が激甚化・高頻度化し、当社工場が被災することで生産・出荷停止に陥り、売上の減少や対応費用の増加等の災害損失が発生し、財政状態が悪化する | 全社 |
気候変動に伴う異常気象により、作物生産量が減少したり、インフラ建設プロジェクトが中断したりすることで、顧客の資金的余裕が低下し、売上が減少する | ポジショニング 事業 |
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気温上昇・異常気象の 発生増加 |
気候変動に伴う異常気象の発生により、世界中の製造・販売地域において物流・販売・修理サービス等が停止し、売上が減少する | 全社 | ||
慢性 | 気温上昇 | 精密機械の生産工程で、厳密な温度管理のためのコストが上昇する | 全社 | |
降水・気象パターンの変化 | 干ばつが著しく発生する地域での農家の生産コスト増加、水ストレスが高い地域での耕作地減少により、製品需要が低下する | ポジショニング 事業 |
気候関連機会
種類 | 想定される事業への影響 | 対象 セグメント |
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機 会 |
市場 | 気候変動による眼疾患の増加 | 気候変動により眼疾患が増加することで、当社眼科検査機器や手術機器の売上が増加する | アイケア 事業 |
気候変動による近視人口の増加 | 屋内での生活時間が長期化することにより、近視人口増加がさらに加速し、当社検眼機器の売上が増加する | アイケア 事業 |
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レジリエンス | 災害復旧に対応する製品・ サービスを通じた需要増加 |
気候変動の進行に伴う耕作適地が移動した場合にも、 高精度で効率的な農業ソリューションにより、効率的な評価測定のうえ、最適な施肥や潅水を行うことが可能となるため、農業生産が可能となり、売上が増加する | ポジショニング 事業 |
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自然災害激甚化への対策として、道路、トンネル、橋梁、堤防、ダムなどの国土インフラ強靭化、災害対策・災害復旧や気候変動に対応する製品・サービスの需要は今後も継続し、同時に当社製品による施工の需要と売上が増加する | ポジショニング 事業 |